番外編SS 真夜中の恋文
たくさん読んでいただき嬉しかったです!
ありがとうございます…お礼といっては何ですが、ヒーローサイドです。
ルドルフは最高級の魔法紙をグシャグシャと丸めて投げ捨てた。
基本的に物を大切に、節約を美徳とするルドルフにしてはあまりに珍しい。
そして再び、細かすぎる文字で魔法紙に契約書の文面を記し始めた。
「朝食は……」
一番始めに朝食について記したのは、微笑むアリアーナとの幸せな食卓を夢見たからだろう。
それはルドルフの心からの願いだ。
すでに窓の外は月が浮かび、星がきらめいている。このままでは直に朝が来てしまうだろう。
「時間がないな……しかし、この項については」
窓から月の光が差し込むと美しい金色の髪がほのかに煌めく。この光景をだれかが見ていたなら、あまりの美しさにため息をついたことだろう。
彼が手掛けているのは契約書の文面、几帳面な細かい文字で、読みやすく品格を感じられる。
しかし書いてある内容を見る者がいれば、もれなく首をかしげるに違いない。
部屋に響き渡るため息。
机を何回か指先で叩くと、ルドルフは胸ポケットからブローチを取り出した。
美しく繊細な若い女性が好みそうなブローチ。しかし、その宝石は大きくひび割れてしまっている。
ルドルフは愛しいものを見つめるようにしばらくぼんやりと宝石を見つめ、そしてそっと指を滑らせた。
「君を不幸にするような結婚も、無理に愛人としての日々を押し付けられることも何としても阻止してみせる」
多額の結納金を用意した、ルドルフは何を失おうとアリアーナを救い出そうと心に決めていた。
もちろん、それは貴族を敵に回す行為であり、平民であるルドルフには相応の覚悟が必要だった。
「それより……平民の俺などと結婚して、アリアーナは幸せになれるのだろうか」
分厚い魔法紙に書かれた内容は、アリアーナが苦労することなく、可能な限り幸せに過ごせるように配慮したものだ。
本来であれば、それは恋文として書かれるべきものだろう。
「……君について知れば知るほど、俺などはふさわしくないと思えてくるな」
彼女のために財を成し、どんな手を使ってでも成り上がってきた。
誰もが彼を金の亡者だと、成金だと蔑むだろう。
それでも、ルドルフにとってはただ一人、あのとき救いの手を差し伸べてくれた少女、アリアーナを救うことだけが願いの全てだった。
まだ、いつかこの契約書が破棄されることも、アリアーナによく考えれば真夜中の恋文のようだったと言われて、それもそうだと思う日も……。
***
「ルドルフ様、結婚を申し込まれて結婚契約書を見たとき、本当に驚きました」
「忘れてくれないか……」
「ふふ! あれがルドルフ様にとって真夜中の恋文だったって知っていますから……今となっては大切な思い出です」
お気に入りの新作焼き菓子を頬張り、アリアーナが花が綻んだように微笑む。
***
そんな幸せな日々をルドルフはまだ知らず、再び契約書にペンを走らせ始めるのだった。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけると創作の励みになります。
応援よろしくお願いします(*´▽`*)




