趣味はプリクラで〜す、一緒に撮ろ?
「アカンわ、相談できる奴がおらんなぁ。」
図書室から、渡り廊下を通り情報処理室に向かう足取りは心なし重かった。
階段をゆっくり上り、やがて情報処理室の前に。
「お疲れ様っす!」
そう言うと、何人かが返してくれる。
田中くんは適当な席に付きPCを立ち上げた、昨日書いた小説の続きを書くために。
他の人たちは部活の課題やらをしているが、田中くんは部員ではないのでいつもは気ままに過ごしていた。
だがこの日は、なかなか思うように執筆は進まず…
思い切って相談しようかと思い、友達の藤森に話しかけようかとしたが、あいにく他の3年生の部員と何やら作業中…
小学校からの後輩の尾崎も、同じく課題をしているのか話しかけられる空気ではなく。
この日は諦め、また後日にしようと一人学校を後にした。
次の日の放課後、田中くんが図書室のソファーに座って新聞を読んでいると小柴さんが佐藤さんを連れて図書室にやって来た。
「後は、若い者同士でゆっくりお話でも〜」と、おばちゃんくさいセリフを残し、委員会の仕事を始め席を離れる保護者様。
「あの、ごめんね。昨日の迷惑だったのかな?」
佐藤さんは田中くんの隣に、でも少し間を空けて座りやがて下を向きながら、ポツリとそう言った。
「迷惑ではないけど、ビックリしたのは事実かな?」
「そうだ、よね…。ビックリだよね…。」
「小柴さんから、僕の個人情報とか色々と聞いてる?」
「うん、まあ色々と。」
「どうせ、ろくでもない事も聞いてそうやけど…。
そうか、逆に僕は佐藤さんの事は本当に何にも知らんわ。ゴメンな、昨日まで同級生であることすら知らなかったし。」
「うん…。これから、時間あるときでいいから少しずつでもお喋りしてくれる?」
「いいよ。大抵は図書室でダラダラしてるか、情報処理室の、どちらかには居ると思うから。
まあ、とりあえず。昨日言ったけどまずは友達からでエエかな?僕の何を気に入ったのかは、知らんけどさ。」
「うん…。」
佐藤さんは視線を上げることなく、そう返事をした。
しばらく佐藤さんと話をした。
プリクラが趣味なことや、好きな音楽はウルフルズだとか。
部活は、小柴さんと同じ簿記部である事とか。
プリクラを一緒に撮りたいって言われたけど、田中くんはその後もずっと「絶対に嫌だ!」って突っ撥ねてました。
真面目な佐藤さんは、勉強はできる方だとか。
ちなみに、田中くんは一般クラスだし成績は中の中くらいでした。
できる教科と、できない教科の差が激しかったです。
彼は特に英語の授業が苦手でしたね、赤点スレスレの低空飛行。
逆に日本史・地理は超高高度飛行で、社会科教師に自作資料を教材として提供したりもしてました。
一部の専門教科では、学年で2人・県内でも同学年で7人しか持ってない検定1級とか持ってたり。
それと、専門教科では簿記と珠算も苦手と記憶してます。
なにせ、バランスの悪い成績でした。
ちなみに、田中くんは一般クラスでも進学組で。
佐藤さんは、会計コースで就職組でした。
余談ですが。
佐藤さんは簿記部だったので、田中くんの苦手な簿記を教えてあげたらもっと早く仲良くなれたのになと今更ながら思いますね。
その後しばらく、佐藤さんと他愛の無い会話をする日々が続いた。
ある日の放課後、田中くんは小柴さんに呼び出しをくらった…
その頃ってプリクラがはやってましたね…
で、知らない人同士でも交換とかしてましたわ。