3.転生するまで
「妖精さーん。そろそろ許してくれませんか?」
「・・・」
僕は今、妖精さんにずっと謝っている。何故なら僕が妖精さんを、声に出して可愛いと言ってしまったことで妖精さんがとても照れてしまって、僕のことを無視してくるようになったからだ。妖精さんがこんなに照れ屋さんだったことも知れたから良かったのかもしれないが・・・でも妖精さんが可愛いのは事実なんだけどなぁ。そろそろ本気で謝らないとやばいかもしれない。よし。
「妖精さん、もう妖精さんのことを可愛いとは一生言いませんからほんっとうに許してください」
僕がそういうと妖精さんがバッ、と僕の方を向いた。僕の方を向いた妖精さんの目はなぜか少し潤んでいた。そしてそのまま妖精さんは口を開く。
「い、いや、あの・・・可愛いって、一生、言わな、くなるのは、やめて・・・」
・・・やっばい。妖精さんがすごく可愛い。可愛いって言わなくなるって言っただけでこんなに慌ててこんなことを言うのはやばい。これが無自覚なのは、ちょっと・・・これを何回もされたら惚れちゃいそうで怖いなぁ。まあ、惚れることはないけれど。
「まあ、うん。可愛いって一生言わなくなることはないから安心して?」
「本当!?」
と、とても眩しく可愛い笑顔でそう言う妖精さん。うん、もう可愛いしか言葉が見当たらない。
最初の棘のあった妖精さんはどこにいったのか。
「で、ちょっと妖精さんに聞きたいことがあるけど聞いていい?」
「・・・?なに?」
「いや、妖精さんの名前ってなんていうのかなって」
そう、妖精さんの名前を僕は知らないのだ。まあまあ時間は立っているというのに・・・
「あー、そういえば言ってなかった?私に名前はないよ」
「え?そうなの?」
「うん、名前がなくても今までなにも困ったことはないから」
「あ・・・ごめん・・・」
妖精さんに名前がないのは驚きだが、考えればすぐに分かったことかもしれない。
「なんで謝るの?謝んないでいいよ。」
「うん、わかった」
ちょっとこれは僕のデリカシーが足りなかったな。もっとよく考えて行動しないと・・・
「でも、どうしようか。一応名前があったほうが楽だし・・・」
「名前って必要なものなの?」
「なんだかんだ、名前って重要だからね・・・」
名前があったほうが他の人とも仲良くなれると思うしね。
「そうなんだ。名前って重要なんだね・・・ならさ、君が私の名前を決めてくれない?」
「えっ」
僕は妖精さんの言葉に驚く。
「い、いや、自分の名前は自分で決めたほうがいいんじゃないかな?好きな名前にできるし・・・」
「それでも私は君に名前を決めてもらいたいの・・・だめ、かな?」
うう、それは卑怯だよ、妖精さん。そんなに頼まれたら断れない・・・
「わかったよ・・・でも、僕が決めた名前が嫌だったら自分で決めてね?」
「大丈夫!いい名前をつけてくれるって信じてるから!」
「うっ、プレッシャーが・・・」
そんなことを言わないでほしい・・・これは僕の信用度がかかっている問題だ。
しっかりと考えないと・・・まあ妖精さんに言われなくてもすごく悩む予定だったけどね。
妖精さんの名前・・・妖精さん・・・白い髪・・・羽・・・翡翠色の目・・・うん。この名前でいいかな。妖精さんにぴったりな名前だと思うし・・・
「よし!妖精さん!名前が決まったよ!僕が決めた妖精さんの名前・・・それは・・・翡翠、でどうかな」
「翡翠?それって私の名前?」
「う、うん。悩んで決めたんだけど・・・どうかな?」
「翡翠・・・うん!いい名前!ありがとね!」
ほっ。良かったー。これで嫌だとか言われてたら僕の精神にダメージが入ってた。でも、妖精さん、
いや翡翠が喜んでくれてよかったかな。
「そういえば翡翠?」
「なにー?」
「いや、僕ってなんか今のところずっとこのままじゃん?だからさ、なんか生まれ変わるとかないのかなーって」
そう、僕は今、翡翠と花畑で暮らし始めてまだ10日間ぐらい。普通に死んだら生まれ変わってまたどこかで生きていくのかなとか思っていたけど、僕はずっと翡翠とのんびりしている。
「あー、そういえば。ここに人間の魂が来たことがないから何もわからないけど・・・でも、確か普通なら、魂になった時点で意識がなくて、ただただ彷徨うはずなんだけど・・・そしてある程度時間が立つと生まれ変わるはず・・・多分」
いや多分なんかいと心のなかでツッコむ。
「それならなんで僕は生まれ変わっていないんだろう?」
「君が特殊なんじゃない?」
「まあそういうことになるのかなー」
本当にどういうことなのかわからない。まだ自分が生まれ変わっていないことに疑問を覚える。
「・・・別になんでもいいかー。」
今はこの太陽があり、湖もあり、花畑もある・・・翡翠の家で今はのんびりと・・・日向ぼっこをしているだけでいいか。
そうして僕は、太陽の光を浴びていると、眠気が襲ってきて、そのまま僕の意識は闇の中に落ちていくのであった・・・




