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2-04 海へ

「ふう、今日はいい天気だ。海で泳げたら最高だな」

「ふぉぉぉ、う~み~」


 コルニア村を後にした俺とメルは、川沿いに南の海岸を目指していた。

 半日程度の距離らしいので、さほど急がずに周辺の探索もしながら進んでいく。

 欲しい素材もあるし、どういったものがあるのか把握しておくことは必要だ。


 この辺りにはノームの森で見なかった植物も多い。特に樹木は傷をつけて樹液なども確認しておく。

 探しているのはゴム、または代用となりそうな樹液だ。

 ノームの森での探索では、接着剤になりそうな樹液や少し甘い樹液しか見つけられなかったからな。

 ゴムに似た樹液が得られれば、色々使い道がある。


 他にも繊維の素材になる植物が大量に手に入るといいな。

 コルニア村ではアーヤ救出の礼にと服や布地、糸なども個人的に貰っていたが、繊維素材はあればあるだけ役に立つ。

 メルは狩りがしたいのだろう。弓を肩に掛けて周囲をキョロキョロと観察しながら歩いている。


 そうこうしていると粘つく白い樹液を出す木が何種類か見つかった。

 いいぞ。傷の下に竹筒をくくり付けて集めておこう。


 ……ん、なんか指が痒くなってきたぞ。

 もしや……、これ(うるし)の仲間なのか?

 粘つく樹液の木の中の一つはアレルギー反応を起こす(うるし)の近縁種みたいだ。


 指が痒くてたまらん。


「かゆーい!」

「だいじょぶ~?」


 食用目的ではないので確認不足だった。『分析』してみると確かに弱い毒の反応がある。

 かきむしるのはよくないので、『治癒魔法』を試してみる。

 魔力を循環させて治療をイメージすると手に暖かい力と光が集まってくる。

 その光を患部にあてると、すんなりと痒みは治まった。


「ふう、ひどいめにあった」


 まあ、(うるし)も有用な植物には違いない。素手で触らないように気をつけよう。

 幸い、他の樹液の木の中にゴムの代用に使えそうな木も見つかった。

 川沿いに移動しながらの探索なので広範囲には探せなかったが結果は上々だ。


 山芋やタロイモもどきも見つけることが出来たし、新しい香草なども見つけることが出来た。

 村の食事がおいしかったので、おばちゃんに島で自生する香草を教えてもらったんだ。

 人族の方がノーム族より食へのこだわりがあるようで、知らない種類を教えてもらうことができたし、少し分けて貰えた。


 俺も日本では料理する方だったけど、スパイスについては粉で瓶詰めになっているのが普通だったので、原形では見分けられない。

 あっ、あれは! 小さな赤い実を見つけた。

 これはベランダ菜園で育ててたので分かる。唐辛子の仲間だろう。

 いわゆる日本の鷹の爪と呼ばれる唐辛子より小さいが、辛さと大きさは関係ないので油断できない。

 少しちぎって舌に乗せてみる。ん、あまり辛くないか?


「それおいし~?」

「うーん、ん、ん、ん、ヒィィー!」


 メルが問いかけてくるが答えるどころではない。焼けるような辛味が舌を突き刺してくる。


「こりゃたまらん! ゴフッ! ゲホッ、ゲホッ!」

「あははは~」


 竹の水筒から水をがぶ飲みするが、慌てすぎてむせる。

 俺の醜態にメルは笑い転げている。

 これはハバネロ並みじゃねえか。

 道理でおばちゃんが教えてくれた香草に含まれないはずだよ。

 料理に使えないこともないだろうが、入れすぎ注意だな。


 その後、探索の途中で、川の水が分岐して流れ込む湿地帯を見つけた。

 そこでは(あし)のような植物が大量に生えていたので収穫する。


 ここの地面には枯れた葦や他の植物が山のように堆積しているが、そこに妙な痕跡を見つけた。

 地面に一メートル弱の幅で、何かを引きずったような跡が続いている。

 足跡はないので大型の生物とも断定できないなぁ。

 いやな予感がするし、ここで寄り道ばかりしてられないので早々に退散する。


 さらに南下していくと川幅がだんだん広くなってきた。そろそろ海が近いかもな。

 おや、数羽の水鳥が餌を探して泳いでいるのが見える。いい獲物になりそうだ。

 メルはすでに弓を構えている。

 俺も慌てて弓を準備していると、水鳥の泳ぐ下に大きな黒い影が迫る。


 ザバァァッ! 三〇センチ近い水鳥がいきなり水中に引きずり込まれる。

 バシャ、バシャ、バシャ! 水鳥は派手にもがくが水中の何かは逃げることを許さない。


 やがて、水鳥の抵抗が弱っていくとともに、水中の影の姿が見えてくる。

 デカイ! かなり大物の魚だ!

