手遅れ
責任の押し付け合いと悪口の応酬する車は目的地へと辿り着いた。三人は勢いよく車をおりると階段を駆け上がり店内に入る。彼らは焦っていた。マコトの携帯はもう既に繋がらなくなっていた。
「すいません、あの・・・ギャル男みたいな派手な三人とジャージを着た女のグループはいませんか?」店内に入ってそうそうにダウスが白くて細い男性店員に訊ねた。
「えっ? ・・・」急に訊ねられた白くて細い男性店員は頭の上に『?』マークを浮かべる。
「ああ、もういい。自分で探す。」スペードはそう言うと後ろにあった扉を開けてビリヤード場へと入って行った。
「あっ、ちょっと?」白くて細い男性店員が慌てて手を前に出して言う。
「四人組みの男女です。ビリヤードをやっていたと思うんですけど。さっきまでいたと思うんです。」ダウスがもう一度訊ねた。
「そんなことを言われても。」白くて細い男性店員は弱った声を出した。
すると、「あの~・・・」と漫画を整理していたメガネを掛けた坊主頭の店員が横から口を挟んだ。
「その人達なら一時間前ぐらいに会計を済ませて出て行きましたよ。」
「えっ、一時間前に?」ファニー顔をしかめた。一時間前も経っていると捜索がまた困難になる。
「何か様子がおかしいところありませんでした?」ダウスが訊ねる。
「えーと、自分が会計を担当したんですけど、女の人は手を引っ張られる感じで外に出ていって、会計は一人でしたね。おかしいといえば、まぁ、おかしかったですかね。」メガネの店員は思い出す様に顎を触りながら言った。
「そうですか。ありがとう。」ダウスがお礼を言うと「あの・・・なにかあったんですか?」とメガネ店員が訊ねて来た。
ファニーとダウスは少し間を空けてから「いや~、中学生の妹が家出をしてしまって」と頭を掻きながらダウスが答えた。
メガネの店員は「そう・・・ですか~、それはたいへんですね。」と顔をしかめて「早く見つかるといいですね。最近は物騒ですから」と心配そうに言った。
そのとき、ビリヤード場のドアが勢いよく開き「おい、たいへんだ。」とスペードが大声で叫んだ。