↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/64

3-14 救出作戦5:攻防

【Side:鉱山都市総督エズモンド】


「――という訳で、巡回中の警備班によると都市周辺での魔物の増加が止まらないようです」

「都市の隔壁を閉じていればよいだろう。そんなもの放っておけ」

「ですが総督閣下、迷宮からの魔物の氾濫(スタンピード)など起きますと――」


 くそっ、迷宮の氾濫(スタンピード)など起きてはこの都市にも被害が出るか。

 しかたない、ミスリル鉱山のドワーフ共を、一時迷宮での魔物退治に送るか。

 人質さえ抑えておけば武器を与えても反乱なぞ出来まい。


 手に持っていた上物ワインのグラスを優雅に口へと運び、その香りを堪能する。

 そして指示を出そうとしたところを、騒々しい足音に邪魔される。


「総督閣下、緊急報告です!」


 慌ただしく、兵士が執務室に飛び込んでくる。

 まったく、礼儀を知らぬ平民どもが。


「なんだ、騒々しい。まったく無能な部下を持つと苦労するわ」


 あごをクイクイとしゃくって、報告を促す。


「申し上げます。地下で監禁中の人質たちが逃走しました」

「なにぃっ!」


 せっかくの上物ワインがグラスごと足元に落ちて割れるが、気にしてる場合ではない。

 まずい、これはまずいぞ!




【Side:ダンド】


 警備兵達のざわめきが多くなってきたな。そろそろ来るか。


「陣形整えよ! 一班前進!」


 警備兵のずっと後ろから指揮官らしき声が聞こえるな。


「そんな後ろじゃ良く見えんじゃろう。もっと前に出てこんかい!」

「そうじゃ、そうじゃ。 ワシらが相手してやるぞ」


 ワシと仲間が挑発するが、それで前に出るような根性はないだろうな。


「相手にするな! 盾を二段で構え!」


 警備兵は前列が低く大盾を構え、後列がその上から斜めに楯を構えて前衛と自分を守る隊列で接近してくるようじゃ。


「チッ! 念入りじゃな」


 よっぽど石弾に撃たれたのがこたえたらしいの。


石弾(ストーンバレット)!」


 ガキン! 仲間のノームがバレットランチャーを撃つが、距離が遠いこともあって盾にはじかれたな。


「この距離ではムダじゃ。もっと接近するまで待て」


 近距離ならば盾を抜けるか判らんが、隙間を狙うなり出来るじゃろ。


「ダンド殿、射手は扉の左右に二名ずつ配置するぞ」


 トール殿が自分を含めた六名のバレットランチャー射手を正面二名、左右に二名ずつに分散させた。

 なるほど、突入時に盾を避けて左右から斜めに撃つ配置じゃな。


「みんな気合を入れろ! 腰抜けの帝国兵どもに押し負けたらドワーフの恥じゃぞ!」

「「「おう!」」」


 大盾を構えた仲間達に気合を入れる。

 今までは職人をやっていたにせよ、屈強なドワーフの若者じゃ。帝国兵ごときに負けるはずがない。

 ワシら戦士も片手で武器を持ちながらも、仲間を背後から支える。

 まず、最初の激突を耐える。そこから戦いの始まりじゃ。




【Side:ノエル】


 ボクとメルは逃げる人質達の間を縫って、奥の倉庫へ進む。

 メルは器用に人を避けてドンドン先に行ってしまった。

 ボクも負けじと後を追うが、しばらくするとメルが転んだドワーフの少女を助けていた。


「転んだ? ケガはない?」

「だいじょぶ~。追いつくから~先に行って~」

「わかった。先に行くよ」


 転んで泣いてた女の子を慰めてただけみたいだね。メルなら後からでも追いつくだろうから、ボクは先へ進む。

 逃げる人質の最後尾とすれ違い、さらに進むと、正面に開いた穴の向こうに倉庫が見えた。

 よかった。まだ戦いになっていない。


「ダンド! エルフ側は開放できたし、ドワーフ側の人質も全員逃げたよ」


 とりあえず状況を伝えながら、倉庫内へ飛び込む。

 人質も多かったせいか、ここはかなり広く扉も大きいな。

 扉の向こうの通路も広いから、一度に沢山の兵士が雪崩れ込んできそうだ。


「よっしゃ。これで気兼ねなく戦えるぞい」

「イヤイヤ、戦うのが目的じゃないからね。もう少しだけ逃げる時間を稼げばいいよ」


 大盾を構えるドワーフ達の背後に回り、肩に掛けた新兵器バレットライフルを持つ。


「奴らは待ってはくれんぞ。見よ」


 盾の隙間から通路をのぞくと、二重に盾を構えた兵士達が遠くからじりじりと接近してるのが見えた。


「石弾を撃ったのじゃが、この距離では通用せんかったわ」


 石弾を撃つバレットランチャーでは遠距離の盾は抜けないだろうね。

 ボクは膝立ちで新兵器バレットライフルを構える。

 でも金属弾を使ったこの『銃』なら!


