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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
ハントシーズン編
16/53

ベヒーモス編 第二防衛線の戦い

ベヒーモスが第一防衛線を突破したという話は、瞬く間に伝わっていった。

現に俺たちが西門に到着する頃には、

動員されたほとんどの冒険者が集まっていた。

だが、有力な冒険者の姿はない。

・・・前に説明してもらった通り、

この部隊は他の魔物を止めるために編成されたものだろう。


自分の装備している武器と防具の点検をする。

ここ最近の戦いのせいで、鉄製の剣は刃こぼれが目立ち始めている。

防具も、所々傷だらけだ。

胸当ても・・・いつ壊れても分からない。

これが終わったら、直すか買い替えた方がいいだろう。


主様(ぬしさま)、準備はよいか?」


「ああ・・・大体は、コトハは?」


「うむ、準備万端じゃ」


両手に魔法を籠めて見せる。

・・・魔力は戻りつつあるとは言っていたが、無理はさせれない。

彼女は何としても守らないと。


「ドギーお前はどうだ?」


「ん?」


自分の武器を磨いているドギー。

セオドアも、同じように武器を磨いている。

ドギーは2本の剣を磨いていたが、それで気になった事がある。


「・・・そう言えば、ドギー。気になったんだが」


「なんだよ?」


「リザードマンの時、なんでスキルを使わなかったんだ?」


「『ツインエッジ』の事か?」


ああ、と頷く。

2本の剣を使用した、高速の斬撃。

何故、あれをリザードマン戦の時は使わなかったのだろうか?


「あのな、盾持ってる奴に、あんな乱舞技使えるかっての。

 弾かれて、一発斬られて終わりだ」


なるほど。

きちんと考えて戦ってるんだな。


「あ、今馬鹿にしたな?」


「ばれたか?」


「丸わかりだって、俺だって、考えて行動してるんだぜ?」


武器の手入れが終わったのか、手元で一回転させると、鞘に戻した。

セオドアは・・・自分の鎧の手入れを始めていた。


周りを見る。

武器を手入れするもの、道具を確認するもの、はてまた地形を確認しているもの。

様々な奴が、各々の準備をしている。

俺も、西門周りを見てくるか・・・。



西門と、防壁を確認する。

防壁は街をぐるりと囲んだ、即席製の壁。

壊されるごとに直す・・・を繰り返した、つぎはぎだらけの壁だ。

これでは、ベヒーモスの侵攻は防げないだろう。

西門は、元々、軍事用に建てられた頑丈な鉄門だ。

ここを突破することはないだろう。


「まあ、魔物を防げるだけの耐久力はあるか・・・」


次は、防壁の上。

登ってみると、防壁の上には弓の予備が並んだ箱と、矢の束が複数。

ここで、兵士が迎え撃つのか。


――――――――――――――――――――


一周して、情報は仕入れた。


「主様、どうじゃった?」


「大体は・・・ベヒーモスの突撃は防げそうにないな」


「そうじゃろうな・・・」


時刻は昼前。

来るとすれば、あと少しだろう。

その前に、食事を取っておくか・・・。


宿に出る前に、マリーから選別で受け取ったパンを食う。

食いながら、防壁の上から、ベヒーモスの来る方向を見ていた。

このパン・・・硬いが、噛んでいると癖になる味をしてるな・・・。


隣で、コトハも同じようにパンを食べている。


「・・・むぐ・・・?」


コトハの耳がピクピクと動く。

初めて見る動きだ。


「・・・主様、ベヒーモスが来るぞ」


「え?いや・・・だが」


地平線には何も見えない。

・・・気配も、音もしない。


「聞こえる・・・奴の、動く音が」


更に、耳が動く。


「来る・・・!主様!」


そう叫ぶコトハ。

その叫びと合わせるかのように、防壁が上へ盛り上がった。

浮遊感が体を包み・・・。


――――――――――――――――――――


何が起きた?

