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愚者ラーフル2 勇者登場  作者: 茅咲水香
8/8

愚者の奴隷

8.愚者の奴隷

「よかったんですか、勇者一行をそのままにしておいて。」

「カレーなんて記録にも残らない通過点のはずなのに、あれだけ長期間滞在したのが間違いなんだよ。」

 旦那はなんてこと無いという顔をする。

「私は勇者は嫌いではないぞ。近い将来きちんと魔王を倒すだろうからな。」

「倒される魔王がいるんですね。」

「会ってみたいかい?」

「興味は無いです。」

「そうか。」

 ちょっと残念そうに旦那は言う。別にそこまでして合わせたいわけではなさそうである。

「知り合いなのですか?」

「いや、全然知らん。パインなら真正面から行っても面会できるだろうってだけの話だ。」「会いたいって言わなくて本当によかったと思いましたよ。」

 パインがあきれ顔で言う。

「旦那様は本当にたいがいですよね。」

「救いがたい、の間違いかな?」

「救う必要は無いと思いますが。」

「それはそうだ。」

 旦那は納得する。

「ま、アレスはあれで結構優秀だからな。一時的にパインを追い詰めているし。」

「気がつかれていたらどうしようかと思いましたよ。」

「なんにせよ、1ダメージも与えずに勇者のパーティを封殺できたのだ。何か褒美をやらなくてはならないだろうな。」

 旦那は優しく微笑んだ。


 赤の小枝亭を出て冒険者ギルドに向かう。しばらくは金を稼がなくていいだろう集団が、昼間から酒を飲んでいる。堅実な人間は、新しいクエストを見て悩んでいる時間だ。ハイドラ退治のクエストは、一人あたり鉄貨二百枚となった。多少贅沢のできる金額で、辺りにいる冒険者の顔も晴れやかだ。

 旦那に気づいて声をかけてくる冒険者もいたが、それをかわして二階に上がる。四人パーティがクエスト掲示板の前で悩んでいる。カウンターには、クエストを受けるであろうパーティが手続きをしていた。

「コルネットはいるかい?」

「はーい、いますよ。」

 カウンターの奥から元気のよい返事が返ってくる。コルネットが歩いて出てくる。

「旦那さん、どこかへ出かけるのですか?」「うむ、それなんだがな。」

 旦那が頭をかきながら言う。

「そろそろ、ちょっと小旅行に行こうかと思ってね。しばらくギルドの方には顔を出せないと思うんだ。」

「しばらくって、どのくらいですか?」

「数ヶ月から一年くらいかな。まあ、ちょことちょことテレポートで戻ってくるから、全くカレーにいないわけでもないのだが。」

「なんだ、それなら心配ないですね。勇者さんたちが出立してしまったので、腕の立つ冒険者が減ってしまいましたから、緊急クエストの時は呼んでしまうかもしれません。」

「ははは。そんなものが起きないように祈ってるよ。」

「コルネットちゃん、あたしのこと忘れないでね。」

「忘れないわよ。時々でいいから顔を見せてね。」

「はぁい。」

 パインがにこにこして答える。

 カレーの一日は始まったばかりだ。


勇者君のシリーズはこれで終わりです。また出番を作ってあげたいですね。

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