魔族登場
「ジュリア、私も あの馬車に乗る」
「エッ? 」
「もちろん校則違反さ、だから こうダッ! 」
クルリとバク転して、ポンとハムスターに化け
ジュリアの胸を駆け登る
「胸ポケットに隠してくれ
ジュリア、お前は臭わないか? 」
「それは私のシャネル5番の香り」
ヤッパりな、コイツらには無理だ
「いいか何が有っても普段通ふるまえ、そして油断するな
これは命令だ」
ジュリアの乳房の間に、スッポリ ハマる 意外と巨乳
するとジュリアは力を入れて、ネズミをギュッと握る
苦しい 何すんだよ、握り潰す気かよ
見上げると、ジュリアは顔を真っ赤にして大粒の涙をポロポロ 溢してる
何だお前、狂ったのかよ
「一生の お宝よ
リリイ様をこの胸に抱き
この腕で抱き締めたわ
私の一生のお宝よ」
変な女
何か良く分かんないや
他の生徒が、騒ぎ出した
「ジュリア、ズルいぞ」
「私も、リリイ様を抱き締めたい
そのネズミ 貸して」
「ダメだネ、ハー・マジェスティを抱けるのは貴族だけだ」
「そんな決まり、何処にも無いぞ」
「あんたシカトされたいの」
何やってんだ、コイツら
「お前ら、死にたいのか! アタイに従え! 」
やがて馬車が停留所に到着
強烈な、異臭を放つのは馭者だった
頭からスッポリとマントを被り顔を隠してる
あれは魔族ではあるまい
低地カトマンザスに住む小鬼の種族
小銭で卑しい仕事を引き受けるゴブリンだ
「ジュリア、私が良いと言うまで、絶対に動くなよ」
馬車は並木道を、しばらく進むと本通を外れ水車小屋の横の小道に入って行く
リリイは、ジュリアにささやく
「馭者に何故道を変えたのか聞け」
「馭者さん何故、道を変えるの? 」
「前方でガス管工事を、している」
バカめ 周囲は田園地帯だライフラインは、一本も走って無いよ
この道の先は、小さな広場だ
そこで仕掛けて来るな
やがて広場、周囲は大きなブナの暗い森
そして馬車は、ゴブリンに囲まれた
小型のオメスプレも、重いエンジン音を響かせ待機している
そうか、これで子供達を境外に運ぶのか
先頭に立つのは、ウサギ型魔導師
リリイは、馬車の屋根に駆け登り怒鳴る
「魔道士が営利誘拐か? ガッカリするぜ! 」
「手段を選んでる暇無いんだよネズミ
中学校のスクール馬車にボディーガードが付いてるとは、思わ なかったよ
お前も法力者なら降りて来いよ」
ウサギは、石を拾うと投げつけて来た
石は砕け燃える散弾と化しリリイを襲う
クルクルと回転しながら変身するリリイのスカートに、プスプスと幾つもの穴を開ける
危ない ところだ
ネズミのまま喰らってたら、バラバラにされてた
「ヘーエ、こう言うの、ひょうたん から駒てんだろな
お前の事は知ってるぞ
女王様気取りで朝っぱらから、領内をうろつくバカ女だ」
「リリイ様に、それ以上の恥辱許さん」
馬車から、飛び出すジュリア
「ジュリア! よせ! 」
「子供は、引っ込んでろ」
ゴブリンが、突き飛ばす
「小鬼 テメエ!
アタイ本気でを怒らせたな! パイロキネシスだ! 」
ごう音と共に燃え上がるリリイの体から、ゴブリンに火柱が飛ぶ
小鬼は瞬時に燃え尽き、灰は風が消す
悲鳴を上げる暇も無い
「この お姉ちゃんは強いよ
お前らは帰れ」
ウサギは、懐から皮袋を取り出すと、後方に放り投げる
ゴブリン達は、金を受け取ると早々に退散
「何で、あんな汚い連中を使う? 」
「金で処理さ、風俗と同じだ」
「良かろ、それで お前はアタイに勝てるか? 」
「俺達に勝敗は無いんだ、有るのは生死だけさ
コイン博打と同じだ、何時でも覚悟している」
「上等だ、では来い! 」
「ハッ! 」
「ハッ! 」
一人と一匹は空飛ぶ流星、一気に成層圏
空気の薄さに、軽い目眩を感じたリリイに
一瞬の油断が生じる
頭上から、日本刀を構えたウサギが急降下きりもみで首を狙う
バサリ!
辛うじて、かわしすがフィッシュボーンの尻尾を落とされた
クソ! せっかく お気に入りのスタイルだったのにな
しばらくショートだ
(何を呑気な)
ウサギは、追撃の手を緩めない
クルクルと旋回しながら、放つ強烈な蹴りが
リリイの みぞおちを捉える
リリイは力を失くし地上に堕ちて行く
リリイ! お前!
仰向けに成り、手足を拡げた彼女の傍に酷薄な笑みを浮かべたウサギ
首に狙いを定め、刀を振りかざす
が
美しい
根城の洞窟に持ち帰り……
(オンナとバトルする時、スケベ出したら負けよ)
ウサギの前から、スッと彼女は消えた
何で?
(嫌いだからさ)
何処へ?
(虹の彼方へ)
ほらウサギ、虹の彼方から帰って来た彼女が、お前の後ろに立ってるよ、振り向いて見ろよ
エッ?
次の瞬間、リリイの水平切りでウサギの首は、天高く飛ぶ
「さすが王女さんだ
ホレたよ、いつかモノにしてやる」
「無理!
それよりアンタ何で、生首でしゃべってんの」
「切断直前に、ライフを全部 頭蓋骨へ以降したからさ」
「エルディア人みたい」
「何だソレ? 」
「知らなく良いよ」
巨兎なんて見たくない!
「次の出会いを楽しみにしてる
今度は決めてやる サラバじゃ」
まあ、頑張れ
ウサギは首から、飛行機雲を撒き散らし、飛んでいく
あの首はどんな構造だろう、魔族のウサギは器用だ
To be contenued