第十七話
皆についていき辿り着いた店は、大きな赤い門がある店。
この世界の事は良く分からないけど、とりあえず「高そうだな~」っと思う店構えだった。
いやね、この街、全体的に中世ヨーロッパの地方都市の様な街並みなのですが、その他の建物と比べるとこの店、単純にデカくてピカピカしてるのよ。
店の前には黒人の門番みたいな人いますから。
そんな店の中にするっと入っていく俺達。
俺はビクビクしながら門番を見ていたけど、特に問題はなかった。
「こんばんわ」「ちぃ~す」「よろしくです」っと皆が挨拶する中、埼玉君が門番にいきなり「オラオラチーン!うえぇ~い」っと叫びながら殴りかかった?時は衝撃に震えた。
「埼玉氏、気でもふれたのか?」っと本気で心配になった。
だが、それを笑いながらいなす門番。
そしてがっちり握手する二人。どうやら挨拶的な何かだったらしい。
「調子どうよ?」
「そこそこよ」
「へぇ~、今日は金あんのか?さいっち」
「そこそこな」
「俺に分けてくれてもいいんだぜ」
「また今度な」
「おう」
そんな会話をしながら門番の元を離れる埼玉君。
彼をびっくりして見ていると。
「どしたん?くっきー」
いや、どうしたのはそっちだろ。
あのムキムキマッチョマンの胸筋ペちペちしてましたよ、埼玉氏。
さいっちとか気軽に呼ばれてましたやん。
「あの・・・友達?」
「そんなとこ。中々オモローな奴なののよ、これが。今度クッキーにも紹介するっしょ」
そ、そうなんですか。
いや、別に、「俺も友達になりたいななぁ」的意図で言ったわけではないので遠慮しておきます。でも、あの強そうな門番が友達ですか~、いやはや、ちゃら男のコミュ力に脱帽ですよ、私。
そんな衝撃を受けながら建物の中に入り、徹君が何やら受付をすますと綺麗なお姉さんが現れて俺達を案内していく。
頭に魚のヒレ?みたいな耳をつけていてビビったが、中々ファンシーだった。
つけ耳のようだったが、ひょこひょこ動いていて可愛いい。
「お姉さん、触っていいっすか、いいっすよね?」
っと俺が心の中で思っていたことを埼玉君が音にする、
「ダメ・・・いつもいってるでしょ」
「そんな、一回でいいっすよ。先っぽだけ、先っぽだけでいいっす」
んん?
彼、どこかの紳士向け漫画で良く出てくるようなセリフ(笑)を私の前で放ちおった。
まさか、マイイヤーの鼓膜をその音で震わされる時が来るとは・・・
「ダメだってwww」
「ほんの少し、先だけ、先っぽだけ」
「ダメ、100万ゴールド払ったらね」
そんな風に軽くあやすお姉さん。
なんでしょうね、凄くなれた感じでした。
こういう客が多いのかな?
というかなんでしょうね、この店。
どうみても高校生は入店できないようなお店にしか見えないのですがね。
本当にこの店に来ていいのかな?ふわふわと沸いてくる罪悪感を感じる。
歩きながら隣の埼玉君に尋ねる。
「埼玉君、埼玉君、埼玉氏、この店、大丈夫なの?その、色々・・・年齢とか?」
「大丈夫、大丈夫、街で評判でドーンよ、ここは。それと秘密だけんど、ここでは俺ら全員20歳って事になってるから、よろっ」
ドーンかぁ・・・
よく分かりませんがな!
それにするっと年齢詐称してますがな。
河合さんとか、中学1年生にしか見えないけど大丈夫なんですかな。
「それ、ばれないの?門番にマッチョいたけど」
「おっけ、おっけ、転生者は特例だって。シスターさんも言ってたし。俺らの見た目と歳はよく分からないみたいだから、問題ナッシング」
シスターさんがいうならいいか。
そういえば、アジア系には一人もすれ違わなかったな。
「そうなんだ」
「そうそう。それに、現実でもやってることじゃん、クラブとかいく時に、偽造免許所作ってるっしょ。俺っちの名前、「葉山・グレース・俊三」だかんね」
いや、「君もやってるしょ?」って同意を求められても困りますがな。それにそんな仮名というよりか、プロレスラーのリングネームみたいなので大丈夫なのかな?
だが確かにネットでは、「あなたは18歳以上ですか」の質問に、最早ためらわず「Yes」ボタン押してますが、さすがにリアルでは違いますよ。怪しい店にも行ってませんよ。
でも、今回は東堂さんと河合さんもいるので、そういう意味での大人の店ではないだろう。きっとそう願いたい。
「それで、ここ、どんな店なの?」
「なんていうか、飯が美味くて、ショーも面白いって感じ」
「ショー?」
ディナーショー的なあれだろうか。
誰かピアノでも弾くのかな?
