プロローグ
私マジック・ランドの皇女リリィ・ヴァロアの朝のお目覚めは、天蓋付き姫系ベッドのモフモフの羽毛布団の中なの
起たらまず朝シャン、でも使用するのは お湯と石鹸だけハゲるもん 常識よネ
体を拭いて、髪を乾かしバスローブ姿でドレッサー三面鏡台の前に座る
何て可愛のかしら!
と、鏡の中から微笑みかける自分にウットリ
(お前 ナルシストかよ)
ナルシスは男でしょ!
化粧水と乳液でスキンケア
若いからって油断しないで、歳取ると干し柿みたいに、なっちまうから
背中まで延びたブロンドに包まれた薄いソバカスの散った顔、ナチュラルな眉に青い大きな瞳、細く通った鼻梁ポチャりした小さな脣
鏡に映るアタシは、可憐で、清楚で、高貴
皇女はこうでなきゃネ!
(良く言うよ)
呼び鈴を打ち鳴らしゾフィア(役立たずの乳母)を呼ぶ
ブスッと、寝起きボケ面のゾフィアが、ノソノソと表れる
母を知らない私にとって、ゾフィアは ずっと母親変りだった
でも彼女 最近はモウロクしちまって、1日の大半をお城の最上階に有る、自分の部屋で居眠りしてる
結構な御身分
パパに暇出したらと言ったけど、何時もは決断の早いパパが、恐い顔して黙ってた
(何か事情有るんだネ、昔 愛人だったとか)
アタシには人事権ないから我慢してる
「ゾフィア いつものね」
ゾフィアに、髪を編ませるの
最近のお気に入りは、ハーフアップアレンジしたフィッシュボーン
その間だに予習、一時限目は 苦手中の苦手 物理だ ハァー!
k=fx P=phg 力学の公式 頭痛くなるよ
アッ、言うの遅れたけどアタシJK
聖メアリア女学園高等部の一年生
ゾフィアが「おかしな髪型で御座います、まるでモヒカン族の女じゃ」
(べつにアンタの感想 いらないんだけど)
サイドが、今チョイ 気に入らないけど、まあイイや 朝は忙しいんだし
「ゾフィア 朝食の準備ネ」
さて、お着替え
アラ、ゾフィアまだ居たの?
アタシの着替え見たいの?
「出てけ!」
ライトブルーのロングドレスに着替え
(エー! 学校にドレス来てくの?)
バーカ、時計見てよ5時半よ
ご公務が有るの
(何でロングドレス? )
下から覗かれるの嫌なの
朝食後、空を飛び回り領内を巡視するの
これは、パパの命令
パパはネ、メチャんこ 恐いのよ
朝食は、この国の最高峰エレベス山頂に、そびえる深紅の宮殿コート・クリムゾンのテラス・ルームで
外はまだ暗いけど、天空の星々は輝きを失い始めてる、女神ビーナスの星が消えると同時に、遠くのセブンアーマー連峰の輪郭が、登り来る太陽の光を浴びて、黄金に輝くのはまるで神々の姿
七つの鎧の山脈七人の神々が、宿りし聖なる山、我が国家の象徴
その周囲に拡がる街は、帝都ビバロニア
そうだ次いでに、この国の紹介しとくね
面積は58万K㎡ マダガスカル島と保々同等ね、人口は2千万人弱……エッ? 何処に有るかですって?
君達と同じ空間さ
そして同じ時を共有している
吹き来る風さえ同じなんだ
なら何が違うですって?
違うのは次元さ
パラレル・ワールドて聞いた事ないかな?
この宇宙はネ、26次元が並行して存在してるんだ……
デモこれ以上の説明はアタシには無理、詳しく知りたきゃホーキング博士にでも聴いとくれ
位置は君達の地理で云えばアイスランド、だからスゴく寒いんだよ
でも自然は豊か、食べ物が美味しい
北極海で採れた魚介類を使った民族料理を、食べにおいでよ
(エッ? 行けるの? )
条件を満たせばネ
(どんな条件?)
