第3話:初めてのお仕事!
「おーい、レオー!登録終わったぞー!」
そう言ってレオの元に向かう。
「あ、ユーキ兄さん!遅かったね!なんか他の冒険者と揉めてギルマスの部屋に連れていかれたんでしょ?大丈夫だった?心配してたんだよー!アーネさんに話しても、酒場の方で待ってて欲しいって言われたし!」
「心配かけてすまんな。オーガ亜種倒したからBランクとして登録してくれてたんだよ。これでレオ達のパーティーに入れるな!」
「えっ?すごい!やったー!ユーキ兄さんがパーティーに入ったー!」
「おいおい、マジかよ!そんなことあるのかよ!ユーキはとんでもないヤツだな!」
「まぁ侯爵がBランク以上の冒険者を雇ってクエストを受けさせているみたいでな。かなり特例みたいだ。」
「それでもすごいですよ!」
「まぁユーキはただ者じゃないって初めて会ったときから感じてたしな!こんなに早くにパーティー組めてラッキーとしとこうぜ!」
「ああ、俺もラッキーだと思ったよ。」
おいおい、レオも喜んでくれてるじゃねーか!
チート貰って良かったー!
「じゃあクエストはまた明日にして今日は宿に戻るか!ユーキもそれで良いか?飯は宿の方が旨いしな!」
「あぁ、それでかまわない。」
や…宿だと!部屋はレオと一緒なのか!?どっちだ?これは誘われているのか?いや、まてまて!さすがにそれは無い!落ち着け、俺!
「早く戻ろうよー!あたしおなかがすいたー!」
「あぁ、じゃあ行くか!ユーキも遅れずについてこいよ!」
はやる心を抑えながら、レオについていくのだった。
…
……
「「「「カンパーイ!」」」」
そう言ってエールを飲む。
部屋は…うん。別々だった。
そりゃそうだよな、レオ達はすでに泊まっていたんだから、俺が追加されると別の部屋を追加するだけだよなー。
はぁ、仕方ないかー。
「今日は俺達のBランク昇格と、ユーキの加入のお祝いだ!」
「イエーイ!」
「あまり飲み過ぎては行けませんよ!」
「まぁまぁ、せっかくのお祝いだしな!ユーキも飲んでるかー?」
「あぁ、ちゃんといただいてるよ。」
「それよりユーキ、明日はお前の武器や防具を揃えないとなー!」
「そうそう、だって普通の服と素手ってどんな死にたがりだよーってなっちゃうもんね!」
「ユーキはどんな武器が良いんだ?」
確かに、生き返らせて貰った時に服もこの世界の標準的な服に変えて貰ったしな。防具とか武器とかを買わないとな。
「片手剣が良いな。本当は刀とかあれば良いんだけれどなー。」
「ん?刀ならあるぞ?昔、勇者が作ったと言われる武器だけど、すぐに折れるんだよなー!」
おいおい、勇者がいたのかよ!てか、そいつも日本人なのか?
「刀は特殊な使い方するからな。叩き斬るんじゃなくて、引いて斬るんだよ。」
「そうなのか?良くわからんな?ユーキはなんで知っているんだ?」
「あー、じいさんが言っていたんだ。」
危ない危ない!気を付けないとな!
