8.離れた男たち
卒業を間近に控えた冬のことだった。
窓の外は雪景色。学院の庭は真っ白に覆われ、静寂に包まれていた。
私は寮の自室で、就職先の研究所から届いた資料を眺めていた。
新しい生活を思い描いて、鼓動が早まる。
(楽しみだなぁ。これから、もっとたくさん勉強できる)
ページをめくるたびに、胸が高鳴った。
厚い資料の束。研究内容、施設の説明、待遇について。
応用魔法理論、魔法薬学の最先端研究、種族別の魔法体系の比較研究。どれも興味深いテーマばかりだ。
就職活動については、周りに知られるのが嫌で――特に誰とは言わないが――かなり慎重に行った。
実家からの部下を何人か使わせてもらい、密かに手を回した。
面接も、学院外で行った。推薦状も、信頼できる教授にだけ頼んだ。
だが、実家の部下を使っておいてなんだが、実家に帰るつもりは毛頭なかった。
たまに両親から、就職しないで帰っておいでと連絡があったが、
就職が落ち着いたら帰るよと言って適当に返事をしていた。
一時期は、学院内で婚約者探しをしたこともあった。
自分で相手を選べるなら、まだマシだろうと思ったから。
でもなぜか、誰ともうまく進展しなかった。
良さそうだと思った相手は、急に態度を変えて距離を置くようになったり、彼女が出来たと断られた。
何度か食事に誘われた相手は、突然故郷に呼び戻されたりして学院を辞めてしまった。
まるで何か見えない力が、私に近づく男たちを遠ざけているかのようだった。
だがそれは考えすぎだ。
きっと今は結婚する時ではないのだと言い聞かせ、私は婚約者探しを諦めた。
(悠々自適に、好きなことをして暮らすのよ!)
研究所での生活を夢見ながら、私は資料を大切に仕舞い込んだ。