「そうそう。今、この街にきてる冒険者がやってるんよ」
「冒険者って魔物を倒す人の事だよね?」
「そうそう。そいつスゲーって評判でね」
「でも、それならわざわざショーにでなくてもお金たくさんもってるんじゃないの?」
「多分リッチ系。そういや~、なんでショーに出てるか謎だなぁ、どうでもいいけど」
っと、歩いていると長い廊下が終わり、大きなホールに入る。
何気なく室内を見ると、その姿に、えええええええええええええっっとビビる。
口を開けてままポカーンっと視界を止めてしまう。
まず目に入るのは、異様に大きな水槽。
本当に、日本の水族館の巨大水槽の比じゃなくて、水槽の先が見えないんですが・・・
その中では様々な魚が泳いでいる。
その種類は最早水槽ではなく、一つの生物世界だった。
「埼玉君、あの水槽?というか、立体の池みたいなのは?」
「あ、あれ。気付いちゃった?クッキー」
いや、こんなドーンとどこからでも見える場所にあれば気づくでしょ。
気づかない方がおかしいでしょうよ、私の視力、自慢ではないですが両目1.5ですよ。
「ケース1って呼ばれてるんよ。なんかの魔道具使ってあの大きな水槽維持してるみたいな感じ。よく分からんけど。あの中でショーをやるし」
ほ~う、水中ショーですか。
それは中々興味深いですな~っとでっかい水槽を眺めていると、
「ちょっ、立ち止まってんと、おいてくよー」
東堂さんが振り返り、俺と埼玉君に手を振る。
「わりぃ、加奈、すぐいく。くっきー、いそぐべ」
「そうだね」
皆に追いつき、そのまま案内されるテーブルに座る。
その際、ささっと気づかれないように目的の席に移動する。
慎重に周りを確認していたが、誰も俺の動作に不信感は抱いていないようだ。
やりました!
やりましたぞよ!
ひゃっほー!
河合さんの右隣の席GET。
右には埼玉君。席はこんな感じですよ。
河合さん 俺 埼玉君 徹君 東堂さん 河合さんっと後は円形。
左にいる河合さんの方を見ずに、周辺視野でその様子を捉える。
床に足がつかない椅子に座って、足をブラブラさせている彼女。
その一回一回の動作が心を揺らす。
「うはっ!水槽バリ近!」
東堂さんが水槽を凝視している。
「お魚さんですぅ~。おっきぃです」
「そうね。あーし、あの魚が好き」
東堂さんの好みはどうでもいいが、彼女たちにつられて水槽を見るとそこには水中空間。
すっごい魚ですよ、はい。
本当に海底を切り取ってもってきたかのような迫力ですね。
「ねぇ~、ねぇ~、久木田君はどのお魚が好き?」
ぼぉーっと水槽を見ていた俺に声。
そう、その声はマイエンジェルの河合さん。
これはいいところを見せなければ、一番かっこよさそうな魚を選ぼう。
水槽を見回し、岩の下に隠れている黒いじめーっっとした奴にしようかと思ったが、さすがにそれは暗すぎだろと思い、鮮やかな水色の鱗を持ち、元気に泳ぎ回っている魚にした。
「あれかな、あの青いやつ」
「あれ、いいよね。きれかわで」
「うんうん」
「あんた、適当なこと言ってるでしょ。あんたにはあの岩の下にいるような魚がお似合いよ」
東堂さんボイスが差し込まれる。
はい、よく分かりましたね、私の好みを。
まっことその通りでございますが、それは言わないで下さると助かります。
「ち、ちがうし」
「あのお魚もいいよ。じめーってしてるけど、縁の下の力持ちだよ」
よく分からない持ち上げ方をする河合さん。
岩の下にいるだけですよ、あの魚。別に何かを支えているわけではありませんよ。
そんな感じで雑談し、「料理はいつ注文するのかな?」っと思ったら、既に徹君が受付で済ませていた。さすがですな。
次々に机の上に運ばれる料理を食べながら雑談。
ショーが中々始まらないなぁ~っと思ってエビ?のような物を食べていた時、突然のアナウンス。
『誠に申し訳ありませんが、諸事情により、本日のショーは中止となりました。お帰りの際に返金いたしますのでご容赦ください』
「っ、なんだよ、まじかよ。職務怠慢じゃねーか、この店」
ちょい大きな声で野次を飛ばす東堂さん。
本当、ちょっと大きいですよ。
反射的に、誰かに聞かれていないか周りをキョロキョロ伺ってしまった。
「うぇ?まじかよ~。でも、返金ならいいか。飯美味いし」
「美味しいでしゅね」
「うん、久しぶりにこういうのを食べた」
他の御三方は大変満足の様です。
かくいう私も、大変満足で頬がとろけそうでありんす。
おっと、頬が溶けて舌が怪しく、心の声が時代劇風に。
そんなこんなで、たらふく飯を食った。
あれですよ、某国民的海賊漫画の戦闘後、「宴だあああああああ!」ですよ。最近は戦闘前でもあったりするけど、あれぐらいガンガン料理注文しちゃいましたよ、主に東堂さんが。
最初はその行為にドン引きだったけど、酒も回って良い気分で俺もノリノリで色々注文しちゃった。てへぺろ。
っということで帰宅?
記憶はないけど、多分帰宅した・・・はず!
そういえば、諸事情ってなんだったんだろう?
まぁ、いっか。




