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1-05 ステータス

 ノームって……、白雪姫とかにでてくる小人だったかな。確かに前を歩く老人と幼女は普通の人間に見えない。妖精の仲間と言われても納得する外見だ。

 彼らについていく道すがら、さっき見たステータスについて考える。非常にゲームっぽい見た目だが、ラルドのじいさんが「お前の世界の(ことわり)」とか言っていた。

 つまり俺の知識によって認識される情報が変わる。まさに「力の見え方は人それぞれ」ということなんだろう。

 名前や状態というのは良いとして、まずはレベルにHPやMP、これはゲームそのままの意味だろう。

 最大値の表記も気になるな。()の中の数字は何を意味しているのか?最大値が()内の合計なので、基礎値と加算値と推測できるな。とりあえず保留だ。


 スキル、これもなんとなく理解はできる。

 言語理解は、今まさにノーム達と会話ができているのが、そのスキルの効果だろう。身体強化も昨日今日と実感している。

 環境適応は異世界の環境に適応してるという意味だろうか?例えば、この地特有のウイルス、風土病などへの耐性とかかも知れない。地球でも大航海時代には、新大陸などで猛威を振るったし。

 そして戦闘スキル、槍術だ。槍なんて初体験なんだが、レベルが1となっていた。これは先ほどの戦い、経験による学習で得たものなのか。

 さらに問題なのは継承スキルだ。継承と言うからには誰かから受け継いだって事。ラルドの言っていた加護とはこのことだろうか。


 クラフトスキル、どうやら細かく派生らしきスキルが生まれているが、生産系能力だ。

 俺が命名した扱いになっているのか、神粘土スキルが存在している。

 その他の派生スキルもどうやらこの世界で行なった行為に基づいてレベルを上げているようだ。レベル0の意味は素質はあっても、まだ未完成な力ということなのだろう。


 そんなことを考えながら歩いていくと、やがて複数のキノコハウスが集合した大きな建物が見えてくる。

 俺は老人と幼女に連れられて、キノコハウス群の端、屋根の煙突から煙をモクモクと吐き出す家に入っていく。


「やあ、やあ、やあ、待ってたよ~。どうだい長老、ボクの言ったとおり問題なかっただろう」


 家に入るなり、テンション高く、眼鏡をかけたノームの少女?が話しかけてくる。

 少女でいいんだよな?彼女は、牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡をかけ、髪は無造作に後ろで束ねている。メルンとは異なり、衣服は白衣のようなものだ。

 背丈はメルンよりも少し高いようだが、小学生が科学者のコスプレをしてるようにしか見えない。


 家の中には、雑多な工具やツボ、皿、試験管や乳鉢が散らかるテーブル、大きな書棚、黒板などがあり、まるで実験室のような雰囲気だ。

 家の壁に据え付けられたアレはなんだろう。巨大なタルのような装置に煙突がつながっていて、外に煙を吐き出しているようだ。

 だるまストーブみたいにも見えるが、水晶らしき覗き窓からは炎ではなく光が見える。タルの上には宝石のようなものを散りばめた釜が乗っており、こちらも光を放っている。


 ラルドやメルンから感じていたノーム族の妖精的なイメージをぶち壊す部屋だな、ここは。



「錬金中だったのでね。散らかってるのはカンベンしておくれよ」

「ノエル、お前さんの研究にケチはつけんが、また魔導炉を爆発させんでくれよ」

「アハハハハ……」


 長老の苦言を、ノエルと呼ばれた少女は苦笑いでごまかす。


「一族に伝わるこの『識者の眼』で診て、ポーロ様のスキル『クラフト』を継承したことだけはわかってたからね。ポーロ様の力が悪しき人間に継承されるはずはないと信じていたよ」


