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三人での帰り道

「大聖帰ろうぜ」

「ん」


 今日は野球部の練習がないらしく、一緒に帰る約束をしていたのだ。野球部はほぼ毎日練習しており、あまり一緒に帰れる日がないので、いつもは一人で帰っている。


「私も一緒に帰っていい?」

「おう。でも帰る方向一緒なの?」

「俺も驚いたけど、なんか吉田さんの家は俺の家の近所だった」


 春休み中に近所に引っ越してきた人が居るということは母親から聞いていたけど、まさか吉田さんだったとはな。吉田さんはいつも俺より早く学校に来ていたから出会わなかったようだ。


「ふーん。そっかそっか」


 最近よくその顔するよな。そんなに俺をいじるのが楽しいのか? まぁでも翔也は本当に嫌がることはやらないからいいんだけど。


「あ、ねぇねぇ。私たちも一緒に帰っていい?」


 女子二人が急に現れて、一緒に帰ろうと言い出した。確かこの二人は吉田さんの周りに居た人たちだったと思う。


「私たちでしょ?」


 友達……ねぇ。どうせ吉田さんと帰れば、カーストを上げつつ、翔也と帰れるから声をかけてきたのだろう。吉田さんはお前たちの友達どうぐじゃない。

 女子二人を追い払おうとしたら、吉田さんが口を開いた。


「あなたたちと友達になった覚えはない」

「「は?」」


 吉田さんの声のトーンがいつもより低いんだけど……。あっちの二人も怖いし。ここだけ気温低くない? ビビって教室から出ていった奴らも何人か居た。ズルイ。


「まぁまぁ。三人とも落ち着いて。ごめんね今日は三人で帰るって約束してるから」

「三島君がそう言うなら……」


 流石イケメン。あの女子を一撃で仕留めるとは。さては貴様一撃必殺技を使ったな? 俺なら三割を外す自信がある。

 二人はあまり納得していなかったが、翔也に言われて、しぶしぶ帰っていった。

 女子たちを追い払ったので、三人で帰り始めた。


「吉田さんなんか最近他の人たちに冷たくない?」


 さっきもそうだったが、三人で居るようになってから俺と翔也以外の人に冷たいのだ。もちろん先生は別だが。


「だってもうあの人たちと無理に仲良くする必要ないもん」

「でも、いつか仕返しみたいなのされるかもよ」

「まぁ大聖の言う通り、そういうことをやる奴が出てくるかもな」


 男子はそんなことしないと思うが、問題は女子だ。特に今まで吉田さんの周りに居た奴らは危険だろうな。


「なら、大聖君が守ってよ」

「いや守るけど、前みたいに戻すとかはしないの?」


 俺がそう言うと、彼女は昇降口を出て、くるっと半回転してこっちを向いた。


「だって大聖君が居ればいいもん。それに三島君も一緒に居てくれるし。それで満足」


 ヤバい。絶対顔が朱くなってる。勘違いしそうになるからそういうことを言われると困る。


「天使だ……。天使が居る」

「ふぇ?」


 ちょうど夕陽が彼女と重なって神々しい雰囲気が出ており、吉田さんが美少女ということもあって、天使に見えた。

 吉田さんの顔が朱く染まっている気がするが、夕陽の所為だろうか。


「もしかして声に出てた?」

「ん」


 マジか。周りに俺たち以外に誰も居なくてよかった。なんか俺、考えてることが無意識に声に出てたり、表情に出てたりしてるから、気を付けよう。


「は、恥ずかしいから、そういうこと急に言われると困る」

「え、あっ、うん」


 俯いてモジモジしながら、ボソッと言われた。最近吉田さんの可愛いところを多く見られて得してる気分だ。


「おーい。二人ともいちゃつくのはいいけど、早く帰ろうぜ」

「「いちゃついてない」」

「はいはい」



     ☆   ☆   ☆



 翔也と別れる交差点まで来たときに、急に翔也がこんなことを言い始めた。


「二人って近所なんだよな?」

「そうだけど。それが?」

「吉田さんも部活入ってないんだよね?」

「うん。入ってないよ」


 それがどうしたというのだろう。わからないけど、なんか面倒なことを言い出しそうな気がする。


「じゃあさ、二人で登下校すればいいじゃん」

「は?」

「いいねそれ。一緒に登下校しようよ」


 でもそんなことしたら吉田さんに迷惑がかかって……いや、ないな。俺みたいな奴が吉田さんと一緒に登下校したって、俺たちが付き合ってるって勘違いする人が居るわけないよな。


「そうしよっか」

「え? いいの?」

「珍しいな。大聖なら吉田さんに迷惑がかかるとか言うと思ったが」


 まぁ最初はそう思ったけどね……。


「だって、俺が吉田さんと一緒に登下校したって、俺たちは釣り合ってないんだから、勘違いする奴なんて居ないでしょ」

「はぁ……。お前なぁ」

「釣り合ってないとか言わないで。次言ったらほんとに怒るから」

「は、はい……」


 怒られた。まぁでも嬉しかったけど。自分を卑下する言葉は吉田さんの地雷らしいから言わないようにしなきゃな。


「じゃあ、明日からでいい?」

「うん。楽しみ」


 彼女の笑顔はとても眩しく、とても嬉しそうだった。そんな表情をされると、恥ずかしい。


「そうだ、俺が吉田さんの家に行くけど、歩きでいい?」

「うん。わかった。待ってるね」


 俺の家は学校から徒歩三十分くらいなので、基本的には歩いて通学している。あの日は寝坊したから自転車で行ったけど。まぁ間に合わなかったけd……いや、学校行ってないんだった。


「じゃあな二人とも。また明日」

「おう。じゃあな」

「じゃあね三島君。また明日」


 翔也と別れてから二,三分くらい歩いた所で、吉田さんとも別れた。前も見たけど、吉田さんの家って俺の家より大きいな。この家に一人で住んでるって寂しいだろうな……。

 何とかしてあげたいが、俺にできることはあまりない。どうすればいいか考えながら、家まで帰った。

忙しくなりそうなので、投稿頻度が落ちるかもしれません。

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