EP.7 ひとりきりでズル賢い主人
俺がソフィアサマの護衛になってから3ヶ月。
俺は...「ルカ。その書き方は間違っています。正しくはこうです」この人はじいやさんがわざわざつけてくれた講師。名前は、ノ、ノルックさん?ノルック先生だ。(⚠︎間違っています)書く順番は何でも良くないか?「今日の授業は終わりです。課題は4日後の次回提出してください。」は!?積まれたのは机からはみ出そうなほどの紙、紙、紙!勿体無いぞ!!
「助けてくれアン!終わらない!」
「私が助けたら先生気づくと思うよ?私も先生から教わったから」「どこの内容?」
意外にも反応があったのは髪をアンに解かれている
ソフィア様だった。「えっと、今日の出来事を3行以内で書く課題×4と文字を写して覚える課題が山程あって」「見せて」「あ、ハイ」アンに見せるために手に持っていたそれを渡す。「なるほど。まだあまり慣れない間はいくつかの文を覚えて使い回した方が早いわ。書き取りは...頑張って」終わった。
まず時間が足らないんだ。護衛が特に必要になるのは
ソフィア様が眠ってからだ。扉の前で日が昇るまで待機。3ヶ月間でこの時間に5人殺した。静かに殺すのは
苦労するので余計疲れる。そこから朝挨拶をして食事の場まで同行。食事を見届けた後就寝。見事に俺の昼夜は逆転した。(出かける予定の時は夜の護衛は要らなくなるが)流石に眠い。給料が悪ければ即辞めている。今日の夜眠れたことは救いだ。夢に女神が出てきたぞ。
「アン。今日の予定は?」「えっと...先程侯爵様からの手紙が届きまして、自分の代わりに孤児院の視察に行って欲しいと」待て、今日俺はまだ寝てないぞ!
「お姉様は?」「アカデミーの授業が遅れているそうで...今日は帰れないと」「そう」
この3ヶ月間で分かった事。それはソフィアはほぼ1人だという事だ。父であるクレスウェル侯爵は宮殿にて
宰相を務めているので、姉であるアメリア様はアカデミーの講師としてそれぞれ忙しい。(一度会った)
「私も一緒に行ってよろしいですか?」
「構わないけど ありがとうアン。」
彼女なりの気遣いなのだろう。2人は特別な気がした。「それではまた時間がくればお呼びいたします」
バタン。
「アンの前でぐらい敬語じゃなくても」
「アンの方が俺より付き合い長いのにそれは無理だ」
なんか気まずい。ソフィアとはいつもこうだ。仲が悪いわけではないが。一定の距離を感じる。
「それで、大丈夫なの?」「何が?」
「ノルベルト先生の課題」ノルベルト...
「あっ!」まずい。今日の睡眠を削って進める筈が視察が入ったんだった!
「出して、私もする」「いや、流石にそれは」
実はソフィアに課題を頼もうとした事はある。
しかしじいやさん、いやフォスター執事長の無言の睨みにより阻止されている。
お嬢様に課題をさせた事がバレれば、説教だ!!
「アンには頼んだのに」「ん?なんか言った?」
恐怖で何も聞いていなかった。
「いいから、今日の出来事は今からの視察で充分でしょ。書ければいいんだから私が考えたって大丈夫」
「中々の悪だな」
「課題はするものじゃない。誤魔化すものよ」
ギリギリカッコいい...いや、カッコよくはない。
「視察の書き方分かる?」「いや全然」
ソフィアが机から紙を取り出し記入する。
「これを真似て。得意でしょ?」「ちょっと馬鹿にしてるな?」「いや、全然」
「お嬢様、お時間です」「分かったわ」
結局アンがソフィアを呼びに来たのは4日分の今日の出来事が決定してからだった。俺は悪くないぞ。
1番ノリノリだったのはこのお嬢様だ。
「孤児院の視察は何をするんですか?」
アンもいるので敬語は忘れない。
「これから行くのはエレタ村から少し離れた丘の上にあるエレタ孤児院。領地にある孤児院や病院などの
施設には侯爵家が金銭的援助をしているけれど、そのお金を着服する事件が少し前に起こったから、金銭援助をしていた施設に視察に行かなきゃいけなくなったのよ。」なるほど。簡単な仕事だが侯爵家の人間が確認したという事実が必要って訳だ。
「貴族も苦労人だな」
「そろそろ到着します」「早くないか?」「エレタ村はクレスウェル領の中でも近いからね。行きましょうお嬢様」「えぇ」
エレタ孤児院
今から8年前クレスウェル侯爵などの支援により創設される。その目的は戦争孤児の保護であり、現在では
74名の子供と6人の職員がいる。
敷地は大体想像通り。けれど今月の支援金を見る限りではこんな大きな公園は作れないはずだけど...まだ確証は持てない。
「初めまして。クレスウェル侯爵家次女ソフィア・ラ・クレスウェルと申します。ここの院長に会わせていただけますか?」
「クレスウェル侯爵令嬢...?訪問は2週間後では」
対策されては困るのよ。
「案内してくれ。疑惑を深めるだけだ」ルカ。脅しても変わらないのに。
「分かりました。案内します」
これはお父様に報告が必要みたい。