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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
ハントシーズン編
19/53

ベヒーモスの報酬は

ベヒーモスは死んだ・・・。

目の前に転がる、死体がそれを如実に表していた。

そして、立っているのはロゼ・・・。


「ロゼ様・・・万歳・・・!」


「万歳!」


お供達がそう声を張り上げながら両手を上げる。

それに釣られるように、観衆も手を上げて万歳を言い出す。


「「「万歳!」」」


・・・怒号のような万歳のコールが何度も響く。


「やれやれ・・・ガラス、割れちまったね」


「マリー・・・大丈夫か?」


「ああ、丁度ガラス交換の時期だったし、問題ないよ」


そう言ってウインクしてくる。

本当に前向きな奴だな・・・。


「・・・終わったのか・・・?」


俺の胸元から、顔を上げるコトハ。

震えは止まっている。


「ああ、お前の『狐火』のお陰だ」


「?」


「ベヒーモスに刺さっていたレイピアで狐火が増幅され・・・

 体内で猛烈な炎が吹きあがったんだ。いくらベヒーモスが強大でも、

 体内からの攻撃は、効くかと思ってな・・・」


レイピアは心臓近くまで届いていたはず。

つまり、身体の中心部まで届いていたという事だ。

後は・・・ゴブリンに狐火がついた時の事を思い出した。

最初は体の一部にしか付いていない火が、一瞬で全身に点火した。

・・・つまり、燃え広がるんじゃなく、

対象を燃やし尽くす魔法じゃないかと、そう思った訳だ。


予想は当たりだった。

レイピアを通して内部に入った狐火は、その力を高めて内部を燃やした。

あの強大なベヒーモスを怯ませるほどの威力で。


そして、ロゼはその隙を見逃さず、とどめを刺した。

これで・・・ベヒーモスとの戦いは終わりだろう。


――――――――――――――――――――


死体はギルドが回収していった。

・・・研究したいことがあるとも呟いていたが。

コトハの言っていた合成獣(キメラ)に関係するのだろうか?


「なあ、コトハ」


「ん?」


「キメラって・・・なんだ?」


コトハの顔を見ると、複雑な顔をしていた。


「・・・キメラは・・・この世の道理を外れた存在。

 意図的に生み出された、獣じゃ」


「意図?だれかが・・・作ったって事か?」


「ああ・・・わらわの兄妹も・・・皆、キメラに殺された」


「な・・・?」


兄妹がいたのか?

・・・しかも、殺された?


「その時は、何ともないゴブリンじゃったがな」


思い出すように、目を閉じるコトハ。


「・・・縄張りに入ってきたゴブリンを追い返そうと、父と兄が向かったのじゃ」


「・・・」


「だが、そのゴブリンは・・・キメラじゃった」


身体が、ベヒーモスのように変異したという事か・・・?


「次に見た時は下半身が蛇に、頭は無くなっておった。

 父は大怪我を負い、兄は食われて・・・しもうた」


・・・。

もういい。


「よせ、もう喋るな」


「いいや、言う。主様(ぬしさま)には聞いておいてほしい」


コトハは泣きそうな目をしながら、また喋りだす。


「その後、巣を襲われた。母は辛うじてわらわだけを連れて、

 這う這うの体で、逃げ出せたのじゃ」


・・・。


「そして、わらわは・・・この国まで、一人で逃げた。母とは別々にな」


「そうか・・・」


さぞ、辛い体験だっただろうに。


「母も右足を怪我して、囮になると言って逃げた切り、じゃ。

 ・・・まあ、あの母じゃ、死ぬとは考えづらいが」


そう言う、コトハの顔は少し陰ってはいるが。

だが、口ぶりからすると、生きていてもおかしくないという感じだ。


「コトハ」


名前を呟き、その身体を抱きしめる。


「な・・・主様?」


「辛かっただろうに」


そういって、背中をさする。


「・・・いや、もう辛くはないぞ。

 こうやって、主様にも会えたのじゃからな」


コトハの手が俺の背中に回る。

強く、抱きしめてきた。


「コトハ」


「主様」


・・・。


「その・・・すまないが・・・レオハルト?」


「「!」」


突然の声に驚き、二人の距離が一気に開いた。

その声の主は、ロゼだった。


「すまん、邪魔をするつもりはなかったのだが」


「い、いや・・・」


「・・・むー」


コトハはふくれっ面だ。


「その・・・報酬の件で話がある」


「報酬?」


何の報酬だ?

俺の倒したゴブリンの報酬は、後で貰おうと思っていたが。

その話ではないだろう、ロゼも知らないだろうし。


「ベヒーモスは私だけでは倒せなかった。

 君たちだろう?あの炎は」


そういって、自分の手のひらを見せてくる。

火傷の跡が少し見える。


「すまんの・・・熱かったじゃろう?」


「いや、死ぬよりはましだ・・・そうだろう?」


「ああ、そうだな。・・・それが報酬とどう関係あるんだ?」


俺たちは気を引いただけだ。

何もしていないに等しいだろう。


「君たちに半分、渡そうかと考えている」


「は・・・?」


「お主、別に気を遣わなくていいのじゃぞ?

 倒したのはそなたじゃ、それは間違いない」


「騎士は恩に報いるもの。それに・・・金には頓着していないものでな。

 それに・・・君たちは路銀を稼いでいるとも聞いた」


・・・誰から聞いたんだ?

とも思ったが。

まあ、ドギーあたりだろう、あいつお喋りだしな・・・。


「・・・謝礼だと思って受け取ってくれ、そうじゃないと・・・私の気がすまん」


「・・・なあ、主様。こういってくれておる、受け取ってはどうじゃ?」


「ああ・・・そうだな」


こっちも助かるが。

・・・本当にいいんだろうか。


「そうか、良かった。では・・・これを」


布袋を手渡される。

コトハが受け取り、それを振っている。

チャラチャラと音がする・・・金だ。


「今回は助かった。・・・また、会うときがあれば・・・な」


そう言うと、手を振ってロゼはその場を後にした。


「ぬ、主様!」


「なんだ・・・?」


布袋を開けたコトハが驚いていた。

その中を見る。

・・・金貨が10枚、入っていた。


返そうと思って走った時には、既にロゼは馬車に乗って走り去った後だった。

こんなにもらえないとも思ったが。


「まあ、ロゼの気持ちなんじゃ。有難く受け取っておこう」


「・・・あ、ああ・・・そう、だな」


申し訳ない気持ちでいっぱいだ・・・。


――――――――――――――――――――


夜。

ハントシーズンも今日で終わり。

ベヒーモスの襲来も、何とかしのいだ。

・・・宿のガラスが割れているので多少寒いが。


「・・・」


明日からは、諸国を旅することになる。

その前に・・・一度実家に帰っておいた方がいいか。

横目でコトハを見る。

・・・コトハはミカンを食べていた。


両親に会って、旅立つことを告げて・・・。

貰った金貨を半分、置いて来よう。


さあ、明日も早い。

・・・今日はさっさと寝ることにした。


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