少女時代は修行時代
チョッと あんたら私達の学校 壊さないでよ
(何を呑気な、周囲を見渡せよ、お前は囲まれてるよ。)
皆 ゾンビだ
まるでUSJのホラー・ナイト
「この女、どうする?」
「手込めに、するべ」
イェー!
女達が騒ぐ
「こんな可愛いオモチャ、男共が独占する事ないわ
私達にも楽しませてよ、地獄は退屈で死にそうよ」
(お前ら、もう死んでるよ)
赤いお面を付けてた男が、諍う男女の間に割って入る。
「男と女、交互に楽しめば良いじゃないか」
イェー!
横たわるリリイに、全員が一斉に襲いかかる
(危機一髪)
でも大丈夫
ゴーン,ゴーン,ゴーン,
セント・メアリアの夜明けを告げる鐘の音と共に、廊下に転がるリリイを残して亡者共は、瞬時に霧散
地獄への帰還
アラ! ガッカリしたかしら
(全然! )
リリイは痛めた腰を擦りながら、起き上がる
今の何?
夢?
でもシュールでリアル過ぎて怖過ぎ
アタシ泣いてるもん
(お漏らしもしたのか)
キィー 何だそれ、それセクハラだぜ!
女の子に、向かって最低の暴言だからな!
謝れ!
(すいませんでした)
リリイは帰る途中、廊下で一冊のボロボロの文庫本を拾った
表題は「さらばニューヨーク」
著者名は……ウイリアム・アイリッシュで あった
あの隣に座ってた、ボロボロの爺の本か
だとしたら、あれは夢や幻では無い
全身にゾッと鳥肌が立ち、本を持つ手が震える
これは、不浄の物だ
城の煖炉で焼却処分だ
煙突から煙と共にコウモリが、飛んでくぜ
ウイリアムちゃん「さらば」は、お前だ
の、積りが苦手科目の考査に疲れはて
結果はボロボロ欠点必至
(そりゃ あんな事件の後だもんな
でも その方が女の子らしくて良いや、何か安心した)
帰宅後自室のベッドに倒れ込みガン寝してたら
真夜中 怖い夢で目が覚めた
闇の奥から、醜い欲望に濁ごった千の瞳がアタシを睨む
怖い
そう、両頬 涙でビチョビチョ、夜泣きしちゃた
パパの寝室に飛び込みたいわ!
パパのベッドに潜り込み髪なんか撫でられて
ララバイ歌って欲しいの
(ママは?)
知らないわ、10年前に実家に帰ったから
今頃ナイトと騎馬戦でも してんじゃないの
パパも好き者の、お姫様と合戦中だとマジ卍だしな
(ソレ死語なんですけど)
法力学は追試だろう
予習しとこ
机に座って、鞄から教科書を出すと、同時にボロボロの文庫本も転がり出る
いけネェ! 忘れてた!
こんなの持ってるから、変な夢見るんだ
ゴミ箱直行……の手が止まる
化けて出て泣いて たんだからチョット読んでやるか
でも限界は3ページ
つまんなきゃポイ
デモ、一読魅了された
特に表題作「さらばニューヨーク」は秀逸だった
紹介文にも有る様に、大都会で生きる孤独と寂寥
追われる者の焦燥と絶望が、挽歌のごとき調べを帯びて胸にせまり、最終行の「さらばニューヨーク、さらば私達。」には不覚にも涙出たよ
検索すると、消滅する定めのノベル作家の中て、コアなフアンを生み出し続ける稀有な存在らしい
ウイリアムちゃん、すねる事ないよ
アタシ意外と、読書してんだよ
(ライト・ノベルだろ)
文学書も、読んでるよ「嵐が丘」とか
(それ一冊きりじゃないか)
知ってたの デヘッ!
そう、勉強部屋の本棚、ほぼ百合系ライト・ノベル
(エーッ! お前、そっち系だったの?)
違うッてば!
百合 読むと、ドラ 思い出すの
(誰、それ)
サンドラ・マキューリィ
西方の王家の娘
わずか一年半の間だったけど、大親友だったんだよ
あの娘と出会った日の事は、今も忘れない
後期の始業式
校長に連れられ壇上に登場すると、会場から感嘆のため息が漏れた
濃紺のウエストリボン付きアンサンブルワンピースで、セミロングのブロンドをお下げにしてた
顔は利口そのもの
留学生だった
校長に紹介されると少しも物怖じせず、ハキハキと自己紹介した
「留学の目的は、本校の法力学講座
グマール様に直々に、伝授されたいわ
でも学園生活もエンジョイしたいな、仲良くしてね
ドラ てッ、呼んで良いよ」
可愛い過ぎ!
会場からも「可愛い!」て、声が飛ぶ
隣のエマなんか「あれマジ鬼可愛ジャン」なんて呟いて目ウルウルさせてっから、踵でオモックソ爪先踏んでやったら泣いてんの
バーカ、よそ者にイキらせとくのかよ
潰してやる
3日で泣いて故郷に帰らしてやる
荷物背負ってよ
ケッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、
(ヤッパり女 怖いね)
アンタが、弱いだけ
最悪な事にアイツは、同じクラス
マジ卍
(だから、ソレ死語だってば
知らないの!)
何よ、次元の断層で通信速度が遅れるのよ
だったら、コンなの何て表現するの?
(知んない)
だったら黙ってろ!
嫌な予感は、直ぐ現実に成る
昼休み、弁当 食ってボケッとしてたら、ミカが取り繕う様な、笑みを浮かべ
「私、球技大会の実行委員降りるから」
「なんで?アンタが いなきゃ困るよ」
「ドラ に代わってもらったの」
「ハー?」
「それからネ、種目も変えるからバスケからラグビーに」
「アタシに無断でか! 」
「これは体育担任の了承も、取ってるから、ラグビーはネ ドラの母校で、熱盛なんだよ」
「ドラに委員長してもらおうか」
「それイイネ ドラ なら間違いないや」
「へー、アタシなら間違うの?」
リリイが全身から放つ、強烈な殺気に、ミカはたじろぐ
「別に、そんな意味じゃないよ」
「消えろ」
「何よ、そんな言い方!」
「回し蹴りで、廊下に放り出すか?」
「ワケ分かんないヤ、サイナラ」
油断してた
ドラ は優秀で、飾らない性格で人気が有りウカツに手が出せなかった
が、限界だぜ、ドラちゃんよ
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