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1-07 レベルアップ

「グア、ゲッゲッゲ」

「ガアグ、ゲゲ」


 大木の陰からゴブリン達が近づく姿を見つけた。昨日と同じく白眼のゴブリン──『はぐれ』だ。

 2対1だが、幸いにも、こちらはまだ気づかれていない。

 おあつらえ向きに地面には石がゴロゴロ転がっている。先制攻撃のチャンスだ。

 右腕に左腕を添えて魔力循環を意識する。

 やがて循環する魔力の高まりを感じると大木から身を乗り出して魔法を放つ。


「ストーンブラスト!」


 地面から弾けた石は、一体のゴブリンの顔を撃つ。


「ゴフゥ!」


 ゴブリンはもんどりうって倒れる。だが、死んではいない。


「グギャ!」


 もう一体のゴブリンは慌てたように周囲を見渡し魔法を放った俺を見つける。

 その次の瞬間には、棍棒を振り上げ猛然と向かってくる。

 こちらも大木に立てかけた石槍を握りなおし、気合を入れつつ迎え撃つ。


「うおぉぉぉ!」

「グブゥ」


 槍術の効果か、タイミングよく突き出した石槍は心臓を貫き、ゴブリンは絶命する。

 すかさず、その身体を蹴って槍を引き抜くと、魔法の一撃を受けて地面でのたうつゴブリンにも止めを刺す。

 昨日のような油断はしないぞ。「戦いは非情さ……」と偉い(あかい)人も言っていたからな。

 しばらくすると死体は消滅し二つの魔石が残る。


「……ん、なんだ?力が……」


 魔石を拾いながら、力がみなぎるのを感じた。

 両手の指を左右のこめかみにあて魔力循環をする──ステータスを確認すると確かに上がっている。



────────────

名前 : 鬼界 冬馬

種族 : 人族

状態 : 正常


Lv2

HP : 130 / 230 (200+30)

MP : 110 / 215 (200+15)


