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3-09 合流

「ダンド、このまま鉱山都市内へ侵入するのか?」

「うむ、まずは潜伏した仲間と合流せねば。仲間は隣接する旧都市の廃坑に潜んでおるから一度地上にでるか、または隔壁を越えて都市内へ侵入するかじゃ」


 ダンドは地下通路の分岐を迷いなく進む。

 いままでにもいくつかの分岐を過ぎてきたが、ダンドには複雑な地下の通路配置が記憶できているようだ。


「それなら地上にでるのはナシだな。俺なら隔壁をこじ開けられるだろ」

「うむ。そう言うと思うとった」


 ダンドも俺のスキルを当てにしてたみたいだ。

 そのままダンドの案内で進んでいくと、なにやら前方から物音がするような……。


「おい、ダンド なにか聞こえないか?」

「む……、たしかに……、何か音がしたようじゃ」

「前から金属がぶつかる音が聞こえますモ!」


 シアが警告を発する。最後尾なのに良い耳をしている。


「注意しながら進もう」

「そうじゃな。魔法の明かりは布を巻いて弱くするんじゃ、シアも松明を盾の影に」

「了解だよ」

「分かりましたモ」


 自分達の明かりをギリギリまで暗くして進んでいくと、前方の曲がった通路の影から、ほのかな明かりが見える。

 それと共に金属音が俺の耳にも聞こえてきた。


「明かりじゃと?」

「ともかく行って見よう。これは戦闘音みたいだぞ」


 俺達は大きな足音を立てないようにしながら、出来るだけ急いで進む。

 その時、オーガのものとおぼしき叫び声が聞こえる


「ウガァァ!」

「うわっ」


 何者かの悲鳴と壁に叩きつけられるような音。


「!」


 その声を聞いたメルがいきなり走り出す。


「おいっ、メル!」


 メルはダンドまでも追い抜いて、先頭に出るとドンドン進んでいく。


「なんじゃ、何を焦っておる?」

「俺達も急ぐぞ!」


 メルが通路を曲がった次の瞬間。


「とうさまっ!」

「「「なにっ!」」」


 メルの叫びと俺達の驚く声が響く。

 慌ててメルを追った俺達が見たのは、地面に倒れたノームの男性と、三体のオーガと対峙する二人のドワーフの後ろ姿だった。


「とうさま~」


 再び、父を呼ぶ声が響き、メルは倒れた男性の下へ走る。


「お前たち、ワシが手を貸すぞ!」

「その声はダンドか?」

「たのむっ!」


 オーガと戦っているドワーフ達に振り返る余裕はない。

 三対二の劣勢ではオーガを押さえきれていない。


「ストーンバレット!」


 フリーなオーガの一体が、ドワーフを側面から攻撃しようとしているところへ石弾を撃ち込む。

 石弾はオーガの腕に当たり、武器の棍を取り落とさせる。

 武器を失ったオーガに、ダンドがウォーハンマーで突撃する。


「ウゴォッ」


 突撃の勢いをのせたウォーハンマーがオーガの顔面に炸裂して、さしものオーガも吹き飛ぶ。


「ウガッ」

「ウゲッ」


 残り二体のオーガにも俺とノエルのバレットランチャーが次々と撃ち込まれ、その隙を突いたドワーフ達の攻撃で倒れていった。


「とうさま~、とうさまぁ~」


 意識を失い倒れているノームの男にメルが取り縋って泣いている。


「落ち着くんだメル。傷は深くない」


 メルの父親らしきノームに駆け寄りながら、メルに声をかける。


「大丈夫だよ、メル。トーマの言う通りだから、ボクにトールさんの傷を見させてくれ」

「うん……」


 ノエルも声をかけると、やっとメルは落ち着いたのか父親から離れる。


「脇腹に棍を打ち込まれたんだね。頭の傷は壁に激突した時のものだから深くはなさそうだよ」

「頭の傷が浅いのは良かったな。あとは肋骨が折れたりしてなければ良いが」

「ボクの見立てでは骨は折れてないけど、何本かにヒビは入っているね」

「とうさま~いたいの~」


 ノエルの診察では生死にかかわる傷でなさそうだが重傷には違いない。


「意識を回復させるよりも先に安全な場所に移動したほうがよさそうじゃぞ」


 ダンド達ドワーフが周囲を警戒してくれているが、また魔物が出るかもしれない。

 慌てて俺達は、シアの時に使った担架の用意を始める。


「一応、頭を打ってるから、できるだけ体を揺らさないように運ぼう」

「メルもはこぶ~」


 ノエルと俺が一度ずつ回復魔法をかけてから、担架に乗せる。

 担架を運ぶのはシアと俺だ。一応、メルも横についている。


「ダンドよ。仲間が潜伏している坑道はこっちだ」

「うむ。行こうぞ、トーマ」


 ドワーフの一人がダンドに声をかけ、案内してくれるらしい。

