報われない思い…
「ゴメンね、せっかくやけど。そう興味がある訳でもなく。気持ちだけ貰っとくわ。」
「そっか…。また、気になったらいつでも言ってね。持ってくるから。」佐藤さんはがっかりした表情で、でも前向きにそう答えた。
昼休みに放課後にと、佐藤さんが田中くんと一緒に居る時間が増えた。
佐藤さんは自然と、田中くんの仲間内に入ってきた。
田中くんの悪い友達〜ズはモテないので(実際にモテたやつは居ないので)、突然の美少女の登場に戸惑いを見せる事になる。
アイツら、ホンマに彼女居なかったのよね…
なんでこの子、田中の周りに何時も居るん?そんな感じでしょうか?
ちなみに、その田中くんと佐藤さんのやり取り逐一チェックしてた1つ下の下級生がいた事はまた、のちの話。
全く関係のない一学年下の図書委員女子にも、その存在を知られる様になってきた佐藤さん。
「田中くん、今日はもう帰る?」ある日の夕方、佐藤さんは帰り支度をしてそう聞いてきた。
「そうやね。そんな時間か。」
「ほな。私も帰ろかな?」小柴さんも席を立つ。
方角でいうと、高校から見て小柴さんが北であるとすれば佐藤さんは東に。
田中くんは南東にって感じだろうか。
3人は自転車通学だった。
途中まだなら、佐藤さんと田中くんは帰れるのだが。
小柴さんは1人で帰ってしまって、残された二人は…
「一緒に帰って噂になると恥ずかしいし…。今日は一人で帰る。」田中くんは、恥ずかしいのかこんなことを言う。
いや、本当に恥ずかしいのはそんなことを普通に言う田中くん、アンタだよ!
当時流行ってたゲームのヒロインが、主人公の男子生徒に「一緒に帰らない?」と誘われて断るときのセリフだ。
そんなゲームのことなんて全く知らない佐藤さんは、ただただ戸惑うだけ。
そして、ショックを受ける事になる。
勇気を出して一緒に帰ろうと誘ったのに…
そのゲームをやってた小柴さんなら、「おい、それって藤○詩織かよっ!」って、ツッコミを入れられたであろう。
「そっか、ゴメンね。じゃあ、サヨナラ。」佐藤さんは一人帰って行った。
田中くんは何事もなく、一人で帰宅するのである。
この時、きっと彼は何も思わず何も感じていないだろう。
単に社交辞令として、友人の一人に「さようなら」を言ったに過ぎないのだ。
現在付き合ってる彼女でもないし、佐藤さんのことを本当に友人にしか思っていないのだから。
相手からの好意を受けても、田中くん自身が「好き」という気持ちがない以上どうにもならないのですよね。
田中くんの性格上は。
佐藤さんは本当に報われなかったと思うなぁ、可愛いのに他に行けば良かったのに。
あんな塩対応をされてもまだ田中くんが好きとか…
よくわからん。
恋は盲目とか、蓼食う虫も好き好きとか。
そんな言葉が出てきます。
ちなみに「蓼食う虫も好き好き」は、田中くん本人が佐藤さんに言ってたのを聞いたことがあります。
あ〜、今更ですが。
作中に出てくる人物の名前は、仮名であり実際の名前とは関係ございません。
高校は他の学校を知らないので、母校をモデルにしましたが関係はございません。
エピソードの中には本当の話もありますが、多少脚色しております。
悪しからず。