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転嫁

「ふざけんな。お前、あいつらがナンパしていた、って言ったよな。言っていたよな。」スペードが助手席から身を乗り上げファニーの胸倉を掴んで激昂している。瞳孔は開き、顔も真っ赤だ。

「仕方ないだろ。おれにはそう見えたんだ。車への乗せ方とか他人行儀みたいだったし。」ファニーもこうなったら逆切れしかないと思い、声を荒げて応対する。

「ふっざけんな。おれは、初めてだ。あんな・・・あんな・・・あんな人前で恥をかいたんだぞ。」スペードの怒りは鎮まることを知らず、勝手なことを主張する。

「それはお前があんな問い質し方するからだろ。もっと丁寧にできないのかよ。」

「あっちの方があいつらも恥をかいて二度とナンパなんてやらなくなるだろーが。」

「それにしても、派手すぎるんだよ。」

 信号が赤になったのか、車が止まった。その衝撃で少しよろける。

「いい加減にしろ。」ダウスがファニーとスペードを引き離す。

「だってこいつが」ファニーがダウスに向かって口を尖らせた。スペードは中々ファニーの服から手を離そうとはしなかった。

 しかし、力の差はスペードよりダウスの方があるのでダウスが無理やり手を離させた。

「仲間割れをしている場合じゃないだろ。マコトの命が掛っているんだ。これからは慎重に行くってことでいいだろ。これも経験だ。切り替えて行くぞ。」ダウスが運転席に戻って青信号になったのを確認して運転席に戻る。

「ふん」とスペードは納得した顔はしなかったが助手席に戻って座り込むとシートベルトを掛けた。

時刻は六時を回っていて外は暗かった。すれ違う車は皆ライトを点けている。

「それで、マコトは何って言っていたんだ。」ダウスが横に座るスペードに訊ねる。

「さあな。」スペードはふて腐れた子供のような答え方をした。

「さあな、って小学生みたいなこと言ってんじゃねーよ。」ダウスが唾を飛ばしてスペードを諭す。

「あれだよ。あれ。ギャル男が耳元に飛ぶ蠅のようにウザいから速く向かえに来てくれってさ。」スペードが面倒くさそうに言う。

「本当にそんなこと言っていたのかよ。ずいぶん余裕だな。」ダウスが信じられなさそうな顔をする。

「ああ、本当だ。やたら棒で突っついてくるってさ。」スペードはぶっきらぼうに言う。

「何だよ、それ? 相当危ないんじゃないか?」ファニーが心配になり口を挟んだ。が、しかし、「お前に言ってねーよ。」スペードが助手席から顔を出して言い放ってきた。

「なんだよ。もう、済んだことに対していつまでもこだわってんじゃねーよ。女々しい奴だな。」ファニーも負けずと言い返す。

「お前が余計な発見したからこうなったんだろ。」

「いや、それをゆうならお前が最終決断くだしたんじゃないか。」

「いーや、お前の見間違いがいけない。」

「違う。お前がアドレスを勝手に変更したことだ。」

「・・・うるせんだよ。お前らは子供か」ファニーとスペードのくだらない口論にイライラしたのかダウスが怒鳴った。

「お前もいけねーんだよ。なに浮気して、女に番号消されてんだよ。」スペードがダウスのことを咎める。

「そうだ。老け顔のくせに浮気なんかしてんじゃねーよ。」ファニーも便乗してダウスをなじる。

「はぁぁあ、なんだよ、それ。・・・おれがいけねぇのかよ」ダウスが信じられない奴らだ、とでも言いたげな顔で大声を出す。

「そうだ。お前が悪い。」「お前がいけない。」「お前のせいだ。」「老けている癖に調子に乗るな」と責任の擦り付けあいと、悪口の応酬を乗せた車は夜の始まった国道を走り始めた。



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