 暗闇に強いドワーフ三名のうち、ダンドとその一人が前衛で、残る一人が後方を警戒しながら進む。

 ノエルとアーヤは明かり持ちと支援担当だ。


 ドワーフ達の案内で俺達は地下通路を進む。

 その先にはメルの母親もいるはずだ。



────────────



「かあさま~、とうさまがたいへん~」

「メル! なんで~! えっ、ああ、トール!」


 メルの母親らしきノームの女性が(メル)の姿に驚きながら、担架に乗せられた(トール)にも驚くというパニック状態だ。


「セルカさん。トールさんがオーガに殴り飛ばされて怪我をしたんだよ。ボクとこのトーマが応急手当はしたけどね」

「ああ、ありがとう。トール、すぐに癒してあげるわね」


 ノエルが母親のセルカさんに説明すると切迫した命の危機ではないと理解したのか、安堵する表情を見せた。

 自ら癒すと言うからには回復魔法を使えるのだろう。俺とシアは担架をそっと地面に降ろす。


「大地を巡る魔素(マナ)よ、我が身を巡れ、巡れ、――巡れ、巡れ。其は(そは)生命(いのち)煌き(きらめき)となりて、この身を(いや)せ。治癒(ヒール)


 セルカさんが祈るようなポーズで魔力を長く循環させた後に治癒を発動する。輝く両腕でトールさんの胸に触れると光は胸に吸い込まれていく。

 ずいぶん長く集中したせいか両腕から放たれる光も強い。俺やノエルの使う回復魔法よりも、かなり効果は高そうだ。


「いやして~」


 メルは両手で父親の頭をなでている。

 ちなみにセルカさんが回復魔法を唱える間、メルも同じように祈りを捧げるポーズをとっていた。


「……う、う、ううぅ。……ここは? オーガは?」

「とうさま~」

「トール、よかった~」

「えっ! メル! これはいったい?」


 気が付いたら、里においてきたはずの(メル)が目の前にいるんだから驚くよな。


「ふう、ともかく大事にならなくて良かったよ」

「そうじゃな。ずいぶん時間をかけたが、ワシもなんとか役目を果たせたようじゃ」

「ノエルにダンド殿! 里へは無事にたどり着けたのですね」


 ノエルと帰還したダンドの姿にもトールさんは驚く。


「うむ。ノームの里まではかなり苦労したがな。ここに戻るのは早かったぞ。このトーマのお陰でな」

「トーマ……さん?」

「はじめまして、トーマです」

「色々と複雑だから、ボクが説明するよ。このトーマは――」


 どうやらノエルが俺の事を皆に説明してくれるらしい。

 自分のやったことや、チートを分かりやすく解説するのも難しいから任せてしまおう。



────────────



「どうやら、私達ノーム族はトーマさんに救われたようですね。改めて御礼申し上げます」

「ありがとうね~」

「「「ありがとう」」」

「トーマ、ありがと~」


 トールさんは丁寧なお辞儀で感謝を示してくれている。お辞儀後に脇腹を押さえているから、まだ痛むのだろう。

 骨のヒビは治癒魔法一発では完治しないみたいだから、無理しなくていいのに。

 それに比べると、母親のセルカさんは割りと気楽な感じだが嫌な気分はしない。なるほど、メルの口調はセルカさんゆずりなのか。

 周囲のノーム達も感謝の言葉をかけてくれる。

 メルも釣られて、お礼を言っているが、君は俺と一緒だったでしょ。


 しかし、父親のトールさんもそうだけど、母親のセルカさんも若いな。体が小さい事もあって、日本人なら高校生の若いカップルに見えてしまう。

 両親二人や若いノーム達はふわっとしたボブカット風の髪形が多い。なんか純朴な高校生集団の中にいるみたいだ。


「儂らドワーフ族も感謝しますじゃ」


 ダンドではなく、長老格と思われるドワーフが感謝の言葉をかけてくれた。

 この人はドルトンと呼ばれていて、この場のドワーフのまとめ役らしい。

 周囲のドワーフ達も頭を下げてはくれたが、あまりよく分かってはなさそうだ。


 しかし、男のドワーフ達は老いも若きもヒゲモジャで年の違いがよくわからん。

 たぶん、髭が長くて、髭に覆われてない部分に皺が多いのが年長なんだろう。

 数人、髭はたっぷりでも頭はハゲているな。これは年齢に関係なさそうだ。まあ、ハゲは個性ということで良いか。


 対して、少数のドワーフ女性はややずんぐりしてるけど髭はなかった。合法ロリというほどではないが、ノーム族同様に若く見えるタイプだ。

 俺は少し安堵する。恐ろしい事にファンタジー作品によっては、ドワーフ女性に髭があるという設定も存在するからな。


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