後で教えてやる
この国はネ、今から千年前私達の先祖が建設した
それまでは君達と、共存してたのにな
私達はねヒューマノイド型だけど、ホモサピエンスでは無い
君達とは別の種なんだ
私達は、故郷の星を追われた、宇宙の流浪の民だった
この銀河の果てに、地球と云うハビタブルルゾーンを、見出だし定住を決意したのが、今から50万年前
しかし15万年前に一匹の怪物が誕生する、それが君達の先祖ミトコンドリア・イブだ
彼女は驚く程 狡猾で、好戦的で、好色だった
イヴが繁殖年齢に、達すると即 ボスの手が付く(身体がセクシーに見える装飾を施していた
オシャレの先駆者である)
と、居並ぶ お姉様方を蹴落とし正妻の座に付く と、ボスを骨までシャブリ尽くし、群れから放逐した
(それマジ)
マジ、女は原始から恐い生き物でした
イブは女王として君臨すると軍隊を組織した
武器を発明した(棒に石をくくり付けた)
戦車を発明した(ダチョウの群に兵士や武器を乗せた荷車)
周辺の集落を瞬く間に、征服すると
(ダチョウに乗って、石斧を振り回す類人猿の大軍なんて、怖過ぎるよネ)
他民族への侵略を開始した
クロマニヨンも北京原人も明石原人も、イブの軍隊に亡ぼされたんだよ
現代の人類の繁栄は、全てイヴの功績
メリケン・パークに銅像建ててやれよ
(いらないよ)
150年間生き続け、ガキを産み倒し
(ゾッとするぜ)
何言ってるんだ、そのお陰で君達が存在してる
そして、ガキを産ませ倒し
(エッ? 待ってよ!
……産ませ倒して、何それ? )
そうか、君達は、知らなかったんだネ
イブはネ、君達の先祖 第一号はネ
アンドロギュヌス、つまり両性具有者だったのさ
君達の中には、男女が共存しているんだ
(嘘だ! )
フン、君は同性の友人に、慕情を覚えた事は無いかネ?
ホラ、赤くなった
有るよね
それは、変態では無く自然の摂理さ
(でも学校で習った原始時代とは、随分違う)
当然記録が無いなら、類推と云う臆測さ
記録の術である文字を教えたのは私達さ、と共に信仰心も授けた
世界中に八百万の神が遍在するのが、その証し
新種の凄まじい蛮性を、宗教の概念が抑止する事を願ったのにな
神への思いを、金儲けに利用する輩もいる
エッ! そんな話、退屈だって?
だよネ
兎に角 今から1000年前それまで共存していた我等に突然 攻撃を開始した
それまで施こされて来た恩恵を、忘れ去り
歴史にも残ってるよ
かなり歪曲され改ざん されては いるが、中世の魔女狩がそれさ
戦えば、勝てたさ
しかし覚えていて欲しい、君達も いつか時空間を越えて、旅をして他の惑星に到達した時、その星本来の生命に敬意を払って欲しい
退屈そうだから、私達の世界の成立過程や、歴史は追々話すね。
*************
遠くにそびえるセブンアーマー連峰を見ながら
乳母ゾフィアが用意した2個のクロワッサン
ゾフィアが焼いたパン、不味い
に、ウズラのスープ
コレも不味い
に、ハーブ・ティー
何だコレ、ハーブの代わりにネギが入ってる
サスガにキレたよ
呼び鈴を振り打ち鳴らしゾフィアを呼び付ける
「お嬢様 朝から、うるそう御座います 一体何の騒ぎかな? 」
「ゾフィア、ティーにネギを入れたの、貴女かしら? 」
「左様で御座います 何か問題が、御有りかな?」
(何居直ってんだババァ)
「何で、お茶にネギなのかな? 」
「それはお嬢様、昨晩の霜でハーブが、全て枯れていたからで御座います」
ハァー、ため息出るよ
「あのネ、薬味と香菜は違うのよ」
「いいえ、お嬢様 同じで御座います どちらも体に、良う御座います」
ダメだな、こりゃあ
ちゃぶ台をひっくり返して、ティー・カップをババァの顔に叩き付けて やろうかと、思ったけど
「分かったよ下がれ」
(消えろ)
毎朝この調子でイラコラするぜ、ストレスMAX
くそ不味いクロワッサンを頬場り呑み下す
マジ不味過ぎ!
テラスに、駆け寄り
「ハッ!ハッ!ハッ!」と、叫び
力の限り飛び出す
地面に激突直前、身体を反転させ、クルクルと3回転して、ほぼ垂直に、上空に駆け上がる
リブァイの、真似なんだ
みんな、もちろん、リブァイ知ってるよね
わたし日本のアニメ大好き、リブァイ大好き結婚したい
でも、リヴァイは82話で再起不能
(最強の あんな様ないよネ)
でもエレンだって……
イサヤマ先生 お願い
ミカサだけは、絶対傷付けないで
そんな事、誰も許さからネ!
朝 空飛ぶなんて、爽快だと思うだろ?
