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遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第一章 つぼみ王子と没落令嬢
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6 ミジンコほどにも興味ない!

「ありがたいお言葉ですが、申し訳ありません。私めは既に貴族ではなく、 ただの使用人でございます。そのお話はお受けできません」

 

しくじってここで会ったが100年目。王子のプロポーズをどうにか

無礼に当たらないように断るしかない。しかし相手はポンコツであってもこの国の唯一の王子。断りの言葉にも一つ一つ気を付けなければならない。


(これでどうにか引き下がってくれるといいんだけど…)


しかし、


「そんなこと私も既に知っているぞ!大丈夫、気にするな!私はクレア嬢、君のことを深く、海より深~く想っている…!」


少しずつ近づいてくる王子にあわせて後ずさりする。


(愛が変な方向に重い…!そして鈍感すぎる…!!)


"あなたに興味ないの、私あなたのことミジンコほどにも好きじゃないのよ"という大事な意味を含んだ遠回しのお断りはやはりポンコツな王子には届かなかったようだ。


『私、あなたの財力とか権力とか興味ないし、ポンコツな王子なんて結構よ!!』と言えたら早いのに。


ひぃぃーと心の中で嘆くが、周りの貴族たちは私がどう対応するのか冷ややかな目で見ている。


(いやいや、誰か助けてよ~!!)


その嘆きに気づいてくれたのか、王子の専属の老執事が私から王子を引っ剥がしてくれた。


「お、王子。女性にたいして強要してはいけませんぞ。さぁ、陛下が待っておられます。急ぎましょう」


はぁ、良かった……。とりあえず難を逃れる道を作ってくれたあの執事さんに拍手を送りたい。ありがとう!


「ふむ、そうだな…。お前ごときにそう言われるのは少し尺だが父上が待っているのも事実だ」


"ごとき"って……。やっぱり使用人にたいして失礼な王子の態度に

『私も同じ使用人なんですけど!変なプロポーズするくらいならもっと執事さんを大事にするべきよ』とむっとするが、口には出さない。


(ポンコツなのも嫌だけど、こういうところも嫌なのよね…)


「仕方ない。次の機会にしよう…。ではな、クレア嬢。またお会いしよう!」


「は、はぁ…」


王子の背中が遠ざるのを見送ると長い戦いを終えた戦士のように

こちらは疲労感でいっぱいにだ。ふぅ…と息を吐いて壁に背中をつけるとどっと疲れが増した気がする。


周りで取り囲んでいたはずの令嬢たちは興味をなくしたようで

彼女たちは楽しくお話を再開していた。まったく裏表の激しい人たちだ。


(…もう、今日は散々だよ!まったく、あのポンコツ王子!!)


令嬢たちの嫌がらせに王子からの望まないプロポーズ、クレアの楽しい使用人生活も彼らのせいで台無しである。ふと時計を見ると、時刻は23時を既にまわっており、もうそろそろパーティーもお開きだろうという頃だった。


幸い、今日は夜の片付けの当番ではないため、ポンコツ王子への恨み節を胸にアンナに一声かけてから重い体をひきずって寮へと帰った。


 ― ― ― ― ― ― ― ―


「やっと寮に帰れた……。精神的疲労でお城から近いのに今日は遠く感じたよ……」


歩いて数分のところにある、このボロくて安っぽい寮にはたくさんの使用人たちがすんでいる。寮の見た目はまぁ綺麗とはお世辞にも言えないが、雨漏りもしないし、生活するには仕事場と近くて便利だ。


しかし、この寮は木造であるためもう古く、窓やドアも開けるたび、きしきしと悲鳴をあげるのが欠点である。仮にも元令嬢の私は初め、寮の外装のボロさに驚きのあまり固まったけれどいつの間にかなれてしまった。


この寮は今から約60年前、現王様の祖父が王様だった時彼の善意によって建てられたものであり、それほど部屋数は多くない。そのため、使用人は一部屋をふたりで使っていて、私はアンナと同室だ。


アンナは今日は遅番でパーティーの片付けが遅くまであるので

私は先に休むことにした。


(喉渇いた……。何か飲みたいなぁ……)


部屋についたらベッドにダイブしてそのまま眠りにつきたいが、喉が渇いてしまったから仕方ない。水道や火を使える場所は共有スペースにしかないため、クレアは部屋から出てお湯をわかしに行った。


こぽぽぽ…とヤカンにお水を入れて、火にかける。そして自前のお気に入りのアールグレイの茶葉で紅茶を入れる。微かに香る柑橘系の香りが絶妙で香りをかぐだけで心が落ち着く優れものだ。


私にとってこのアールグレイの紅茶は貴族令嬢だったころ、執事がよく入れてくれたもので、懐かしい味でもある。


部屋に戻り、一口紅茶を飲むと、香り豊かな香りが今日の疲れがやすらぎ、ゆらゆらと眠りへと誘ってきた。クレアは自分のベッドにどすんとダイブするとうとうととまぶたが重くなる。


(没落してメイドになっても……負けないんだか……ら……)


ふわふわと揺れる頭で令嬢の意地悪にもポンコツ王子のうるさい誘いにも立ち向かうことを再決意し、そのまま強い睡魔に任せて眠りについたのだった。


 ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐ ⭐


読んでくださりありがとうございます!!


なんと、まだ肝心のヒーロー出てきてませんね!

ポンコツ王子ではなくて本当のかっこいいヒーローが見れるようがんばります!


ブックマークや評価をつけてくださった皆さん、ありがとうございます!続きもどうぞよろしくお願いします!

  白澤 五月

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