初めての告白
初めての投稿です。
宜しくお願いいたします。
「私と、…付き合って下さい!」
放課後の人かけまばらな公立高校の図書室の一角で、見知らぬ同級生がこう言った。
同級生だと分かったのは、紺のブレザーの胸ボケットに着いてるエンブレムの学年色が自身と同じ緑だったからだ。
緑色を基調としたチェックのスカートと、同じ柄のリボンもきちんと着こなし
優等生キャラな感じな立ち姿だった。
「はあ?なに、いきなり…」
田中くんはビックリした、そして一種の罰ゲームでもさせられてるのかと想像した。
だが、すぐに罰ゲームらしきものではないと言うことが判明した。
彼女が後ろを振り、返り助けを求めたからだ。
そこに居たのは、田中くんと同じ3年生で同じく図書委員をしている小柴さんだった。
小柴さんなら、こんな変な罰ゲームはしないだろうと。
「あ〜、ごめん。この子な佐藤さんって言うねんけんけど。あんたの事が好きやねんて。」
そう言うと小柴さんは、物陰から現れ佐藤さんの横に立ち、田中くんにそう言った。
3年生のとある5月の放課後、授業が終わり図書委員として貸出・返却業務などの仕事をしながら一人でソファーに座り少しのんびりとした時間を過ごしていたところだった。
田中くんは1年生からずっと図書委員をしていて、同じくずっと図書委員をして居る小柴さんとはクラスや科目コースは違うけど普通に話す間柄だった。
「なんかな、1年生のときの体育祭であんたに一目惚れしたらしくてな…。」
そう、小柴さんは切り出した。
「1年生の体育祭って、めっちゃ前やん。2年前か?」
「うん。その時に…、やねんて。」
「はぁ。」
田中くんは、ちょっと当時を思い出しながら佐藤さんを見ていた。
1年生の体育祭、クラス対抗とか出てなかった様なきがするけど。何の種目に出てたっけ?
あぁ、運動部の部活対抗リレーは出て走ったっけな?
田中くんは剣道部で、道着・袴を着て垂れと胴を着け竹刀をバトン替わりに200mを走ったことを思い出した。
その後、初段に受かった事と部活内でのゴタゴタで2年生の夏前には剣道部は退部していたのだった。
「一年生の体育祭って、剣道部で走った部活対抗リレーの事?」
「そうです!その時に…」
佐藤さんが赤面した顔で田中くんを見て、そう言った。
目の前にいる佐藤さんは、背中まである黒髪のストレートで細く小柄な体型。
地味系だけど、丸顔で綺麗な顔立ちの同級生だった。
小柴さんとは佐藤さんはクラスメイトだけれど、一学年に約400名居ると田中くん的には知らない人なんて圧倒的に多い。
まして、科目コースも違うわけだし全く接点がない訳で。
「で、どうするの?」
小柴さんがそんなタイミングで、佐藤さんが一番聞きたい答えを聞き出そうとしてきて。
「えっと、返事保留?」
田中くんはそう答えた。
「はい?なんて?」
佐藤さんの反応より早く、小柴さんが素早く切り替えしてきた。
「ごめん、悪いけど僕は佐藤さんの事はなんにも知らんねん。
と言うより、存在も知らんかったし。
僕のおる一般クラスと君たちの会計コースでは、学校行事や学年行事以外での交流もほとんど無いやろ?授業内容も被らんし。」
「…まあ、そうやな。」
「お断りします、とは言うて無いけどさ。いきなり告られて、「ハイ、わかりました。お付き合いしましょ!」ってほど、こっちは恋愛スキル無いねん。」
「うん。」
「接点ないからなぁ…、ほんま。僕らは、今まで喋ったこともないやん?」
と、佐藤さんに話しかける。
「はい、でも今回は勇気を出して。小柴さんにも、付いてきてもらって。」
佐藤さんは下を向きながら、真っ赤な顔でそう言った。
「他に好きな人とかが、居るって言ってなかったやんなぁ?」
小柴さんは、数日前の委員会の当番のときに田中くんにその事を聞いていたのだ。
「…あ、まあそうかな。」
田中くんの歯切れは悪かった。