市街戦
社畜の夜は遅い
太陽はとっくの昔に地平線へと没し
都会とはいえ夜の闇が至る所に点在する時刻
そんな時間の社畜の駅からの帰り道
今日は近道やめて別ルート通ろう
またアレにエンカウントしたら嫌だから
そんな俺の期待を裏切るように
「よー兄ちゃん。また会ったな」
路地の暗がりから
腰に手を当て大きな胸を強調するかのポーズでギャルが現れた
「キャー!!お化けでたー」
「お化けじゃねえよ!」
つま先立ちして抗議の声を上げるギャル
「でもヒトじゃないんでしょ?」
「ま、まあな」
ビシっと指を突き付けて
「やっぱりお化けじゃないか!」
「いや、ちょーっと待て!せ、正確にはお化けとは違うんだよ!」
「えーっと…何て説明すればいいのかなぁー???」
屈みこんで悩み始めた
意外とこいつバカだ
背後から静かな怒りを含んだ声が聞こえてきた
「ひとの旦那様に、ちょっかい出すの止めて下さらないかしら?」
「あーん?」
ギャルは顔を上げ俺の背後を睨む
暗い路地裏から白い着物姿の女性が静々と現れる
「アレがお前のコレ?」
と俺に向かってギャルが小指を立てる
「そーゆーことになります。ハイ」
ギャルは情けなさそうな呆れたような顔をして
「ずいぶん辛気臭いのに取り憑かれてんなー兄ちゃん…」
(ピキッ
あ、雪音さんの額に青筋立った
「わ、私達は周囲に祝福された恋焦がれ合う者同士で!
取り憑いてるとか!そんなんじゃ…」
ギャルは、そんな雪音さんを無視して俺に
「マグロだろ?」
返答に困るわ!まだ手すら握ってねえし!
「わ、私たちはまだ き、清い関係で!」
雪音さん!煽りには乗っちゃダメだ!スルーが基本ですよ?
「あー なるほど。なるほど。お高く止まってサセてもくれないと…」
とウンウン一人で頷いている
「めんどくせータイプの地雷女だよな?」
俺に同意を求めるな!
周辺の大気中の水分がビキビキと音を立てて結晶化し地面は凍りつていく
こいつ煽りのプロか!
あの温厚な雪音さんを、ここまで怒らせるとは!
「なーんだ 誰かと思ったらカマトト猫被りの雪女かよ」
ヤレヤレだぜ。と手を振る
「はしたのうございますよ!」
雪音さん完全に笑顔が破綻してるよ
スマイル・スマイル
「真夏の都会には場違いなんじゃねーの?」
「ド田舎でヒッキーしてせっせと雪でも降らしとけよ」
あっかんべーしながら煽る煽る
いきなりギャルの隣に鋭い氷柱が地面から飛び出す!
「おー こえー こえー 未通雪女が怒ったぞ(笑」
おいバカやめろ!!
次々に氷柱が飛び出してくるがギャルにはかすりもしない
雪音さんの形相見れば手加減してるとは思えない
すごい回避力だな。てかラッキー回避多すぎ
「はん!あたしは運気を操る座敷童子の童女様だぞ!」
「命中られるもんなら、命中て見やがれ!!」
なに…ざ、座敷わらしだと…?
「お前みたいな座敷童子がいてたまるかー!!!」
思わず俺は叫ぶ!
「うっせーよ!」
童女のいる場所に雪の礫が襲いかかる
だが彼女は涼しい顔をして「そーれ」と一歩避ける
雪の礫が消えると童女の背後にあった道路標識が
まるでショット・ガンで撃たれたかのようにズタボロになって倒壊する
!!!!
雪音さん、これはオーバーキル過ぎるよ!!
周辺へ被害が広がり過ぎる!やり過ぎ!やり過ぎ!
どうやって、この二人を止めようか?てな事を考えていた時だった
「いい加減にせんか!バカ者ども!!」
ハスキーボイスが響く
そこには金髪にサングラスを掛けたグラマラスな女性が立っていた
紅い紅いジャケットに
スリットの開いた紅いタイトスカート
胸元を大きく開けた黒のブラウスからは溢れんばかりの巨乳が存在を主張する
…アニメでこんな赤い人見たことあるぞ?
雪音さんと童女は、その女性を見て
「おめーは!」
「貴女は!」
そしてハモる
「「タマちゃん!」」
「………お願いですからぁ「タマちゃん」って呼ばないで下さいよぉ」
哀願するようにタマちゃんはそう主張した