一話
雪がこんこんと降り積もり
幼い私のひざ下まで積もったある日。
私は事故にあった。
それも、とても大きなトラックの交通事故だ。
事故の原因は雪が積もり積もった末の
路面凍結が原因のスリップだったそうだ。
当時小学生の私は、車道の横の歩道を歩いていた。
雪に足を取られて動けなくなっていた、私目掛けて
大型トラックが、突っ込んできた。
私の体は、物凄い音がした。
気が付くと、私の身体はトラックと
後ろの石塀の間に挟まれた。
内蔵が潰れるような、肋骨が砕けるような音と共に
激痛が身体を走った。
しかし最初だけでもう、1分も経つと
痛みどころか感覚までも
事故の衝撃に吸い取られていった。
挟まれてから5分が経過した頃、
意識が朦朧とする私に誰かが声をかけた。
『僕が助けてあげるよ』
その声が消えるのと同時に、私の心の中の
死ぬという選択肢がなんだかなくなった感じがした。
それから、1ヶ月。
目を覚ました私の身体は
奇跡に近いほどの無傷だった。
しかし
私は、事故のショックからしゃべることが
できなくなっていた。
喉が、云々《うんぬん》ではなく、
なんだか根本的に話せなくなっていた。
病院の医者は、事故の過剰なストレスが原因でしょう。
と、親に説明した。
が。
私は、ストレスなんてちっぽけなもの
ではない気がする。
あの時聞こえた声。
思い出すとあの声は大きくて、
でもガラス細工のように、
透き通っている。
”僕が助けてあげる”
声の主は、誰だったのだろう。
私は、不思議な感覚を覚えていた。
私が意識が朦朧としていたのを
周りの野次馬達は知らない。
なのに、あの人は私に
声をかけてきた。
しかし、最初に
私に触れたのは、
その人ではなく
両親だったらしい。
トラックと石塀の間に挟まった私を
救急隊員と一緒に助けたのだと両親は
泣きながら云っていた。
それから、数週間してもう私は歩ける程までに回復していた。
遠出こそできないがトイレや食堂、散歩くらいなら余裕で行けるようになった。
『ふぅ』
でも、まだ完全に治った訳ではないこの足は
長時間歩いているとすぐ悲鳴をあげ始める。
足は、そんなに怪我はしてはなかったが
太ももが挟まっていて骨までは至らなかったが出血が酷くてもう、2度と歩けないかも。
とも、云われていたらしい。
まぁ、でも。
このとおり、歩けている。
あの、声の主のお陰なのか。
それとも、ただのまぐれなのか。
そんな事を考えていると、
時間はあっという間に過ぎていった。
『君は、僕が誰だと思う?』
━━声がする。
『ねぇってばぁ!聞いてる?』
━━事故の時とおんなじ。
(・・・!?)
『やっと気がついたの?』
事故の時、意識朦朧とする中
聞こえた声。
――君は誰?
私の問いかけに彼はキョトンとして云った。
『うーん。誰だろうね。』
――っ!
私は、彼の聞いてはいけない事を聞いてしまった気がして、息をのんだ。
彼の言い方にもハッとしたのだろう。
――ごっごめん!!
私は、すぐさま謝った。
しかし、その時はもう遅くて彼の
存在は私の中で消えかけていた。
『僕もう行かなくちゃいけないみたいだ。』
――そんな!! まだお礼も云ってないのに!!
私が言葉を発するたび彼もそれに比例して
消えていく。
『大丈夫。すぐ会えるから。』
――どういう意味?
私は彼の存在を感じながら云った。
しかし、彼にはその言葉の意味を説明する時間なんてなくてそっと消えていった。
『ん・・・?』
私は、いつしか眠っていたようだ。
『いっっ』
突然頭の中を激痛が走った。
━━ほら会えた
すると、頭の中を男の子の声が流れた。
『え・・・?』
私は、驚いて辺りを見回した。
でも、私の眼には誰も映らなかった。
『だれ・・・??』
不思議に思って、周りを何回も見回す。
すると頭の中を男の子の声と存在が
思い浮かぶ。
『まさか・・・』
そう。
その、まさかだった。
――あったりぃ!
『!?』
突然、頭の中で声がした。