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プロローグ00



 ダンジョン。

 それは、神々が人へと与えた試練。

 試練を乗り越えた者は褒美が与えられるという。

 最強の番人、ダンジョンマスターに戦い勝てばどんな願いも叶うという。

 不老も、延命も、死者の復活すらも。



「……参った、負けを認めよう……。お前達の願いはなんだ」



 今ここに、一つのダンジョンのダンジョンマスターが破れ、己を倒した者の願いを問う。


 彼らはその言葉に対し薄ら笑いすら浮かべて、望みを口にした。

 彼らは知っていた。

 ダンジョンマスターは神ではない。神から力を与えられた存在(モンスター)に過ぎない。だから叶えられない願いもある、と。

 事実、そのダンジョンマスターはその願いに戸惑い、そして困惑した。叶えられるものでは無かった。

 だから、彼らは剣を振り上げ、ダンジョンマスターに止めをさした。

 ダンジョンマスターは霞のように消えていく。

 全ての粒子が消えると、今度はダンジョンの壁や床、天井から光の粒が放出されて、形を作る。

 それは、一人の少女だった。


『……』


 少女は彼らを見つめる。

 彼らはまた薄ら笑いを浮かべた。


「五度目、だね、女神様。俺達の願いは変わらずだ」

『……ええ、分かっています。そして、あなた方もそれが分かってるから、突き進むのでしょう?』

「ああ、そうだよ。俺達の本当の願いを叶えられるのは、俺達の女神しかいないからな」

『……ええ、そうですね。それで、……それ以外には、あなた達は何を私に望みますか?』


 その言葉に、彼らは口を閉ざす。

 彼らが身につけている防具も、状態異常無効のアクセサリーも、伝説とまで言われる武器も、ダンジョン内に転移出来るアイテムも、全て目の前の女神から貰ったものだった。

 それらを身につけて彼女のダンジョンを荒らし、彼女を敗北へと導こうとしているのに、彼女は、ダンジョンを踏破した者達を讃え、褒美を与えるようとする。

 それは、女神としての矜持なのか。


「……何か、役に立つスキルか魔法をそれぞれに欲しい」


 視線を女神から外しリーダーの男は言う。


『分かりました。では、前衛には、自然治癒能力(大)と、詠唱破棄の防御壁を。後衛には、詠唱短縮と、自然魔力回復(大)を。それと、攻撃スキルを一つずつ、渡しましょう』


 彼らの前に、スキルが封じられた本が現れる。


『今の私ではこれが限界です』


 女神はそういうが、彼らからすれば確かに有用だった。


『気に病む事はありません。これはそういう遊びですから』


 女神は彼らにそう声をかけ、微笑む。


『残りのダンジョンは五つ』

「「「「「「え!?」」」」」」


 彼らは驚きの声を上げる。

 彼らが知っているのは四つまでだ。


『これからそう経たないうちに、もう一つ、五つ目のダンジョンが出来ます。私にとって、最後になるかもしれないダンジョンです。お互いの存続をかけて、頑張りましょう』


 女神は最後も微笑んで消えた。

 彼らは、歯を食いしばったのち、奥へと進み、中に隠されていたダンジョンコアを叩き割る。


 ガラスを叩き割るような軽く高い音が響く。

 そして、ぱっとダンジョン内が明るくなる。


『ダンジョンが攻略されました。これより、ダンジョン内の全ての者を転送します』


 その案内が数回有った後、ダンジョン内に居た全ての人間はそこから近い広場へと転送され、生き残っていたモンスターは別のダンジョンへと転送される。

 そして、残っていた宝箱などは、攻略した六人の手のひらの中の小さな箱に収められた。

 彼らはその箱は開けない。開けられない。これの所有権は、彼らには無いのだ。


「……帰ろう」


 リーダーの男が言うと、五名は小さく頷いた。

 六名の首にはチョーカーがあった。

 オシャレにも見えるそれ。

 それにはある模様があった。それが何か分かった者が居たら顔をしかめただろう。もしかしたら怒り出すかもしれない。

 それは、『隷属』と書かれていた。


 六名は偉業とも言える事をしたにも関わらず浮かない顔をして去っていく。

 そのためか、誰も彼らがダンジョンを攻略した者達だと気づかなかった。




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