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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
ハントシーズン編
11/53

冒険者の仕事 館の調査 後編

目の前の絵画には赤い女性が描かれていた。

それ以外には、何も・・・特徴のない絵。

しかし、不吉な、そんな感じがする。

しかし、この女性の・・・赤、なんだ?

妙に、生々しい色をしているが・・・。


ランタンで照らすが、やはり・・・ただの絵だ。

・・・そろそろ、次の場所を探すか。


――――――――――――――――――――


その後、ドギーと合流した。

あっちも収穫なしのようだったので、気になることを話した。


「絵?」


「ああ・・・どこか不吉だ、調べてみないか?」


「興味あるな・・・」


ドギーは顎に手を置くと、あることを話し始めた。


「血濡れの絵の噂、知ってるか?」


「血濡れ?」


そうだ、というと。

ある噂の事を話し出した。


昔、ある館での出来事。

その日は静かな夜だったで、見張りも少なかった。

・・・そして、一人の強盗が、屋敷内の人間を皆殺しにして金品を奪った。

だが、その強盗は捕まらなかった。

それどころか、館から出た形跡もなかったそうだ。


そして、その館の一室に飾られていた絵。

・・・その絵は『乙女の微笑み』という絵画で、真っ白なドレスの女性が立っている絵。

しかし、兵士が惨劇を確認しに行った時には、真っ赤に染まったドレスと。

・・・周りには血しぶきが飛んでいたとのこと。



「・・・それって、使用人の誰かの血じゃないのか?」


「ああ、当時の兵士もそう思ってたみたいだな。だけどさ」


「だけど?」


「近くには死体なんて無かった、強盗で殺された使用人たちは皆。

 別の部屋で殺され、その状態だったんだと」


・・・じゃあ、その絵が強盗を殺したってことか?

絵に魔物が潜んでいるという可能性もあるが。


「とにかく、見てみようぜ?」


――――――――――――――――――――


ドギーと一緒に絵画を見に行く。


「・・・確かに赤いドレスだけど、聞いてた絵とは違うみたいだな」


「そうなのか?」


「ああ、構図が違う・・・だけど」


ドギーも・・・その赤いドレスが気になるようだ。

生々しい色をしているもんな。


「・・・ちょっと待て」


ドギーが額縁を触る。


「お、おい・・・」


盗もうとでもいうのか?

だが、ドギーが額縁のある部分を触ると。

一階から、何か物音がした。


「やっぱり、仕掛けだ」


「仕掛けだと?なんでそんなものが」


ドギーと一緒に、1階へ向かう。



一階のリビング付近の廊下に、地下へ続く階段が現れていた。


「・・・」


すえた臭いが、地下からはする。

松明を取り出し、火をつける。

それを前に押し出し、地下を覗いてみる。


「・・・行ってみるか」


「ああ・・・レオ、油断するなよ」


――――――――――――――――――――


地下には、ワインセラーとワインの樽。

蜘蛛の巣が所々に張っている。

地面はむき出しの土・・・ワインの貯蔵のための地下だろうか?


「・・・おい、あれ」


俺をつつくドギー。

その目線の先を追うと、一人の少女が隅で震えていた。

・・・お互い、目を合わせると剣を引き抜く。

こんなところに少女がいるのはおかしい。

俺たちが・・・この地下への道を開けたんだから。


「・・・俺に任せろ、レオ」


ドギーはそう言うと、ゆっくりと少女に近づく。


「やあ、大丈夫かい、君」


気さくに・・・しかし、構えながら近づいている。

少女は声に気づいたようにピクリと反応すると、こちらに振り向いた。

その顔は・・・耳まで口が裂け、目はぎろりとドギーを睨み。

手は・・・まるで獣の爪のような形状をしていた。


「・・・まずい!こいつ・・・下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)だ!」


ドギーが持っていた剣とは別に、もう一本の剣を懐から取り出す


「くそ・・・食らえ!『ダブルエッジ』!」


二つの剣に、風のようなものが纏う。

そして、その2本の剣で下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)を切りつける。


「お前・・・スキル使えたのか・・・?」


「ああ・・・覚えた・・・ばかり、だけど・・・な!」


斬りつけながら、まるで踊るように剣撃を見舞うが。

斬られた部分がすぐに再生し、まるで効いていないようにドギーを見ている。


「・・・くそ、再生力の方が強いか!」


距離を取るように、後ろに下がる。

俺の隣までくると、剣を一本しまう。


「どうするよ?」


「・・・」


リザードマンを倒した時の感覚。

・・・やはり、あの時よりは、力が弱っている。

一時的な身体の強化・・・なのだろうか?