それが全然
上空は寒い
空気も薄い
だったら防寒着で、酸素ボンベ背負って飛べですって! 化け物だと思われるよ
(羽根も無いのに、空を飛ぶのは化け物さ)
「ヤッホー」
8000メートル上空から、ふもと迄一気に滑り降りる
途中、渡り鳥の群れが、行く手を、過ると
オラ、オラ、オラ! どけどけ、ブッ飛ばすぞ!
巨大樹の森(パクり、ゴメンネ)を、抜けると朝日を浴て、黄金色に輝くアカンなレイク、その美しくしさに涙を流すの
これは悔し涙
だってアタシより綺麗なんて憎い
レイク上空を通り過ぎ、やがて、、、
オットー!
待ってよ!
ちょっと待て!
見ッけ!
造反者 一匹見ッけだ
あれは、極東のジャパンから来た、カッパの三吉だな
釣り禁止の、このレイクに小舟を浮かべマス釣りしてる
先月見付けた時、忠告してやったのにな
あんなのが居るから朝から眠くて寒いのに、こんな辛い事してんだ
あいつ終わりだネ
許さない
バツーカ砲ヘィ!
乃木坂みたいで、可愛いでしょ
手の中に現れたのは、ズッシリ重い銀のバツーカ
照準を三吉のアホ面に合わせ、引き金に指を掛けアーメン
と、その瞬間 三吉がウインクした
ウインク?
自分の頭が飛ぼうとしてるのに、女に色目かよ?
わろた
笑いに免じて、命は助けてやるよ
代わりにキツイのを一発、父に代わってお仕置きよ
(それも何か、パクりポイな)
照準をずらして、小舟にドン
「ビュー! 」
三吉は、情けない悲鳴を上げて宙を舞う
すかさずウエスタン・ラリアットでヘィ!
カッパの足を、絡め取り。旋回して振り回す
「姫! 姫! 後生じゃ! 勘弁じゃ! 」
三吉が、住み着いてる湖中の小島チクビ島(何か卑猥)に投下
島には何時の間にか、小汚ない庵が、建っている
そのボロ家から、もう一匹カッパが、転がり出した
(なんだ、あれ?)
デカイ乳房を、振り回してる
女だ、メスカッパだ
どう言う事だ?
ふざけやがって! 三吉! てめえ! この野郎!
ランドに、ハーレム作る気かよ?
(あん時、殺しとけば良かったよ)
島に、降り立つと2匹のカッパは、平伏してる
「三吉、何だコレ? 説明しろ」
最初に、顔を上げたのはメスカッパ
見てると、目の奥が痛くなる程醜い
「姫様、三吉を許してケレ、三ちゃんは、寂しかったんだよ……お前らも出て来て詫びろ」
すると小屋から、コロコロとチビカッパが、転がり出た
その数5匹! ビックりするぜ
何だよコレ、マジ何?
動物の子供は、可愛いのに河童の子は吊り目に くちばしで
全然可愛くありません。
おまけにヌルヌルしてキモいし胡瓜臭くて、小面憎い
そのチビ共は、出て来て謝るどころか手を振り振り
~ハァー、チョイな、チョイな、カッパじゃ、カッパじゃ~
と、歌い踊りだした
「ダサイ踊りしてんじゃネェ、何だよコレ? 」
「コレは、日本の盆踊りじゃ」
「誰が説明しろと言った 三吉お前死にたいのかよ、アタイが、聞いてんのは、このメスと、チビ共は、何なんだよ? 」
「オイラの家族で、ございます」
三吉は、落とした細い肩を震わせ、鼻水垂らしすすり泣いてる
シャキとしろ男だろ、そのアホ面に蹴り入れられたいか
「不法越境だな
お前もエロス島で、ランドへの移民権を証明するモスグリーン・ガードを交付された時、ランドの法を聴いたハズだ
不法越境は最大の御法度だ、まさか魔導師の力を借りたなら、この6人は拷問を受けるぞ
子供とて容赦無いぞ」
「カイキ様で、ございます」
「え? 」
「お父様のベルサイコ様の、御取り計らいでな」
「マジ? 」
「マジじゃ」
「カッパが、マジなんて言葉使うな!
父ちゃん、じゃなかった皇帝に直接聞く嘘では有るまいな、その時は覚悟しろよ」
「オイラは嘘付かないよ」
知ってるコイツには、そんな知恵も度胸も無い……
なら一体どう言う事?
体制自らが法を破る時、動乱、反乱の引き金を引く
革命が起こっても、いいのかよ?
何してやがんだ、タコ親父
まさかタコは、アルツハイマーとか脳の病気なのかな?
「皇帝に聞く、それまで、お前達の命は、お前達に預ける。 」
to be contenued