旅立ちの前に
旅立つ前に、故郷に顔を出すことにした。
その事をコトハに相談すると。
「おお!良いの。・・・わらわも、挨拶をしておきたいと思っていた」
「・・・変なこと、あまり言うなよ?」
「分かっておる、しかし・・・気に入られて損はあるまい?」
そう言ってニヤニヤとこちらを見る。
・・・外堀を埋める気か?
そうも思うが、コトハを親に紹介しておくのも悪くはないだろう。
将来的に、どうなるか分からないしな。
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朝方。
マリーに挨拶をするため、一階に降りる。
すると、一階を掃除していたマリーとばったり出会った。
「ふう・・・ん?レオじゃないか。早いね」
「ああ・・・ハントシーズンも終わったし、一度実家に帰ろうと思ってな」
「なるほどね。それはいい心がけだよ」
そう言って、マリーはうんうんと頷いた。
「世話になったな・・・ありがとう」
「いいさ。それより・・・約束ちゃんと守るんだよ?」
「この国に戻った時は、固定の宿にする。だろ?」
「ああ」
頷くと、箒をまた動かし始める。
「有名になって帰ってきなよ。途中で死んだら・・・許さないからね」
「ああ・・・もちろんだ」
そういって、2階へ上がっていった。
その様子を見送るマリー。
「私はまだあきらめてないよ・・・待つのは、慣れっこなんだからね」
あの男が戻る時には、絶対に有名になっているだろう。
その時は、私も気持ちを伝えてみよう。
・・・まあ、時既に遅し、の時もあるかもしれないけどさ。
「・・・でも、あの子に負けるなら、別にそれでもいいさ」
そう一言呟き、掃除に戻った。
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「よう、レオ」
「ドギー」
馬車の手配をしていたら、ドギーが後ろにいた。
どうやら、ドギーも馬車の手配に来たらしい。
「お前も、どこか行くのか?」
「ああ、一度帰郷してから、旅に出ようかと思ってな」
「そうか」
ドギーが手に持っている書類を見せてくる。
それはシルハ行と書かれた馬車の切符のようなものだった。
「俺たちはシルハ国に戻るんだ。機会があれば、また一緒にやろうぜ?」
「ああ・・・そうだな」
お互いに握手をする。
なんだかんだ言って、仲良くなったな。
セオドアは・・・。
「セオドアなら、既に馬車に乗ってるよ。俺は、最終確認に来ただけ」
「そうか」
手を離す。
「元気でな!」
「お前こそ・・・次あうまで死ぬんじゃないぞ」
「縁起でもねえ!」
そう言うと、笑いながら去っていった。
「まあ、セオドアがいれば、大丈夫だろ」
馬車に乗り込み、首都を後にする。
目指すは俺の故郷キカ村。
何もない辺境の村だが、農作物の栽培は盛んだ。
俺の家も芋や野菜を中心に、色々なものを育てていた。
一時期、ゼンドーで有名なコメというのを植えてみようとしたが。
・・・それが原因で借金が膨らむとは思っていなかった。
水田を作ると言うだけで莫大な金額がかかったのだ。
いまじゃ、多少のコメは出来るようになったが。
返せるだけの、収穫というわけじゃない。
「・・・のう、主様」
「なんだ?」
「どのくらいかかるのじゃ?」
「半日は掛かるぞ」
暗くなる前には着くはずだ。
その話を聞くと、コトハの身体が横になる。
「寝る・・・」
「正しい選択だ・・・だが、寝すぎると寝れなくなるぞ。
最初は起きてた方がいい」
「そうか」
身体を起こすと、対面の席から、俺の横に来る。
「なあ、主様。何か面白い話はないか?」
「話か・・・そうだな」
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せっかくなので、村の話でもするか。
「俺の村は元々は畜産で栄えてたらしいんだよ」
「畜産?」
「ああ、牧場ばっかりで・・・今のように畑を耕す家系の方が珍しかったらしい」
それが200年ほど前の話。
爺さんの頃には既に畜産業をしている家は、一軒だけになっていたらしい。
「じゃあ、昔は牛や豚だらけじゃったのか?」
「そうらしいな、俺はその時代を知らないが・・・」
だが、ある日を境に、畜産されていた家畜が死ぬようになった。
それ以来、畜産業は衰退していった、という話だ。
「家畜が殺されることが多くなって、立ち行かない状況になっていたらしい。
それが、魔物の仕業かどうかは分からないけどな」
「・・・魔物か。田舎でも出るんじゃな?」
「そこまで大物は出ないぞ?せいぜいゴブリンやオークくらいだ」
しかし・・・。
昔はそんなに栄えていたというのに。
・・・高々あれくらいの勢力のゴブリンやオークに壊滅させられるくらいの
被害を出したのだろうか?
・・・もしかしたら、あの村には知らない何かがあるのかもしれないな。
「・・・気になるのか、主様?」
「ん?」
「村の変わりよう、その理由じゃ」
「ああ・・・気になると言えばそうだな」
窓から外を見る。
首都郊外まで出ているようで、畑が広がっていた。
「・・・なにか、臭うの。その村の変わりようは」
「ただ単に、疫病が流行ったとか、そう言うことかもしれないぞ?」
だとすれば納得もいくし。
まあ、なんにせよ村についてみないと分からないことだ。
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馬車は昼夜問わずに走る。
この様子なら、朝方には村に着くだろう。
しかし・・・あのベヒーモスの様子。
キメラという存在。
あの化け物のような存在が、まだまだ存在するのだろうか?
・・・まだまだ、自分の知らない世界があるようだ。
隣で俺の膝を枕に寝ているコトハに毛布を掛ける。
「・・・俺も寝るか」
毛布を足元から取り出し、俺も被る。
「・・・」
外を見ると、民家のあたりが点々と見えた。
まだ、中間地点くらいか。
そう思いつつ、目を閉じた。