・・・防壁の上にいたら・・・急に防壁が上に動いた。

体が跳ねたと思ったら、草原に落ちていた。

痛む体を起こし、頭を振って周囲を確認する。


俺の目の前に広がったのは・・・。

防壁の真下から現れたベヒーモスが防壁を破壊しながら、首都へと向かう姿だった。

防壁にはベヒーモスの横幅と同じくらいの大きさの穴が開いてしまった。


「いてて・・・主様、大丈夫か?」


「ああ、だが・・・突破しやがった」


「ああ・・・真下から来るとはの・・・魔獣、伊達ではないか」


ベヒーモスは地面を掘って、真下から防壁を突き上げた。

結果、その部分が破壊され、簡単に侵入を許した。


防壁の向こうから剣戟の音と、魔法の音が響く。

防壁の内側に陣を構えていた冒険者たちが交戦しているようだ。

しかし・・・散発的に攻撃を行っているだけで、本格的には仕掛けていないようだ。


「しかし、変じゃな・・・ベヒーモスは警戒した時だけ地面に潜るんじゃが・・・」


コトハは首を傾げ、ベヒーモスの掘った穴を見ていた。


「・・・第一防衛線で、何かあったのかもな」


追い詰めはしないが、驚かせるようなことをした、とか。

だが、今は考えている場合じゃない。


「・・・来たぞ」


ベヒーモスの破壊した防壁を目指し、魔物の軍勢が地平線から姿を現した。


――――――――――――――――――――


こっちは冒険者だけで100名。

兵士を合わせると500名近い。

少ないとも感じたが、他の方面でも散発的に戦闘が起きているらしく・・・

ここに割いた数が一番多いとのことだ。


相手の編成はゴブリンを中心とした混成部隊だ。

オーガやオークが混じるが、それほどではないように見える。


肝心のベヒーモスは既に、戦線から遠く、見えなくなっている。

・・・英雄、ロゼに期待する、それだけだ。



防壁の上には兵士が弓を構えている。

破壊された防壁の部分には重装歩兵が横に並び、盾を構えて肉壁になっている。

これ以上は通さないという、決意の表れだ。


そして俺たち冒険者は、先発隊として全員が前面に配置された。

兵士はその後ろで支援するとのことだが、どこまで信用できるか・・・。


「なあ、レオ?」


隣で構えているドギーが、話しかけてくる。


「ん?」


「稼ぎ時・・・って今の事だよな?」


いつものようにおちゃらけて見せるドギーだが。

顔は少し、強張っている。

・・・目の前の大軍を目にすれば、誰だって緊張するか。


目の前には無数の魔物、ほとんどはゴブリンだ。

だが、オーガやオークも少なからず混じっている。

・・・手を抜けば、大怪我は免れないだろう。



二つの軍の塊・・・人間たちと魔物が息を合わせたかのように睨みあう。

お互いの目線が見えるくらいまで、ゆっくりと近づいていく。

そしてある線を越えた途端、誰からともなく・・・突撃が開始された。


冒険者の吶喊(とっかん)の怒号と、魔物の唸る声が混ざり合う。

次に聞こえてきたのは剣と剣がぶつかる音と、冒険者、魔物の悲鳴。

魔法の爆音、鈍器で殴る音。


兵士の弓の音が聞こえない。

・・・乱戦になったので仕方ないが、援護が期待できないという事だ。


俺の目の前にも敵が迫る。

横のドギーをちらりと見て、俺も乱戦へと突入した。


――――――――――――――――――――


数分、いや・・・それ以上経ったか。

向かってくるゴブリンを斬る、手で殴る、足で蹴り上げる。

それを何度も繰り返した結果・・・無数の死体が周りに転がっていた。

多少の疲れが見えるが、まだ動けない程じゃない。


「うお・・・お前がやったのか?」


ドギーがこっちの状況に気づいたようだ。

俺の身体はゴブリンの返り血で、汚れていた。


「・・・ああ―――」


不意を打ったゴブリンの棍棒が、俺の頭を打ち据えた。

しかし、痛みは感じない。

ゴブリンの方を睨む。


「ふん!」


殴ってきたゴブリンを、空いている左手の拳で思いっきり殴る。

頬に拳が当たると、ゴブリンの体が宙を舞った。

向かってくるゴブリンの前に落ちるその死体。

・・・殴った衝撃で首の骨が折れたようだ、感触もあった。


「やっぱり、強くなってるじゃないか」


ドギーも背中から近づくゴブリンを袈裟懸けに切り裂いた。


「・・・分からん」


自分が思う以上に体が動く。

リザードマンとの一戦が、俺の中の何かを変えたのかもしれない。


「主様、何を喋っておるのじゃ!」


こちらに向かってくるゴブリン達に向かって、何かを唱えているコトハ。

準備ができたのか、右手を前に出す。


「『狐火』!」


その声と共に、ゴブリン達の身体に火が灯る。

青白い火が体に着いたゴブリンは、振り払おうと身体を叩いているが。

熱くないと悟ったのか、術者を見てニヤニヤ笑っていた。


「・・・じゃから、ゴブリンは低能なんじゃ」


青白い火が瞬く間に全身を包んだ。

そして、火がどんどん赤くなる。

それと同時に、ゴブリンは悶え始めた。

燃えている・・・それも、高温で。


「主様・・・焼死は辛い、楽にしてやれ」


「ああ・・・」


火で苦しむゴブリン達の首を刎ねた。


「助かった、コトハ」


「うむ、わらわはパートナーだぞ」


周りを見ると、俺たちに軍配が上がっているようだ。

相手の部隊はほぼ壊滅、残った残党を狩り始めている。


「・・・」


周りを見渡す。


この数を俺一人が。

・・・数だけでも30、たった一人で斬っていた。

無我夢中で乱戦の中、生きるために武器を振った。


「俺は」


自分の手を見る。

ゴブリンの血と、自分の裂傷の血が混じりあって、黒く汚れている。

・・・自分の強さが、分からなくなってきた。


――――――――――――――――――――


西門は、作戦を遂行した。

ベヒーモスの突破は、あくまで予想通り。

その後に侵攻してくる魔物の討伐が俺たちの主任務だった。


西門の傍で、傷の手当てが始まる。

死傷者は少なかったようで、それはほっとした。


「主様・・・ジッとしておれ」


「・・・」


消毒を塗って、傷口にガーゼを張っていくコトハ。

気持ちはうれしいが、若干雑に張られる。


「むう、難しいの・・・」


包帯も撒いてくれるが・・・。

骨折してないのに、ギプスのような太さになっている。


「コトハ・・・私がやろう」


「おお、セオドア」


セオドアが隣に立っていた。

鎧の一部がへこんでいるが、無事そうだ。

ドギーは・・・近くの草原で寝ていた。

腕に包帯を巻いているが、大きな怪我がないようだ。


セオドアが交代すると、器用に包帯を巻く。

感心するくらい、上手に見える。


周りの冒険者たちも、応急治療が終わったようで、首都の中心へと向かっていった。

・・・ロゼは、勝てるのだろうか。


腰を上げる。

コトハはその様子を見て、察したようだ。


「主様、行くのか」


「ああ・・・ロゼが大丈夫か見に行きたい」


「うむ・・・わらわも気になっておった」


目指すは・・・ロゼの向かった最終防衛線、中央街外郭だ。

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