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釣れますかなどと文王そばに寄り

「なあなあ、大嶋。10組の佐藤さんって自分と同じ北中出身やんなぁ?」田中くんは別のクラスだけれど1年生のクラスメートので仲の良い大嶋君に声をかけた。


大島くんは弓道部に所属していて、背が高く優しい性格の持ち主だ。

田中くんは大島くんとは気が合うみたいで、高校を卒業してからも良く遊んでましたね。


余談ですが。


就職してから、職場の同僚の女性を大島くんに紹介してたりもしてましたね。


とりあえず付き合って、合わなかったのか直ぐに別れてましたけど。大島くんから別れ話を切り出したって言ってました。


「うん?なんで?10組の佐藤さんってか。なんかあった?田中くんとあの子って何か接点があるかな?特に思い付かないんやけど?」


「いやちょっとな、関わりになることがあってさ。

あの子は中学の時って、どんなんやったんかなと思ってさ。」


「佐藤さんってなぁ、大人しい性格やなかったっけ?中学の時も、そんな自己主張が激しい子ではないイメージやけどな。優等生タイプって言うのかな?友達関係もおとなしい子が多いと思う。」


「ふーん。そうか、大人しいけど今はちょっと変化があったのかな?」


「そうなん?元々、僕自身も佐藤さんとそう交流は無いんやけど。同じ中学の出身ってだけやで?今はまた、クラスも離れてるし向こうから話しかけてくることも無いしな。」


「そうか、少なくとも優等生タイプってのは同感やね。他の女子みたいにスカート丈を短くもしてないし、リボンも緩めてないな。」


「夏場暑くても、スカートの中を団扇でパタパタとかしそうにないな。」


「大島、あんたも好きやねぇ!そんなとこ、よう見とるわ。」


「いやいや、田中くんも好きやろ?」


「うむ、苦しゅう無い。近うよれ!やな。」



そこへ「なになに?お~ちゃん、エロい話?」急に会話に割り込んできたのは安井くん。


安井くんだけは、大島くんのことを「お~ちゃん」と呼んでました。



安井くんは「野球部の応援部長」との二つ名を持つ、3年生だけどベンチ入り出来ない野球部の補欠だ。


眼鏡に坊主刈りで、野球部の練習で焼けて色黒で。いかにも「野球部」って外見をしてましたね。

あと、現国の担当の原口教諭に似てて「原口の息子」とか「原口の隠し子」とかって仲間内では呼ばれてた。


本人は「息子ちゃうわ!」って、嫌がってたけど。



彼もまた、1年生のクラスメートの一人だったりする。


「おう、安っさん。いやいや、北中の話ししててん。鷹中の話やないで?」 

安井くんのことを、「安っさん」と呼ぶのも大島くんだけでした。


ちなみに、「鷹中」は安井くんの出身中学で北中とは隣同士。



この2人も、気が合うんですよね。



「田中も珍しいな、うちのクラスに来るなんて。で、北中がどうしたん?」


「いや、剣道部に居た北本が去年退学して、今どうしてるのかと思ってさ。あいつ、北中やったから大嶋ならなんか知ってるかなって。」田中くんは、あえて安井くんには佐藤さんの事は言わなかった。



「北本なぁ、定時制高校に入学したって聞いたで?」大嶋くんも、田中くんと安井くんの会話に話を合わせてくれた。


「でな、定時制高校は昼間の高校の校舎を借りてるからな。

そこの教室の女の子の机の中に、僕と友達になりませんか?的な内容の手紙を片っ端から入れてるらしいわ。って、北中のダチに聞いてん。」


「それって、女の子の机ってことは、他人の机の中を漁ってるってこと?でないと男が女かわからんもんなぁ。」安井くんも会話に入ってくる。


「ほんまにアホやね、あいつは。他のクラスの男と、女の子を取り合って喧嘩して退学したのにまた女の子絡みのトラブルを招くようなことして。」田中くんは、北本くんとは部活は一緒だったけど特に仲良しさんでもなかったのだ。   