だが、リザードマンと戦う前よりは・・・強くなっている気がする。

剣を構え、下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)と向き合う。


「やる気かよ、お前」


そういうドギーも剣を構える。


「二人がかりなら・・・倒せるかもな・・・!」


最初に俺が走る。

ドギーは後ろからついてくる。


剣を振り上げ、目の前まで走ると同時に剣を振り下ろす。

剣の一撃は肩口に入り、胸部まで引き裂いた。


「・・・!」


右腕の爪が、こちらの左手を引き裂いた。

すんでで、回避したので深くは無いが、左手から血が滴る。


「おっと、休む暇はないぜ!」


ドギーが飛び出すと、俺が切り裂いた下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)の肩口にもう一撃を叩きこむ。

先ほどよりも傷口が大きく開き、左腕が垂れているような形で、

身体と引き裂かれている。


「どうだ・・・!?」


ドギーが確認する。

下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)は垂れた自身の左腕を持つと、強引にそれを体にくっつけた。

ぐりぐりと・・・。

すると。


「くっつきやがった・・・」


自分の左手を動かして見せる下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)

その顔は・・・狂気を感じるような笑顔だった。


「・・・レオ、なんか持ってないか?」


「残念、聖水の類は無い」


「だよな」


・・・。

打つ手なしか?

そう思いつつ、お互いの間合いを牽制しあう。


左手の血が滴る。

深くは無いが、切れ味は思い知った。

下手に攻撃すれば、喉元を切り裂かれるだろう。


「なあ、レオ」


「なんだ・・・?」


下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)もそうだが、吸血鬼(ヴァンパイア)っていうのは、首を切り落とされると死ぬらしいぜ」


「・・・なら、首を落とせばいいのか?」


ああ、と頷くドギー。

・・・難しい相談をするな。


「俺が気を引く、お前は・・・一撃を叩きこんでくれ!」


そう言うと、ドギーはまた、懐から剣を取り出す。


「行くぜ・・・『ツインエッジ』!」


風を纏う剣で、再度斬りかかる。


「・・・」


その様子を見る。

下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)が何故、一方的に斬られているのか、

さっき疑問に思ったからだ。


・・・そうか、再生している最中は無防備・・・か!

理解した瞬間、走り出した。


スキルを発動し、斬りかかられている今がチャンスになる。

剣を右手だけで構え、背中に剣の刃が付くくらいに振りかぶる。


「くそ!」


スキルの限界が来たのか、ドギーは後ろに下がった。

目の前には再生中の無防備な下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)がこちらを見ている。

右腕を横に振りぬき、剣が下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)の首元を通る。

同時に、下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)の爪が、俺の左肩を掠めた。


――――――――――――――――――――


ギルドへ報告に帰った。

今までの経緯と下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)の出現。

豪邸の声の正体は、奴だという事。


「警戒深い奴だった、ってことだな」


「ああ・・・ずっと冒険者から隠れて暮らしていたんだ」


悪いことをした気分にもなるが、これも生活の為だ。


「・・・しっかし、半分に分けても金貨一枚。

 下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)分で更に銀貨二枚、いい稼ぎになったな」


「・・・ああ」


ドギーと一緒だったので、疑われることなく支払われた。

お互いが証人という事で、しかも、別のパーティーの二人だ。

仲間内で嘘をついているとは思われなかったんだろう。


「よく怪我するよな、お前」


左肩を撫でる。

傷口は既に塞がっている。

・・・。


「お前、トロールじゃないよな」


「は?」


「傷治るの早すぎ」


・・・確かに、俺もそう思う。

生き返してもらってからというもの、怪我ばかりだが。

その怪我は直ぐに治る。

これも、能力の一部なのだろうか?


「はー・・・でも、セオドアにもいい報告ができそうだぜ、サンキューな」


ドギーはそう言うと、俺の肩を叩いて先に帰っていった。

・・・そう言えば、気になることがもう一つある。


あの絵の事だ。

・・・一体、誰があの絵の仕掛けを使って、下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)を閉じ込めた?

いや・・・それ以前に。

俺たちの前に調査に来た冒険者の足跡は・・・絵の前で消えていた。

戻った形跡がなく、あの前で止まっていた。

・・・あの絵は何なんだ?


後日、あの豪邸を壊す際に業者が中に入ったそうだが。

・・・あの絵の後ろの壁から白骨化した冒険者が出てきたらしい。


『乙女の微笑み』によく似た絵は、その時には何処かに消えていた。


誰かが下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)を閉じ込めたのではなく。

・・・あの絵が、下等吸血鬼(レッサーヴァンパイア)を庇っていたんじゃないかと感じた。

ドギーは俺がいたから助かったのだろう。

もし、俺が一人で・・・調べていたらと思うと、身の毛がよだつ。

・・・あの絵も『魔物』だったのだろう。


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