スキル

 言語理解 Lv3

 環境適応 Lv2

 身体強化 Lv1

 槍術 Lv1

 魔力操作 Lv1

 土魔法 Lv1


継承スキル

 クラフト

  神粘土 Lv1

  分析 Lv1

  変形 Lv1

  加熱 Lv0

  倉庫 Lv1

  植物知識 Lv1

  生物知識 Lv1

────────────


 どうやらこの世界ではレベルアップでファンファーレは鳴らないようだ。

 HPやMP上限の基本値が10ずつ増加して、加算値もさらに増えているようだ。

 HPが20、MPが10ずつ、さらに加算されている。昨日の次点ではHPが+10、MPが+5だったはず。そもそも、この加算値はなんだろう。


「あ、わかったような気がする……」


 そうだ、ゴブリンを倒した数に比例している。ゴブリン一体当たりHP+10、MP+5の計算でちょうどピッタリ。


「相手の命を吸うとか吸血鬼っぽくないか……」


 気づいた事実に身震いする。別に食ったり血を吸うわけではないが、日本なら間違いなく危険生物扱いだ。


「まあ、魔物のいる世界でそんなことを気にしても仕方ないのか」


 色々と気にはなるが、敵を倒せば能力アップするのは生きる助けになる。前向きに考えておこう。


 さらにクラフトスキルの『倉庫』も、いつのまにかLv0から1にアップしていたのに気づく。

 たしかに、採取物が袋一杯で保管できる場所が欲しいと思っていたところだ。

 ふと思いついて、魔力循環をつづけたまま、ステータスのクラフトスキルに集中する。

 すると不意にその使い方が脳内に流れ込んでくる。


「そうか!スキルの使い方がわかってきたぞ」


 それと同時にステータス画面が変化した。『クラフト:分析』もレベルがアップして1から2へ変化する。

 なるほど、魔力循環により自己分析が能力アップを促したのか。

 どうやら、魔力循環はこの世界における魔法の基本らしい。土魔術も魔力を循環させる事で発動に成功したし。

 そういえば円の動きは武道でも基本にして奥義だったような。映画か漫画で見た覚えがあるぞ。


「円の動きはすべてに通ず。見よ、我が円月殺法!フハハハハ!」


 おもわずテンションをあげて、槍をグルグル回転させてしまう。円月殺法は剣術だけどな。


「えんげつさぽ~~ふははははは!」

「えっ」


 唐突な背後からの声に振り返ると、そこには両手をグルグル振り回しながら高笑いする幼女の姿が……。


「みてた?」

「うん!かっこいい~えんげつさぽ~~」

「ヤメテ、おねがいだから」


 俺は必死でメルンに懇願するのだった。



────────────



 どうにかメルンに俺の真似をやめてもらったところで、ここにいる理由を聞く。

 どうやらメルンは俺を追って集落を出てきたらしい。

 前回と違って監視役ではなく、おもしろそうだからという理由らしいけどな。

 土魔法も使えるし、監視役してたくらいだから心配はないのかもしれん。


 とりあえず荷物を『倉庫』に入れてしまおう。


「クラフト倉庫」


 魔力を流しながら指先で空中に円を描くと、空中に黒い穴が開く。

 穴は二次元の平面で、横から見るとまったく厚みを持たないが、中には空間が広がっているようだ。


「くらふとそ~こ~」


 しまった。声に出す必要はなかった。幼女が真似してる。


 ……ともかく、『倉庫』は開いたので採取物を入れてみる。うん、問題なく出し入れできる。

 その容積も二メートル四方程度ありそうな事がスキルで理解できる。まさに小さな物置ぐらいだな。

 指先を逆周りに回転させて『倉庫』を閉じる。容量に制限はあるが便利なスキルだ。

 今後、旅などをすることがあれば非常に助かるな。



────────────



「やった、大漁だ」

「さかないっぱいだねぇ~」


 荷物の整理を終えた俺たちは、昨日仕掛けた魚の罠を確認していた。

 期待通り罠には大量の小魚とエビが入っていた。

 これでガチンコ漁に頼らなくても済むな。

 あれは釣り場を荒らすので非常手段にしておきたい。


「竹の枝をクルクルっとな」


 『変形』スキルで細い枝が、まるで粘土のように、いとも簡単に曲がる。竹細工職人も真っ青な早さで竹かごが完成だ。

 竹ひごに加工してないので若干雑だが、スキルで竹の葉を貼り付けて多少の防水をすれば、十分に役立つ。ついでにザルなんかも作ってしまおう。

 さっそく竹かごに獲った小魚とエビを入れ『倉庫』に収納する。

 『倉庫』でどれだけ日持ちするかわからないが、今日中に火を通せば平気だろう。


「ふぉぉ、かたい~もどる~」


 メルンも挑戦しているが、当然そうなるよな。竹をスキルで粘土化して手助けしてやる。


「やった~まがる~」


 竹が曲がりやすく戻らなくなったので、メルンは竹で輪を作った。


「わっかできた~」


 なるほど竹の輪を指先に引っ掛けてくるくると回して遊ぶのか。なるほど、これはアレの出番だな。

 長くて細い竹を選ぶと変形して直径1m程度の大きな輪を作る。


「どうだ、この腰さばき」


 輪に身体を通すと腰の位置でグルグル回す。そうフラフープだ。

 子供の頃は得意だったんだが、ひさしぶりにやるとちょっと難しいなコレ。


「ふぉぉぉ、メルもやりたい~」


 俺からフラフープをすばやく奪うと回し始める。


「えへへ~まわる~まわる~」


 なかなか器用で初めてなのに腰をグルグル回転させて遊んでいる。

 そのうち自分で作った輪には腕を通して、腰の輪と一緒に腕と腰で回し始める。


「えんげつさぽ~~ふははははは!」


 それはもうええちゅうねん……。



────────────



 あまり遊んでばかりもいられない。再び川に罠を仕掛けると下流の探索に向かう。

 しばらくすると昨日ゴブリンを倒した川原を通る。ここからは十分注意していく。

 ゴブリン達は下流方向から来ているような気がするからな。


 やがて小川は両側を崖で囲まれた狭い渓谷に合流する。

 この渓谷の断崖には赤茶けた岩が目立つな。鉄鉱石が含まれているんだろう。少なくとも砂鉄はとれそうだ。

 問題は、ゴブリンが合流した渓谷のどちら側から来たのかだ。

 周辺を調べていると下流側の石畳に複数の足跡が見つかった。泥の足跡は乾いていたが、下流の可能性が高いとみて進んでいく。

 ちなみにメルンには集落に戻るように言ってみたが、ついて行くと言って聞かなかった。

 まあ一応、土魔法の師匠でもあるので自信はあるのだろう。

 だが、もしもの場合は、なんとしてもメルンだけは無事に帰さなくちゃな。


「あ~あそこ~」


 不意にメルンが俺の頭をぐきっと音がなりそうな勢いで曲げる。


「うぐっ……。あのなぁ」


 首を押さえながらメルンが指差す先に目をやると、そこには大人一人が出入りできそうな穴が断崖に口をあけていた。


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