「てか、あれって女の子の名前って守川やったっけ?田中、知っとる?」


「北本と守川と、相手の男も全員一緒に退学くらったんちゃうかったっけ?守川個人は、顔くらいしか知らんけど。僕は、ああいうのはタイプじゃないな。」


「なんなん、えらい喰い付くなぁ安っさん。守川みたいな顔がタイプ?」


「そうやないねんけどさ。」


「まあ、北本の変な性癖は知っとるからなぁ。あいつは起きたら女優さんのポスターにKissするのがルーティンらしいから。」


「ちなみに、好きな女優さんって誰?」


「あ〜大島、気になってきた?内田○紀やって。ベッドの横の壁にでかいポスターを貼ってるって前に言うとったわ。」


「どうやったって、北本のモノにはならんけどな。」


「なんなん、北中は変態の集まりか?」


「いやいや安井、鷹中も対して変わらんし。剣道部のマネジャーの尾久さんなんて、思いっきりムッツリやで?あの子もショートカットのかわいい子やけど。」


「ま、性欲ないなんてあり得へんよ。高校生なら、男も女もみんな少なからず。安っさんも鷹中やからムッツリやろ?」


「ムッツリちゃうわ!」


「まあ、安井がムッツリなのはもうバレてるから。それはそうと、教えてくれてありがとう。助かったわ。」田中くんはそう言うと自分の教室に戻って行った。


後の話にはなるが、安井くんは佐藤さんを知らないけど佐藤さんは安井くんを知ってました。


知ってると言っても直接的では無くて、田中くんと安井くん・大嶋くん・藤森くんとかと一緒に喋ってるところを見てただけだけど。


単に顔を知ってるだけ、その程度のことでしたが。


佐藤さんはずっと、田中くんを見かけたらそ行動を目で追っかけてたみたいですね。


田中くんの教室に来たりはしないけど、学年集会とか全校集会とかそういう時はどこに居るのかなと無意識に探してしまうんでしょうね。



その日の放課後の図書室で、田中くんは佐藤さんと喋っていた。


「なあなあ、佐藤さん。北中に北本って居ったやろ?2年の時に退学したやつ。」


「あ〜、そんなん居ったね。中学も高校も特に絡んでないなぁ。」


「あいつも、僕と同じ剣道部やったから高校でも見かけたりはしてるやろ?」


「私は…、私は1年から田中くんばっかり見てたから。北本なんて興味無いし。」


「あらあら、それはどうも。最近は、北本がどうしてるとか知ってる?」


「知らない、北本なんて久しぶりに名前聞いたよ。で、北本がどうしたの?」


「うん。なんかな、相変わらずアホなことやってるそうでさ。

うちを退学してから、定時制高校に入学したって聞いたんやけど。

でな、定時制高校は昼間の高校の校舎を借りてるんやけど、女の子の机の中に友達になりませんか?的な内容の手紙を片っ端から入れてるんやって。」

 

「馬鹿じゃないの、同じ中学出身として、恥ずかしいわ…」


「アホやろ、あいつ。僕も同じ剣道部やったから恥ずかしいわ。」


「そんなんで女の子が釣れるんなら、とっくに私がしてるよ。

田中くんの机の中に、好き好きって書いたラブレター毎日入れるよ。もっとも、田中くんは私には全然釣れてくれないけどね。」 


「はぁ、アタリも無いなぁ。」


「そこに泳いでる魚影はあるんやけどね、でも餌は取られへんし…。餌が不味そうなんかな?ほんまに放置やもん…。」


「釣り方が間違ってるんじゃない?その魚に合ってないのかな?僕みたいなひと山なんぼの鰯や小鯵を釣るのに、鯛や鮪の仕掛けをしてるんちゃうの?」


「そうなんかな?でも、私は鯛や鮪を釣るつもりなんやけどな。田中くんは、ひと山単位の鰯や小鯵じゃないよ?」


「そんなん、僕は知らんけど。ベテラン釣り師の小柴師匠に聞いてみ?」


「小柴師匠なぁ、的確なアドバイスくれるかなぁ?」


「どうやろうね。そもそも論として、あいつは人の恋愛相談乗れるほど経験豊富なんか?」


「さぁ、どうなんやろ?困ったらお姉さんとかに聞きそうやけどね。」


「お姉さんね、存在は知ってる。会ったことは無いな。」


「えっ、田中くんは小柴さんの家に行ったことあるの?」


「いや、行ったことは無いよ?家に電話したら取り次いでくれるから知ってるだけ。」


「なんや、びっくりするやん。でも、小柴さんに電話するんやね。」


「うん、まあ。用事があったらかけるわな。」


「ああ…エエなぁ、私も田中くんと電話したいなぁ。なぁなぁ、電話番号教えてよ?」


「家電話やで?PHSじゃないで?」


「うん。電話番号を知らんよりかは、知ってたら何かあってもかけられるでしょ?」



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