告白されたけどさぁ…
「佐藤さん。とりあえず、友達なら。」
田中くんはそう言ってその場を終わらせた。
「うん。まあ、それで。佐藤さんも一旦それでええ?」
「うん…。」
佐藤さんの表情は若干、固かったが納得はしたようだった。
「ほな、またね。」
小柴さんが佐藤さんを伴って図書室を出ていくの後ろ姿を、田中くんは眺めていた。
「あぁ…、どうすっかなぁ。」
田中くんは、そう独り言を吐いた。
彼は困惑していた、その場で拒否しなかったのが不思議なくらいだった。
小柴さんの顔を立ててそうしなかっただけ、佐藤さんが小柴さんについてきてもらったのは結果的に正解だったかもしれない。
表面上は初対面でも話すことはできるけど、基本的に人にはなかなか慣れない。
また、人の好き嫌いもかなり激しい性格だった。
その人のことをよく知らないのに、「付き合ってくれも無い」と。
田中くんだって年頃だし、彼女が欲しいとかそんな希望はある。
もちろん、普通に性欲はあるしそういう妄想もする。
…けど、急に降って湧いた話に、正直言っては戸惑ったのだ。
佐藤さんは、ちっちゃくて清楚系で可愛らしいとは思う。性格はまだ良くわからないけど約2年も片思いを続けるなんて一途なんだなと。
そんな可愛らしい同級生に告白されても、飛び上がって喜ぶ様なことは実際に無かった。
しばらく図書室のソファーで、気持ちの整理をしいつものルーティンに戻った。
田中くんの趣味は、小説を書くことだった。
剣道部を退部してから、1年のクラスメイトで仲の良かった男友達の藤森に口を利いてもらい情報処理部の「居候」となっていた。
90年代後半、PCは無い家庭も多かったし携帯電話を持っていない高校生がほとんどだった時代だ。
なので、田中くんは高校の備品のPCを使用して小説を書いていたのだ。
図書室のおばちゃん司書に片付け等が終わった旨を伝え、情報処理室に一人で移動するなか田中くんはまた考え込んでいた。
先程の一件を、誰かに相談するかどうかを。
田中くんが通っていた高校は商業高校で、40人クラスが10クラスあって一学年約400名。
情報処理・会計・一般とコースが有り、情報処理は1年から、会計は2年からコース分けがあった。
男女比は、4対6で男子が少なく1年生では2クラスが「女子クラス(女子だけのクラス)」があった。
ちなみに、女の子同士で廊下で「スカート捲り」をしたり…
小学生男子がよくやる、あれである。
男子の目の前で良くやってた、目の保養とは言うものの目の毒とも言える。
夏場は椅子に胡座をかいて、スカートの中を団扇でバタパタと…
意外と見えるんですよね、アレ。
クラスメイトの下着が見えてしまうのは、年頃の男子生徒を「猿」にするのには容易なんです…
剣道部時代、隣の柔道場のマットの上で女子生徒同士がそういう行為をしていたのを目撃したことも。
そういうところもある、変な高校でした。
田中くんは考えた末、友達関係には相談出来ない事に気がついた。
彼女が居るやつも居たが、チャラくて参考にならず…
しかも、その彼女と佐藤さんとでは性格が全然違うから参考にしていいかわからない。
小柴さんは関係者だから、相談できないし…
「アカンわ、相談できる奴がおらんなぁ。」
知人程度ならクラスの内外にカップルはそれなりに居たが、よく知らない人に相談をする気にはなれなかったのである。
これって、特殊な高校なんですかね?
他を知らないから何とも言えませんけどね。
男子が居ても、女子校気分が抜けきれないというか…
そういう校風?なのかな。