「ユーキ兄さんすごーい!」
「良く考えれば、そのおじいさまはすごい方ですね。ユーキさんのその強さもおじいさまが修行をしてくださったんですよね。」
「まあまあ、詮索はしないって言ったろ?これ以上は聞かねえぜ、すまねぇなユーキ。」
「ユーキさん、すみません。」
「いや、気にしてないさ。俺もあのじいさんは良くわからないんだ。」
…あっぶねぇ…。じいさんなんていねぇしな。
「じゃあ明日は武器と防具を買いに行ってからギルドに行くか!」
「ああ、そうしてくれると助かるよ。」
そうして夕食を取り、それぞれの部屋に戻る。
「うーん!異世界転移してからいきなり戦闘とは思わなかったな。疲れたし風呂入って寝るか!」
この世界の生活水準は日本より劣るが、各部屋にトイレと風呂がついている。
多分、勇者とかが普及したんだろなぁ…。
日本人は異世界に来ても全然自重しないな。
それで助かってるから良いんだけど。
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「ねえねえ、ソフィ姉さんはユーキ兄さんの事どう思う?」
「不思議な所がありますよね。ものすごく強いのに一般常識を知らないし。山奥と言ってもこの辺りにはそんな大きな山は無いですし。悪い人ではないと思うのですが…」
「違うよー!ユーキ兄さんカッコいいよね!彼女はいないと良いなぁ!」
「えっ?そっちですか?…まぁ、いい人そうには見えますが…」
「そうだよねー!私たちを助けてくれても、ユーキ兄さんからお礼を要求されないし、アーネさんも助けてたし、助けるのが当たり前みたいな感じですごいよね!」
「そうですね。ふふふ、ミリィちゃんはユーキさんが好きなんですね。」
「好きだよ!ミリィ姉さんは違うの?」
「うーん…、いい人だとは思うんですけどね。」
「じゃあ私の恋の応援してよ!」
「えっ!…そうね。応援するわ。」
****
!なんか悪寒が…?
早く寝るか!
…
……
翌朝俺達は武器と防具を揃えてギルドに到着した。
「Bランク最初のクエストだからな!気合い入れてくぜ!」
「おはようございます。皆さん。」
「あ、アーネさん!おはようございます!どうしたんですか?俺達に用事でも?」
「レオさん、実はそうなんです。ギルドマスターからの指名依頼でして…」
「ギルドマスターから?なんだろう?どうする?まずは話を聞いてみようと思うが?ユーキやソフィ達もそれで良いか?」
…ギルマスから?まぁ、受ければ好印象にはなるかな?
「俺は問題ない。」
「私達もそれで問題ありませんよ。」
「ありがとうございます。依頼内容はBランクモンスターのブラッディベアの討伐です。王都近くの村に現れたそうなんです。ですが、討伐出来る冒険者がいなくて…」
「侯爵のヤロー!でも、Bランクモンスターを単独パーティーでとなるとな…」
「良いんじゃないか?俺なら単独で倒せると思われたんだろう。」
「でもこれは俺達パーティーだからな。ユーキだけに負担をかけるわけにはいかないだろ?」
「いや、村人が困っているんだろ?気にしないさ。」
「ユーキがそう言うなら良いんだけど…」
「ありがとうございます、ユーキさん。でも、けして無理はしないで下さい。本来はBランクパーティーの合同かAランクパーティーの依頼ですので。」
「なに、問題ない。」
「ユーキ兄さんすごい自信だね!私も頑張るよ!」
「ユーキさん、私も微力ながら頑張りますね。」
「よし!ユーキが良いならこのクエスト俺達が受けるぜ!」
ふふふ…これでギルマスの好感度も上がるかな?
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「ユーキさん…皆さん…ご無事で。」
アーネはユーキの優しい心に惹かれるのを自覚しつつ、ユーキ達の後ろ姿が見えなくなるまで見送るのであった。
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「ここがその村か。早速この村の村長に話を聞きに行くか!」
「ああ。」
人はあまり外に出ていないようだな。家に隠れているのだろうか?
良く見ると、牧場の方で大きな生き物が暴れたような跡が残っている。
まだ人の被害が出ていなければ良いが…。
「よく来てくださいました、私がこの村の村長です。」
「早速話を聞きたい。先ずは人の被害があるのか?どこに魔物がいるんだ?」
「ええ、それでは…」
話を纏めると、
①人の被害はなし
②定期的に現れては家畜の馬を食い殺していく
③村の北にある魔物の森からやって来た
④そろそろ家畜もいなくなり、人に被害が出るかもしれない
であった。
「じゃあ拠点を作って北の森の探索を始めるか!ユーキもそれで良いか?」
「ああ、それで問題ない…」
言い終わる前に乱入者が現れて話が止まる。
「村長ー!魔物が出た!牧場のとこの家族が危ない!」
「悠長に拠点を作ってる場合じゃなくなったな。行こう!」
「怪我人は私に任せて下さい。神官として回復魔法をある程度使えます。」
「私は他の人を先に避難させるよ!兄さん、ユーキ兄さんを守ってね!」
「おいおい、俺がユーキを守るのか?逆になりそうなんだが…」
「ふっ。安心しろレオ。俺がお前を守ってやるさ!」
「ありがたいような悔しいような…」
「じゃあいくぞ!」
そうして俺とレオは牧場の方に駆け出す!