 トーマが言うところの『銃』であるこれは、一種の魔道具化されているので、魔法の杖のように土魔法の発動を効率化してくれる。

 銃の握りの部分から魔力を流すと、銃身の弾丸装填部分で土魔法『石爆(ストーンブラスト)』が発動する補助をしてくれる魔方陣を描いた。

 普通の杖のような汎用性は無いけど、土魔法が使えるものならば狙撃が楽になるはずだった。


 ところが実際には、使えるのはボクとトーマだけ。他のノーム仲間には今までのバレットランチャーまでしか扱えなかった。

 このバレットライフルは一見すると土魔法の概念から離れすぎていて、うまく魔法が発動できないらしい。

 バレットランチャーに慣れてくれれば、いずれ扱えると思うけど。


 そんな使い手を選ぶ武器だけど、それだけの価値はあるはずだよ。

 ボクはバレットライフルを構えたまま、狙いを定める。


 兵士たちは隙間なく盾を並べて、それを崩さないように慎重に進んでくる。

 しかたない。この銃の性能を信じて、目標は大盾を構えた中央下側の兵士に定める。

 十分に魔力を高めて土魔法発動のイメージをする。

 そして次の瞬間、トーマ流の呪句(スペルワード)と共に引金を引く。


発射(シュート)!」


 この瞬間、銃身内部の金属弾は土魔法で押し出され、螺旋が切られた銃身内部を回転しながら進んでいるはず。

 トーマが言うには、このライフリングで回転力を与えられた弾丸はぶれずに直進する。

 特製の徹甲弾は狙い(あやま)たず、中央の兵士の持つ大盾に命中し、表面を鉄で覆われた盾を貫く。


「ぐぉ!」


 中央の兵士が倒れ、隙間なく掲げられた盾の壁が崩れる。


「いまだよ、みんな!」

「「「石爆(ストーンブラスト)!」」」


 仲間のノーム達が盾の壁が崩れた部分に向けてバレットランチャーを撃つ。


 ガン! ガン! 「ぐわ!」

 バレットライフルより命中精度が低いから、狙いがそれて盾に当たるものも多いけど、いくつかは崩れた盾の壁の内部へ飛び込んでいく。


 さらにボクは左右の兵士にもバレットライフルを撃つ。


「ぐぉ!」


 倒れていく兵士達。向こうは大混乱だね。


「ばかもの! 怯えるな! 一気に進むのだ!」


 かなり後ろから指揮官らしき声が聞こえるけど、傷を負って倒れた兵士を踏み越えて突撃してこないよね。


「おまたせ~」

「大丈夫か? みんな」


 ここで、途中で分かれたメルとトーマが到着した。


「メル、この距離なら煙幕団子と催涙団子だ!」

「ほ~い。まかせて~」


 メルは煙幕団子と催涙団子を次々に投げる。

 それらは壁や天井に当たって炸裂して、炭や香辛料の粉末を撒き散らす。


「ウィンドブラスト!」


 トーマの唱える『突風』の風魔法が粉末を兵士達に方へ送り込んでいくと、むせかえる兵士達のうめき声で通路が満たされていく。

 同時に炭の微細粉末が漂うことによって、通路の先が見えなくなった。


「トーマ、これじゃ狙撃できないよ?」

「いいんだ。この間に時間稼ぎの壁を作るぞ」


 トーマは、クラフト倉庫から大岩を出現させて、扉の前を塞ぐ。

 なるほど、隙間はあるけど下手な城壁よりも頑丈だ。

 しかも、天井があるから乗り越える事もできないわけだね。


「よし、もういいだろう。逃げるぞ、みんな」

「ここなら有利に戦えそうじゃがな」

「いや、ダンド殿、トーマ君の言う通りだ。人質を逃がす目的は達したんだ。ここで戦う意味はないよ」

「むう、しかたない。残念じゃが、ここは引こう」


 トールさんがダンドを諌めている。ダンドも兵士達相手に戦いたかったんだろうね。


「まだまだ戦いは始まったばかりだから、力を振るう機会はあると思うよ」

「そうじゃな、奴らの総督とやらにワシらドワーフの怒りを見せ付けてやるわい」


 ボクの言葉にダンドは握りこぶしを作って答える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら↓ポチッと1クリックお願いします m(__)m
小説家になろう 勝手にランキング

小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。