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こんな夢を観た

こんな夢を観た「天かける大橋」

作者: 夢野彼方

 日本道路公団とNASAが共同事業を始める、という大ニュースが世界中を駆け巡った。

 道路公団の代表がテレビのインタビューで答える。

「宇宙だけを見上げるNASA、そして地べたばっかり見てきた我が道路公団が、夢のタッグを組みます!」

 誰だろう、こんな安っぽいコピーを思いついたのは。まるで、チーズとかまぼこの合体商品のCMみたいだ、とわたしは思った。


「この地球は、人類にとってすでに手狭になりました。我々は、宇宙進出に本格的な目を向けなくてはなりません。その足掛かりとして、まずは天の川に橋を建設することを決定しました」

 えーっ!?


 スマホを引っつかむと、友人に掛けた。

「あ、桑田? ねえねえ、ニュース観た? 日米共同で、天の川に橋を作るんだって」わたしは一気にまくしたてる。

「落ち着けって。おれも観てたよ。にしても、すげぇな。天の川だぜ、天の川! 距離にして、いったい、どれくらいあるんだろな」

「世界最大の橋って事だよね」わたしの興奮はまだ収まらない。

「ばか、宇宙規模の話だろうがっ」


 さっそく、調査隊が天の川を訪れ、現地の視察を始めた。土台はしっかりしているか、流星の通り道になってはいないかなど、こと細かく調べられる。

 何しろ、この先数億年もの間、天の川のあっちとこっちとを結ぶ、大切な役割を担うのだ。


 調査内容は、同行したNHKの取材班によって、逐一地球へと送られてくる。

「現在のところ、天の川周辺に活断層は見当たらないとのことです」と宇宙服姿のレポーター。

「活断層って、宇宙にもあるもんなの?」わたしはスマホ越しに聞く。

「さあ。ま、何にしても、土台は頑丈じゃないとな」

 

「この一大プロジェクトをどう思っているのか、現地の方にお話をうかがってみました……」レポーターは、織り姫にマイクを向けた。

「橋が架かるって聞いたときは、嬉しくって、思わず小躍りしちゃった」

「完成したら、年に1度どころか、毎日でも彦星と会えますね」とレポーター。

「ええ、NASAと道路公団の皆さんには、ほんと感謝します。うちのパパは怒るかもだけど、もう歳なんだし、いい加減、昔のことは星に流して欲しいわ」

「『星に流す』というのは、地球で言う『水に流す』ということでよろしいですか?」

「はい」織り姫はにっこりと答える。


「ところで、七夕の行事はどうなります? 7月7日は、もう特別な日でも何でもなくなるわけで、廃止でしょうか」

「うーん……。ずうっと続けてきた年中行事だし、記念日として残していきたいわ。その件に関しては、今後、彦星と相談して決めるつもり」

「じゃあ、最後になりますが、地球の人たちに何かメッセージがあれば、どうぞ」

 織り姫は、こほんっと軽く咳払いをすると、

「みんなー、短冊に願い事は書いたーっ? たぶん、叶わないと思うけれど、もしかしたらってこともあるでしょ? とりあえず、書いとくといいよーっ。てへっ、ぺろ……」

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