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ふわっと身体が浮いた。
全速力で直線を駆け抜けようとした自分の脚に、何かが絡まった。
「っぐ……!」
成す術もなく地面に全身が打ちつけられた。強い衝撃と、速度の乗った身体はそのままざりざりと地面に削られた。声にならない悲鳴を漏らしながら、全身を様々な痛みが覆った。
――これは、何……?
この感覚はなんだ。
現実なのか。記憶なのか。
「ちょっと勘弁してよねー」
間延びした、嘲るような声が頭上から聞こえた。
――この声……。
「グラウンドならして綺麗にしたばっかなのに、汚れちゃうじゃん」
言いがかりだ。そして、この声。心が一気に黒く濁っていく。まるで泥をぶつけられ、塗りたくられるような強烈な不快感。
――呪う呪う呪う。
ひやっとした。自分の心は、無意識に憎しみを呪いとして唱えていた。
「もっと周り見てよねー」
今見ているものがなんなのか。ただ間違いない気持ちが一つだけあった。
――私はこいつを、許さない。