そこには大型トラックのような大きさの凶悪な熊…熊?が居た。
…いやいや、デカすぎるだろ?この世界の魔物はどいつもこいつもでかいのか?
「おぉ、やっぱブラッディベアは恐ろしいな…。これまでよく人の被害が出てなかったな…。」
「よし!身体強化して俺が突っ込む!レオは俺が気を引いている間に牧場の家族を連れ出してくれ。」
「ああ、わかった!ユーキも気を付けろよ!」
「なに、心配ないさ。レオも気を付けてくれよ!」
そう言って俺はブラッディベアの前に出る。
「本当にでかいな…。これを熊って言って良いのか?」
「グルゥアァァ!」
ブラッディベアが目の前に現れた俺に向かって大きな爪を振り下ろしてきた!
さすがにこれを直接受けたら不味そうだな…。
刀を抜いて振り下ろされた爪の流れに逆らわずに受け流す。
「くっ!すごい力だな!」
何度かブラッディベアの攻撃を受け流す。
「ユーキ!避難は完了した!俺も加勢する!」
「すまん!少しだけヤツの攻撃を防いでくれ!」
そう言って刀を鞘に戻す。
「うおぉぉ!壁役やってやるぜ!」
レオがブラッディベアの攻撃を防いでくれる。
その間に身体強化を最大限まで高め、集中する。
ブラッディベアがレオに全力で攻撃しようとして立ちあがり、隙が大きくなった!
「今だ!」
俺は神様から貰った武芸の才能を最大限に発揮して、居合抜きを放つ!
俺の刀が抵抗なくブラッディベアの胴体を通り過ぎる。
「グルアァァ?」
一瞬の後にブラッディベアが胴体から真横に真っ二つになった。
「おいおい、マジかよ…。一撃でブラッディベアを…。」
レオが驚いているが、俺自身も驚いている。
神様の加護って半端ねぇな!一撃かよ!
「レオ、助かった。」
「いやいや、一撃ってなんだよ!すげえ技だな!」
「ああ、居合い斬りと言ってな、刀を鞘にしまってから放つ技なんだ。」
「兄さーん!ユーキ兄さーん!こっちは終わったよー!今助けに行くからねー!」
そう言ってミリィとソフィがこちらにやってくる。
「えっ!ブラッディベアが真っ二つなんだけど!」
「すごい…もう倒しているなんて…」
「ああ、俺も側で見ていて驚いたぜ!ユーキはAランクの実力はあるな!」
「いや、レオがブラッディベアを引き付けてくれてたからさ。」
「アイツが大きく振りかぶって来たときはどうしようかと思ったぜ!」
「兄さんちゃんとユーキ兄さんの役にたったんだ!」
「当たり前だろ!俺もBランクの戦士なんだぜ!」
そう言ってレオとミリィがじゃれあう。
…俺も混ぜて欲しい。
「ユーキさん、お怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ。ソフィも怪我人の対応ありがとう。」
「いえ、神官の端くれですから当然ですよ。」
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『ユーキさんは自然に私達にもお礼を言えるんですね…。一番危険な目に合ったと言うのに…。やはり悪い人ではないですね。それにミリィ達を見守るように見ている…』
ソフィはユーキの気配りに感心し、ミリィ達を優しく見守っている姿に惹かれていった。
…実際は嫉妬にまみれた視線だったのだが…
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「ありがとうございます!ありがとうございます!」
村長が俺達に感謝の言葉を言っている。
「人が無事で良かった。俺達は依頼を受けただけだからな。気にしないで良いさ。な、ユーキ!」
「そうだな。」
そう言ってレオが俺に肩を組んできた!
ふおぉぉぉ!
距離が縮まってる!
いいぞ!グッジョブ俺!
俺も肩を組んで良いよな?良いんだよな?
俺もレオの肩を組もうとした時に村長がクエスト達成書を出してきた。
「よし!これでクエスト完了だな!」
レオが受け取ったので、俺の手は空を切った。
…おのれ!村長め!
俺の恋路を邪魔しやがって!
とりあえず村長を睨んでおいた。