ファミレス
「いらっしゃいませー」
「あー…その四人で」
「こ、こちらの席でよろしいでしょうか?」
あ、店員さん引いてるのわかる
だろうね!
20代中盤の普通のサラリーマンの男
着物着た黒髪の良いとこのお嬢さん風美人
サングラス掛けたスーツのボン・キュッ・ボンの金髪美人
茶髪の生意気そうなギャル風美人
こんな組み合わせ入ってきたら
俺でもドン引きするわ
「メ、メニューがこちらになりますぅ。
お決まりになりましたら、そちらのボタンでお呼びください」
「あ、はい。スミマセン」
「………………」
しかも女達が、ずっと無言で
雰囲気がズーンと重い
しかも、こいつらお互いに目を合わせようとしないしな
近くの席のグループがこっち見てヒソヒソ話してる
……帰りたいなー
「さーて何食べようかなー?」
わざとらしく明るい声をあげてメニューをめくる
「み、みんなは何を頼むー?」
「お紅茶を」「コーヒーを」「腹に貯まるもんを適当に」
「あ、そう…」
もうヤダこの空気!
しかもそんな時に限って童女がメニューをペラペラとめくりながら
「…地雷女はさー なんか食ったほうが良いんじゃねーのー?
何しろ、このメンバーん中で一番バストが貧相だからなー」
煽り禁止と言いたい
一瞬くわっ!と眼を見開いた雪音さんだったが
「…けっこうです。」
どうにか堪えたみたい
「…よせ童女。ここで先程のような騒動を起こすつもりか?」
「話し合うために、ここに来たはずだぞ?」
タマちゃんが冷静にたしなめる
常識人がいてくれて助かる
そのタマちゃんは
メニューのデザートのページを熱心に見ている
「なんか頼みます?」
「え?…ああ、すまんな。ではこちらを」
と。彼女が指差したのは、可愛らしいイチゴのパフェだった
「こーゆーの好きなんですか?」
「大好きぃ☆」
と言った後にハッとしたように慌てて口を手で隠す
「今更隠してもしょーがねーだろー。素で話せよ」
「…うん」
頷くとサングラスを外す
その素顔はキツいイメージなんてまるでない
タレ目気味の青い瞳をした優しげな美女だった
「エヘヘッ」と柔らかな微笑みを浮かべる
「どゆこと?」わけがわからないよ!
「旦那様は白面金毛妖狐の伝説はご存知でしょうか?」
雪音さんがフォローしてくれる
「妖狐伝説があるのは知ってるよ?そんなに詳しいわけじゃないけど」
ハンバーグステーキを切り分けながら童女が
「んじゃあ九尾の狐てのは聞いたことねーか?」
「那須の殺生石伝説程度なら」
雪音さんは優しげにタマちゃんを見つめながら
「彼女の本名は玉藻です」と
その伝説の妖狐は嬉しそうにイチゴパフェをパクついた