表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/18

女の決闘

 ユンナの小屋は、巨大な切り株を くり貫き入り口にしていた。

 「エー! これ? 結構いけてるじゃん 

 まるでディズニー映画の森の小屋、中から小人が出てきそう。


 「爺 お前 結構 乙女チックだな」

 「馬鹿もうせ」

 ユンナは、顔を赤くしてる

案外、かわいい。


 そう云えばユンナとは、長い付き合いだが、自宅に招かれたのは、始めてだ。


 「ユンナ今度城に来いよ、お前には毎回パーティーの招待券を出してるはずだぞ」

 「あれは年寄りの、行く場所ではない 」

 

 地下への階段を降りると、10畳程の広さの部屋に、アンティークな家具が並び、壁には何枚もの額縁に入った肖像画。


 「ところで この絵の中のイケメン誰」

 「ワシじゃ」

 「ウソー」

 上半身裸の筋骨隆々の男が、ファイテング・ポーズしている。

 「ハリウッド・スターみたい、スカウトされた事ない? 」

 「有るよ」

 「エー、マジ、何の映画?」

 「WO7シリーズに スタントマンでさ。

 でもクレジットにはワシの名が載ってる」


 「ネェ、この美人 まさか奥さんとか?」


 「そうだ、レイラ 我が妻だ(昔 心から愛した ただ一人の(ひと))」

燃える様な瞳が、気性(きしょう)の激しさを物語る。


 「でも、なんか恐そう」


 「ああ、恐かったよ、怒るとワシを殴ったり蹴ったりした……


 レイラは、この星の女だった。


 この世を去る時、


老いて病む醜い自分と、若い頃と変わらぬワシを比べ、悔しがって弱い力で、ワシの顔を叩いて泣いた。


 ワシは長寿族だ(ヨーダ様と同級生だったんだよ)


 「お前は何故 若い?


 何故 生きる?


 分かったぞ、お前はウチが死んだら他の女と遊ぶ気だな」


 「誓うよ、お前だけがワシの女だ」


 「お前の誓いなど、何の意味も無い 自分に呪いを掛けろ」


 「どんな? 」


 「ウチと違う女と、交わった時 自分の首が飛ぶと」


 「掛けたよ、これで満足か? 」


 レイラは、目を細め


 「良し。OKだ。」と呟くとスーと涙を流し、旅立って行った。


 「良い話ネ」

 「全然良く無いよ、あれから800年間ワシは一人だ」

 「ゲー! お前800年も一人で してるの、そこまで行くと偉人だよ」

 「だって首が飛ぶんだぜ、恐くてフクハラにも行けないよ」

 「フクハラて、何だ? 」

 「パラダイスだよ、関西の人なら誰でも知っている」


 悲劇なのか喜劇なのか、良く分かんないや。


 小屋の中は暖かった。


 「この家マジお気に入り なんだけど」

 「なんの この子の為に作ったのじゃ、それまでは洞窟で、寝てたがの女の子に洞窟は可哀想じゃ」

 「名は? 」

 「リロじゃ」

 「でも、なんか似てないな」

 (うなず)き「東方の血が、交じってる」と、呟くユンナの瞳に哀しみの影(あまり深く聞くな)


 「リリィ様、お爺さま、お茶を召しあがれ」

 「有難うよ、気を使わせちまったな、おいで」


 リリィはリロを抱き上げると膝に乗せる。

 子から幼児特有の甘い乳の香りがする。

 「この茶(うま)いな、お前が入れたのか」

 「そう お茶の葉も、私が栽培してるの ハーブも、パセリとセージとローズマリーそしてタイム、スカボローの市場で買ってもらえるの」

 「お利口だネ」

 そうだ、ゾフィアより余程 上等だ。

 「リロ、お城で働かない」

 「行きたいー」

 「ダメだ」

 ユンナが、珍しいく険しい顔をしてる。

 「だって、こんな森の奥の一軒家で、友達も いないじゃない」

 「絶対ダメだ。

 法王庁の直接雇用なら、一従業員ですむ、しかし お前の紹介で入城するのなら立場は全然違う、万が一政変の場合必ず犠牲者となる」

 「わたしが守る」

 「お前は、この子の命に自分の首を賭ける事が、出来るか?

 出来まい。

 (まつりごと)の最初の犠牲者は いつも小さき者、力無き者だ」

 「我が国に政変なんて起きないよ……」


 ユンナは、その()の強いリリィの横顔を見て思った。


 この娘は何も知らない。

 今 周辺諸国には不穏な空気が漂う。

 正に大戦前夜の様相を(てい)している。


 (何故 お前が、それを知る)


フン、村人共は星祭をサバトなどと呼び恐れている、が。

 あの精霊達はインテリジェンス・アセスメントの為に全国に配置したエスピオナージだ。

 

 年に一度11月1 万聖節の夜ブルーユの森に帰還して、一年間の収穫を報告し合う。


 高度な隠密作戦と、徹底した秘密保持の為 詳細は未だ掴めないがブァロア国への包囲網を形成しつつある。


 ユンナは、膝の上で子供を あやすリリィを見つめていた


 美しい娘に成長した


 市井に産まれていれば


 平穏で幸福な人生が送れただろうに


(歴史は、この娘に過酷な運命を背負わせるのか?)



 そうだ リリィに会ったのは、リロと同じ年頃だった


 森に動物をイジメる子供がいるとの報告に見に行くと、小さな女の子が生意気にも真っ赤な筋斗雲(きんとうん)に乗り、「ゼロファイターの奇襲だぞ」と喚(わめ)き、リスや小鹿を、追い回している。

 オマケに雲に備えた機関砲(段ボール製だ、手作りだろう)から白い光線を連射。

 殺傷能力は、なさそうだが当たれば痛い(空気銃と同じ)


 これか!


 城の はちきん娘リリィ。

 

 噂には聞いていたが……


 兎に角 評判がわるい、城の周辺の村々でイタズラの遣りたい放題、父親のカイキ様が、遠征で留守をいい事にワガママしてるな。


 成る程、カイキ様は先週 御帰還だ、叱られて今度は物言えぬ動物相手か、これは見過ごせないな。


 空飛ぶリリィは


 「ケッ、ツマんネーの今朝は、弱ッチーのばかりじゃん。」


 ツイスト踊る熊とか、そんな奇行種いねぇかな


(奇行種は、巨人だけで十分だよ)


 それでは、リリィちゃんはお城に御帰還するの。


 そして朝飯食って、朝風呂入ってメアリア保育園に登校するの。


 園で朝からブリブリ云わせてやるぜ。


 メアリア学園はネ、超お嬢様学校お茶の水と同じなの

 偏差値なんてメチャンコ高いんだからネ。

 (お前 裏口だろ)


 うるさい 


 空を行くリリィの前方に、不審で巨大な障害物。


 あれは 何だ?



To be contenued



 

 


 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