追跡者・山口 2
山口は一人で漫画喫茶に来ていた。ドリンクバーでアイスティーをグラスに注いで扉を開く。そこには、四つのビリヤード台と二つのダーツの台、スロット台が二台置いてあった。テーブルにアイスティーと受付でもらったダーツの矢の入ったかごを置く。
椅子に座ってアイスティーを口に含む。ミルクとガムシロップを入れないアイスティーは少し苦かった。
後ろを振り向く茶色い髪をもっさりとさせ、焼けた肌が特徴的な三人の男達と女がビリヤードをやっている。
山口はダーツ台に矢を投げる。「ドン」と矢が刺さった。もう1度投げる。「ドン」
矢が的に刺さるだけで、機械は一向に動かなかった。
ダーツは初めてだった。漫画喫茶には何度か来たことはあったが、ドリンクバーと漫画目的だったし、ダーツやビリヤードなどには全く縁がなかったのでやり方がわからない。
テーブルに置いてある紙に手を伸ばし、機械の動かし方が書いてあるか説明書を読む。だが、投げ方や注意事項が書いてあるだけで機械の動かし方は書いてなかった。
機械まで近づいてボタンをいじってみた。上の画面が変わるがすべて英語表記で意味がわからなかった。 適当に緑と赤のボタンをいじる。
「どうしたんですか?」後ろから急に声がした。「えっ」後ろを振り向くと女がいた。
「いや、えーと、その・・・」急に話し掛けられ山口はあたふたした。女に話し掛けられることなど、予想外だった。
「やり方がわからないんでしょ。ダーツ初めてなんですか?」女は長い棒を持ちながら、やさしい口調で訊ねてきた。
「・・・は、はい。えっと、気晴らしにやろうと思ったんですけど、やり方がわからなくて。」急に話し掛けられて戸惑いながらも、山口は平然さを装いながら答える。
すると女は「えっとね。」といいながら機械を操作し始め「初心者はやっぱりカウントアップがいいと思うんだ。」といいながらゲームの画面を出してくれた。
「ふっふふ、わからないことあったら、わたしに訊いて。わたしはあそこでビリヤードをやっているから。」女はビリヤード台を指差して笑顔で言った。
「奈津美ちゃん。何してるの?」派手なシャツを着た男が女に話し掛ける。
「あっ、ごめん。わたしちょっとトイレ行って来るね。」奈津美と呼ばれた女はそう言うと空いているビリヤード台に長い棒を置き扉の方へ歩いて行った。
山口は取り敢えず奈津美の出してくれたカウントアップというゲームをする為に一本の矢を手に取った。
矢を的に投げる。今度は機械が動き、上の画面に得点が表示された。