ある『あつい』恋のお話
ある二人の、短くて長い恋のお話
テーブルの上に手が重なった。
それはよくある手遊びでもなければ、偶然触れた類のものでもない。
二人は互いに望んで、意図的にこうした。
その手の温もりはどこか優しく、でもどこか寂しそうにも感じる。そんな不思議な温もり。
互いに手汗がにじみ、額には日に光を与えられた塩見のある水が輝きを放つ。
冬の季節、それも真冬。コートが欠かせないこの季節。
それでも二つの手は、指先に熱を帯びていた。
人為的にも、人工的にも。そして、人情的にも…。
「私明日、イギリスに行く」
「知ってる」
「だからっ、一年後…、一年後に帰ってくるからそのときは…っ」
「待って」
突然の静止に「えっ」と声が漏れる。
ただその一瞬生まれた静寂は無駄ではなかった。
「それは俺に言わせてくれ」
甘酸っぱい空間は、また別の空気が吹き抜ける。
「俺と付き合ってくれないか。お前が帰ってきたときも、まだ好きだったらだけど…」
「好きじゃなくなるわけないじゃん、だって私は十年以上もあんたのことが好きだったんだから…」
冷たく乾燥しているはずの空気は、もはや二人だけの暖かさをまとっている。
それは空調が効いているというだけでは説明がつかないほどに。
二人の結びついた小指は、今度はその空気に見初められた赤い糸で結ばれたのだ。




