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彼女と僕
今日も雨だ。
下駄箱に上靴をしまい、靴を履き替える。放課後の閑散とした空気の中、僕の視線はいつもの場所に向けられている。雨なら今日もいるはずだ。
――やっぱり。
驚きも何もない。今日の空模様を見た瞬間にそれはもう決まりきった事だった。
雨が降ったら彼女がいる。傘を差しながら僕は玄関を抜け、目の前に広がるグランド
に足を向ける。
低、中、高と三種類手前から順に並んだ一番高い鉄棒にもたれかかって、今日も彼女はそこにいた。
「雨だね」
いつも僕は彼女にそう声を掛ける。そんなもの見ればわかるし、わざわざ口に出すことではないかもしれない。
「雨だよ、今日も」
それでも彼女はいつだってちゃんと答えてくれる。僕の言葉を無下にしたりはしない。
「傘は、ささないよね」
雨だと分かっているのに、彼女が傘をさしている所を僕は一度も見たことがない。
「雨にあたるのも悪くないよ」
――そうかもね。君の場合は。
僕は心の中でそう思いながら口には出さない。僕にはその言葉を聞く度悲しくなる。
――その方が綺麗なんだろうね。
僕はその言葉を口にしてしまいそうになるのを、毎度堪える。でもいつか、僕がその言葉を口にする時が来るだろう。
全てが確かになった、その時には。