 一メートルは楽に越えてるぞ。


「お~メルよりおっき~」

「よし! あいつを狙うぞ」

「メルにおまかせ~」


 俺とメルは大魚を狙って弓を撃つ。

 水鳥を引き込むために水面に近づいてのが運の尽き、大魚は二人の矢を打ち込まれる。


 ガキン! なんと、メルの矢は弾かれる。どんだけ硬いウロコしているんだ。

 俺の大型の弓矢で、やっと突き刺さったが、まだ暴れている。

 食べる獲物に毒矢は使いたくないし、もっと撃ち込んでみるか。


 暴れる魚に弓で狙いをつけていると、メルが大きめの石を抱えてきた。

 そして石を両手で頭上に掲げると振りかぶる。


石爆(ストーンブラスト)~」


 メルは両手で石を投げると同時に土魔法を発動した

 ええっ、それってアリなのか。だが確かに魔法は発動した。

 石が魚の頭部に直撃すると、魚は動きを止め、水面にひっくり返る。


「やった~」

「よし! 魚と水鳥で一石二鳥だ」


 しかし、土魔法を石を投げるのと同時に発動するなんて、かなり高等技術じゃないのか。

 魔法の発動地点とタイミングがずれたら、うまくいかないはずなんだけどなぁ。

 さすが土魔法が得意なノーム族の天才なだけある。


 その後、苦労して水から大魚を引き上げる。もちろん魚が咥えた水鳥も回収できた。

 うーん、こいつは熱帯の巨大魚ピラルクに似てるか? いや、そうでもないような……。

 異世界だし、ピラルクにしても食ったことはないからな。

 うまいらしいけど絶滅危惧種だったはず。

 水鳥は鴨に似てるかな。こちらもうまそうだ。

 ついてるな。鴨が葱ならぬ大魚をしょってやってきた。

 今夜の夕食が楽しみだ。


 獲物をクラフト倉庫に収納して、再び川沿いを下っていく

 やがて遥か前方に青い海と磯が見えてくる。


「おー海が見えてきたぞー」

「メル見えない~」


 メルの身長だと俺より見える距離が短いからな。

 メルを背後から抱き上げると俺の肩に乗せてやる。幼稚園児サイズだし楽勝だ。


「みえた~あれがうみ~?」

「そうだぞ。はじめてか?」

「うん、でっかいね~」

「そうだな。きれいな海だ」


 目の前に広がる海は青く透き通っていて美しい。

 河口付近は砂が堆積して小さな砂浜になっているが、少し離れれば磯が広がっているな。

 いい釣り場になりそうだし、貝類も取れそうだ。


 村で聞いた話では東に大きな砂浜が広がっているそうだから、海岸を探索しながら向かうことにする。

 海岸には打ち上げられた流木が大量に転がっている。

 乾燥したものはいい燃料や素材になるから拾って収納しながら歩く。


 途中、海岸沿いの崖の上に竹林の広がる場所もあった。あれも重要な素材だな。後で大量に取りに来よう。


「きれいな貝殻あった~」

「へぇ、ピンク色で綺麗だ」

「トーマの貝殻、あんまりきれいじゃないね」

「俺は大きいの狙いだから」


 貝殻集めは、海での子供の遊びの定番だよな。

 おれは素材収集目的だから、大きさ優先だ。


「ふぉぉぉ! あれすご~い」


 メルが何かを見つけたようだ。

 タタタッと走っていくと、なにやら大きな貝殻をかぶって帰ってきた。


「でっかいよ~」

「おお、こりゃデカイな。シャコガイか」


 ヴィーナスが乗ってる絵で有名な、あの貝によく似てる。さすがに、こいつはそこまで大きくないが。

 この貝も食えたはずだが、深く潜らないと捕れないだろうな。


 東に歩いていくと、やがて広い砂浜が見えてきた。

 こりゃすごいな。ずっと先まで続いているし、この辺は遠浅の海になっているようだ。

 よーし今日は、ここをキャンプ地とする!


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