EP.2 入団試験
ルヴァナ帝国騎士団は主に2つに分かれている。
皇帝を護る皇帝直属の親衛隊の役割を果たす第1騎士団と街を警備する警備隊の役割を果たす第2騎士団だ。
その団員は大陸の先進国らしく身分ではなく
試験で平等に成績が決まる。
(まぁ、建前だろうな。)
「試験は実技と筆記の合計で合否を決定する!
それでは...試験開始!」
裏に向けられていた2つの紙をめくる。
上質な紙使ってるな。
ナンダコレ?
第一問
1.魔力の制御方法を述べよ
2.この図の魔道具の効果を40字以内で述べよ
3.以下の文章を読み、a.b.c.dから選択し...
これは...
何て書いてあるんだ?
まさか筆記って問題自分で読んで、自分で書けってことか?!
貧民を受からせる気は無いってことか...
どうする?実技だけでは無理だ
...捕まらないことを祈るか。
ギゥイン...
1.精神を鎮め、魔力のコアである心臓を回転させる。
2.この魔道具は主に拷問に使用されるもので、
対象の精神世界に入り込むことが可能である。
3.c. なぜなら...
魔力で五感を強化しペンの音から正しい回答者を推測、目で確認して写す。
この対策はされていないようだ。
ただ懸念点をあげるなら、俺は絵が下手なんだ。
(ディエゴに見せると爆笑されたので殴ったが)
採点者が読み取れるだろうか...
「試験終了、用紙を回収する。実技試験は3日後。
それでは解散」
「どうだったルカ?今日初日だったろ?」
「最悪だ。解き方に気づいて、写している途中で
時間切れだ。実技に賭けた方がいいな」
「お前、カンニングかよ...今日は行かなくていいのか?」
「いい、酒場に行ってくる」
「いつもの酒場は逆方向だぞ...アイツやっぱ舐めてるな」
剣を振っている時は気が楽だ。
何も考えなくていい。
「オイガキ、その剣置いてけ。ガキにはすぎたモンだろ?」
前言撤回、最悪の気分は続くらしい。
3日後...
「それでは、これから実技試験を開始する」
「団員と実際に模擬戦闘を行ってもらう。対戦した団員の評価と我々試験官の判定により合否を決定する。
それでは受験番号14256番、14257番、14258番前へ!」
俺はたしか...
「...受験者番号をお渡しします」
「ああ、ごめん!俺字が読めなくて...」
「そうですか。あなたの受験者番号は16107番です。
...頑張って下さい」
「ありがとうございます」
あんな丁寧なことば使いをしたのは久々だったな。
「あの剣...アレス将軍の?」
受付嬢。名はソフィア・ラ・クレスウェル。
彼女はクレスウェル侯爵家の次女、つまり貴族である。受付嬢は平民が稼ぐ為の仕事として人気だ。
間違っても、貴族がすることではない。
ではなぜ入団試験の受付などしているのか。それは
(あの男魔力が多い。舞踏会では見ない顔ね。平民、もしくは 貧民。)
「じいや、受験番号16107番の筆記試験の解答を準備して。ついてきてるでしょう?」
(あれほどの魔力なら勧誘してもいいかもしれない。それに、あの剣はアレス様の物。なぜ彼が...)
「わかりました。」 やっぱり。お父様がすんなり
家から出す訳無い。
「お嬢様こちら、受験問題と受験番号16107番の解答です」
結局じいやが資料を持ってきたのは受付が終わり試験が開始してからだった。
(遅い。けど、じいやだしなぁ)
「ありがとう、じいや」
じいやは私にとっては親のような人、責めるなんてできない。というか勝てる気がしない。
(名前は...空欄?)
これでは受からないでしょうね。
文字が分からなかった? いや、半分程埋まった解答は正解している。(文字はかなり汚いけれど)
なら、名前が無い。もしくはわからないパターンかな。移民ならありがちだけど...あの顔はルヴァナ人に見える。
「じいや。顔と文字で特定は難しいかしら?」
「そうですね。平民以下ですと名前と顔が無ければ...
お嬢様失礼ですがお聞きしても?」
「えぇ、構わないわ」
「ご本人にお聞きしては?ほら、試合が終わったようです」
振り向くと、
焼けこげた騎士服の男が倒れている。その首に剣を突きつけたのは、文字と口が悪いあの男だった...