夏の日の想い出
妄想を書き殴っただけの初投稿です
乱筆乱文は何卒ご容赦の程を
カタン コトン
電車に揺られながら、うつらうつらと夢を見る
カタン コトン
幼い頃の夢だ
田舎のばーちゃんの村の神社
その鬱蒼と茂る鎮守の森
夏の強い日差しは樹々が優しい木洩れ陽へと変える
樹と草と土の強い匂い
四方八方から降り注ぐ煩いくらいの蝉時雨
社の裏の森を走り抜けると
そこは一面の向日葵畑だった
その咲き乱れる向日葵の夏の陽炎の中に
日傘を差した一人の女性が佇んでいた
此方に振り向いた彼女は
真っ白なワンピース
長い長い黒髪に
透けるように白い白い肌
際立つ白さ故か唇が紅い紅い
それが夏の眩い陽の中の向日葵畑に立っていると
幼心に美しい一枚の絵画の様だと感じたものだ
彼女と何を話していたのかはあまり憶えていない
ただ木陰で彼女の膝に座って
「ボク大きくなったらおねえちゃんをお嫁さんにしたげるね!」「約束だよ!」
こんな約束をしたのだけは覚えている
なんともマセた糞餓鬼だったことか
彼女は静かに静かに微笑んでいた
ガタン ゴトン
キーッ
心地の良い微睡みから現実に引き戻される
「危うく乗り過ごすところだった・・・」
俺の住むアパートのある駅へと列車が停車する
あの頃と違う都会の慌ただしい喧騒の中
列車から飛び降りて家路へと急ぐ
夏の都会の蒸し暑い空気がネットリと俺を包み込む
「・・・腹減ったな」
部屋の冷蔵庫には何かあったか?
まあいい
無かったら近くのコンビニにでも行くさ
外から見ると部屋の明かりが付いていた
ああ、そういえば近いうちにウチにばーちゃんが来るって電話あったな
ドアノブを回すと鍵は開いていた
「ばーちゃん、都会は物騒だからちゃんと鍵は閉めておいてくれよな・・・」
文句を言いながら玄関の扉を開けると
ヒンヤリとした冷気が流れ出てくる
そこには長い黒髪を結い上げ
涼し気な雪の結晶が刺繍された白い着物の一人の女性が
三指を着いて正座していた
一瞬、部屋を間違えたのかと慌てたが部屋は間違いなく俺の部屋だ
「…御帰りなさいませ」「…旦那様」
鈴が鳴る様なと形容できる声で女性が俺を出迎える
顔を上げ黒く潤んだ瞳が俺を見つめる
その面差しに幼い頃の遠い遠い記憶が蘇る
先程の電車での夢の中に出てきた懐かしき麗しの聖女
だが、おかしい・・・
全く歳を取っていない・・・
それに旦那様だと?
こうして俺は雪音さんと再会することになった