 ノエルは俺の方に向き直ると、眼鏡のツルをクィッっと持ち上げて微笑む。

 あの眼鏡、魔法のアイテムなのか。どこまで見られているんだろう。


「……そりゃどうも。ところで、あなた達は俺の事を知っていたようですが、その辺もう少し詳しく教えて欲しい」

「そうだね。順序だてて説明しよう。いいよね長老?」

「うむ、渡り人の話も含めて教えてやるといいじゃろう」


 ふう、どうやら色んな疑問が解けそうだ。



──────────



 魔導技師を名乗るノエルの話によると、どうやら俺がこの世界に初めて渡った場所は森のストーンサークルではなかった。

 実験室の魔素計で異常な魔素を計測していたノエルが、その発生源を探っていたところ、この地下空間内にある聖地『降臨の地』に横たわる俺を発見したらしい。

 ノエルは魔道具『識者の眼』で俺の継承スキル『クラフト』を確認して、そこに彼らの英霊『ポルン・ポーロ』様の導きがあると考えた。

 しかし、異種族の俺に継承された事や、とある人族の脅威から、俺に危険を感じる集落の住民もいたらしい。

 そのため、未覚醒のうちに俺をこの地下空間の外の森に送ったそうだ。

 例のストーンサークルは、この集落からの転送門(ゲート)の出口らしい。

 放置プレイとはひどいと思わなくもないが、転送ゲート周辺は『人払いの結界』があり、人間や野生動物が近づきにくくなっているので、ある程度安全だったらしい。

 一応もしもに備えて、長老の孫娘メルンが遠くから見ていたそうだ。


 そして小川を下った事で安全圏から出た俺は、例のゴブリンもどきに遭遇した訳だ。

 あれはゴブリンで間違いないらしい。ただし、野生のゴブリンではなく、迷宮から外に出た『はぐれ』ということだ。


 この世界には魔素(マナ)の濃い場所に迷宮があり、そこには魔素を身に宿した魔物が住むらしい。

 迷宮の魔物には野生生物が魔物化したものや、迷宮内の自然発生などもあるが、共通なのは死ぬと消滅してしまう。

 装備やドロップアイテムを残すものもいるが、だいたい共通するのは魔石を落とすことらしい。俺の拾ったものも低級な魔石だった。


 メルンが、俺に問題はないと判断して連れて来てくれたからいいけど、あのまま更に危険な魔物に遭遇したらやばかったな。


 なお、彼らノーム族はかつては別の場所に住んでいたらしいが、この地下の集落に『堕とされた』らしい。その危機を救ったのが件の『ポルン・ポーロ』様だそうな。

 彼はこの場所でノーム族が生きる事ができるようにその力を奮い、やがて自らの死が近づくとノーム族の未来のために様々な予言と知恵を残した。

 この地に残る様々な魔導装置や道具が生活を助けているそうだ。


 そしてノエルは、ポルン・ポーロに連なる魔導技師の末裔で魔導装置などの維持や研究をしている。

 彼女は本棚から一冊の本を取り出し、『渡り人』関連する項目を解説してくれる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 死者の魂は大地の竜脈を魔素(マナ)と共に流れ、天へと昇る。

 やがて魔素(マナ)は天から世界の狭間へ流れいく間にエーテルへと変ず。

 魂の記憶と力は世界の狭間を流れるエーテルに溶けて輪廻の輪の中をたゆたう。

 やがて魂は輪廻の輪より離れ、現世(うつしよ)へと転生す。

 力は選ばれし赤子の身に宿り、その者、天恵を得る。

 残されたエーテルは再び魔素(マナ)へと変じ、始まりの竜脈へ流れ落ちていく。

 かくのごとく、竜脈とは生きとし生けるものすべての生と死を結ぶ、生命と力の大河。


 渡り人とは世界の狭間に落ち、エーテルの海をたゆたう人間がマナによってその身を満たされ、赤子に転生することなくこの地に生まれいずるもの。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「その渡りの際に、輪廻の輪から赤子よりも多くの流れる力と記憶を継承すると言われている。渡り人が継承スキルと呼ばれる強力なスキルを持つ理由だね。普通の赤子は生まれつきの天恵(ギフト)スキルを持たない方が多いんだから」


 ノエルが俺を指差しながら続ける。


「しか~も、『渡り人』は、体や知能は全盛期のものに近く、力やスキルが異常に早く成長するという説もあるね」


 むむっ、心当たりがあるぞ。


「ただ、いいことばかりじゃないよ。『渡り人』は、輪廻の輪を流れる邪悪な魂の残滓の影響をうけて、肉体や精神が変貌することもある。人間の魔物である『魔人』は『渡り人』の変化した姿という説もあるぐらいだ」


 えー、マジですか。闇落ちはカンベンして欲しいな。


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