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序章

『もし明日君が死んでしまうのならば最後まで君が寂しくないように僕は明後日まで生きよう。そして君がいなくなった一日を土産話に君を迎えに行くから。』

 こんな胸が熱くなるほどの純愛が書かれた手紙。

 そんな手紙が出てきたのは、祖母の遺品整理をしていた時だった。

「母さんこれどうする?」

「ただの手紙でしょ。そんなの残してたらキリがないから捨てちゃいなさい。」

 実の父親が書いた愛の手紙をそんなにもあっさりと捨てようとする母はきっと人の心がないのだろう。

「あ、そう」と言いつつも僕は手紙をこっそりとポケットの中に入れた。

 二日にわたる遺品整理が終わった頃にほとんどの物が捨てられるか金に代わっていた。

「遺品ほとんど手元にないけど良いの?」

「いいわよあの人との思い出なんてほとんど残っていないんだから。」

 昔から母は、祖母と絶縁状態だった。そのため僕が祖母に初めて会ったのは父の葬式だった。当時中学生の僕に母にバレないようこっそりと話しかけてきた老婆が自分の祖母と知った時は父の死よりも衝撃が大きかった。祖母は、僕に葬式が終わったらここにきてほしいと言って紙を渡し、去っていった。手紙には、住所と簡易的な地図が書かれており僕は母に悟られぬよう慌ててポケットに隠した。

 そして父の火葬やら納骨やらが終わってひと段落ついたところで紙に記されたところに行ってみることにした。


 

「それじゃあ帰りましょうか。あんたも明日からまた学校だし」

 そういうと母は遺品の入った鞄を持って祖母の家をでた。僕も最後に祖母の家を目に焼き付けてから家を後にした。

 家を出ると外はもう真っ暗で母が乗った車のライトが無ければ歩くのもままならない程だった。

「それにしてもあの人もよくこんな何もないところで生活できてたわよね。車も持ってなかったのに。」

 帰りの車で母は呟くように言った。

「珍しいね母さんがばあちゃんの話をするなんて。」

「まあ思い出したくも無かったからね。」

「ふーん。てかさなんで母さんはばあちゃんと喧嘩してたの?」

 そう聞くと車内に数秒の沈黙が流れた。そして母は、渋々と話し始めた。

「あの人は、私たち家族を裏切ったのよ。」

「どういうこと?」

「あの人は、お父さんあなたの祖父にあたる人が癌で苦しむ中他の男に会い、挙句に父が死んだあとその男と再婚しようとしてたの。私はそれが許せなかった。だってお父さんはあんなにもあの人を愛していたのに。それを簡単に裏切ったあの人を私は絶対に許さない。」

 母は、少し怒りのこもった声で話した。

「だから家出したの?」

「ええ。あなたがその男と新しい家庭を作るのなら私の居場所はもうないと家を出たわ。別にお金はバイトで貯めてたし、うちから大学も遠かったからちょうど良かったの」

「ふーんそれきり会わず今に至るんだ。」

「ええ。」

 僕はこの話を知っている。そして母が嘘をついていることにも。

 それを最初に聞いたのは紛れも無く祖母だった。


 紙に記された場所は立派な一軒家だった。多分ここが祖母の家なのだろうと勝手に解釈していたけれど全く知らない人の家だった時どうしようかと不安になる。戸惑いながらもインターホンを押すと祖母が出てきてホッとした。祖母は、「来てくれたのね」ととても嬉しそうにぼくを招き入れた。そこからは質問攻めだった。部活のことや私生活について祖母はニコニコと楽しそうに聞いていた。ひと段落つくと祖母は「お茶淹れてくるわね。あと美味しいお菓子があるの。」と言って立ち上がった。

「あ、ありがとうございます。その前に一つ聞いても良いですか?」

「あら、何かしら?」

「母と何があったのでしょうか。」

 僕が今日祖母のに会いにきた目的はこれだ。なぜ母と喧嘩しているのか。なぜ今になって僕にコンタクトを取ってきたのか。そのために腹を括っ来たのだ。

「お茶、淹れてくるわね。」

 祖母はキッチンに向かって行ったがその時すでに祖母の笑顔は無くなっていた。

 お茶と菓子を持ってきた祖母は腰を据えるとゆっくりとした口調で話し始めた。

「さて、まずあの子、あなたのお母さんについて話しましょうか。あの子は昔から優しい子だった。私が玉ねぎを切って涙を出してるだけで大丈夫?どこか痛いの?とかね、他人の痛みや悲しみをまるで自分のことのように心配してくれる本当に優しい子供だった。だからこそ私を許せなかったのね。」

「それはどういうことでしょうか。」

「あの子の父親が癌で亡くなったのは知ってるかしら。」

「祖父については少し聞いたことがあります。」

 母は、祖母については全く話してはくれなかったが、祖父については何度か話してくれた。

「そう。あの子はあの人が大好きだったものね。」

 祖母は、少し悲しそうな笑みを浮かべた。

「さて、話を戻しましょうか。あの子は毎日のようにあの人のところに行くようになっていた中、私はあの子の本当の父親に会っていたの。」

「え、本当の父親?どういうことでしょうか?」

 急に2人目の父親すなわち僕の叔父が現れた。話が一気に分からなくなる。

「ごめんなさい、最初に言っておけばよかったわね。あの子にはね父親が二人いるの。血胤にある実父と私の旦那であの子にとっての継父。」

 祖母の言うことが頭の中で絡まり合っていく。理解が追いつかない。

「ちょ、ちょっと待ってください。母の父親は本当の父親じゃなくて、でも育ての親で…。」

「そうよね。まだ中学生のあなたには難しい話よね。」

 そういうと祖母は立ち上がった。

「ちょっと待てっててちょうだい。古いものだけど写真を見せてあげるわ。」

読んでいただきありがとうございます。何かしらのリアクションがあれば続き書こうかなってかんじなんでよろしくお願いします。

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