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1-16 ゴブリンの洞窟2

 興奮するゴブリン達がオーバーハングの岩の下へと向かってくる。

 だが岩の下に到着するタイミングこそ最大のチャンス。


 今回は最大の魔力で魔法を使う必要がある。

 俺は臍の下の丹田に意識を集中して呼吸を整える。

 そのまま瞑想を始めるとチャクラが回り、魔力が循環を始めるイメージが自然と脳裏に描かれる。

 大きな魔力が生まれ心臓へと流れ込むのが分かる。魔力は心臓から体の前で組んだ両手へと流れていく。

 やがて体を巡る魔力が最大に高まった瞬間、俺は地面の魔法陣ロープに両手をつき、スキルを発動する。


「スキル神粘土発動!」


 その瞬間、魔法陣ロープに沿ってオーバーハングを構成する岩の根本部分が軟らかな粘土へと変化する。

 ゴゴゴゴゴ……

 岩からは振動が伝わってくる。

 そして粘土部分が重みに耐えかねて裂け始める。

 ガガ、ガガガガ、ガガガガガガ……

 粘土化していない岩本体にも亀裂が走り始め、やがて亀裂は一つにつながり、岩のオーバーハング部分を下の川原に崩落させる。

 ガガガガガ、ドドーン!


「グゲェェ!」

「アガガガァァ!」


 崩落する岩は一つの塊でなく、いくつもの岩が次々と落ちていく。

 岩石群の崩落に半数程度のゴブリンが巻き込まれて叫びを上げる。

 しかも、この周囲は川幅が非常に狭くなっている部分。崩落した岩は狭い水の流れをせき止めてしまう。

 周囲には崩落による土煙が立ち込める。


「よし、奴らが混乱しているうちに壁を立てるぞ!」

「了解」

「はい」

「たてる~」


 みんなの返事を待つことなく、俺は台座をくみ上げる。

 四角の枠に支柱を差し込む穴を開けただけの単純な構造だ。

 そこに用意した竹束を差し込めば、あっという間に組みあがる。

 四人で協力すれば事前の練習通り一分も掛からずに竹束の壁が出来上がりだ。

 そうこうしているうちに土煙は薄れてきているが、まだゴブリン達は崩落の混乱から立ち直っていないようだ。


「よし、ここからは本気で攻撃してくれ」


 そう、先ほどまでの攻撃は罠、ゴブリン達をおびき出すための誘いにすぎない。

 でもホブゴブリンの一体はふらついているな。ちゃっかり毒矢で傷を与えていたのか。

 みんなの魔法や弓矢で攻撃で残ったゴブリン達も次々と倒れていく。


 ドガッ、ドガッ!

 ゴブリン達は投石で反撃もするが竹束の壁に当たるだけだ。

 これはシンプルだが火縄銃の弾を止める事もできたといわれる代物。投石程度ではまったく効果はない。


「……ゴウググ、ググウ、ググウ、グルガァァ!」


 そんな時、竹束の真ん中に赤い光球が生まれ、急速に巨大化する。


「火魔法だ、伏せて!」


 ノエルの叫びにみんなが伏せる。

 ドドーン!

 次の瞬間、光球は破裂して派手な炎を上げる。

 ゴブリンのフレイムブラストか? あのゴブリンリーダーは魔法使いだったようだ。

 だが竹束の厚みを打ち破るほどの威力はなかった。表側がえぐれているが、一発で壊れるような事はない。

 枯れていない青竹なので、まだ燻ってはいても燃え上がってはいない。

 俺はアーヤに習った水魔法ですばやく水をかける。

 ついでに竹束全体にも水をぶっ掛けておく。当然俺達もずぶ濡れだが気にしてる余裕はない。


「リーダーを狙え!」


 俺の指示を受けるまでもなく、ゴブリンリーダーは弓で狙われていた。

 しかし、リーダーの前には大楯を構えたホブゴブリンが守りを固めている。

 矢は大楯に弾かれてリーダーに傷を与えられない。


「ノエル、背後の断崖に土魔法だ!」


 ノエルに声をかけつつ、俺もリーダー達の背後の断崖にストーンブラストを放つ。

 川原の岩が弾かれるように飛び出して断崖に衝突する。衝突した岩は勢いを減じつつも跳ね返り跳弾となる。

 ゴブリンリーダーも再びフレアブラストを放ち、竹束の表面を砕く。

 水で濡らしたおかげか火がつく気配はない。

 俺とノエルは交代で途切れることなく魔法を放つ。

 やがて俺達が放つストーンブラストの一弾が跳弾となり、ホブゴブリンを背後から打つ。


「グボォ!」


 ホブゴブリンはたまらず叫び声を上げて膝をつく。

 次の瞬間、盾の影からむきだしとなったリーダーにメルとアーヤの毒矢が突き刺さる。


「グゲェェェ!」

「グゴォォ!」


 毒が回るまでもなく、頭部に矢を受けたリーダーが倒れる。続いてホブゴブリンにも毒矢が突き立った。


「ゲァーゲァーゲァー」

「ゴフォーゴフォー」


 リーダーが倒れる姿を見たせいか、残った数体のゴブリン達は情けない声を上げると次々と洞窟へ逃げていった。

 毒矢で倒れているゴブリン達には止めの矢が撃ち込まれる。

 そんな中、崩落でせき止められた川はゆっくりと水位を上げていく。



────────────



 ドド-ン、ガガーン!

 みんながゴブリンの洞窟を警戒し続ける中、俺は魔法陣ロープを使って崖から岩を落とし続けていた。

 その目的はここに土砂ダムを作って、ゴブリンの洞窟を水攻めにすること。

 奴らのホームである洞窟内に侵攻することなんてとてもできない。


 これで地下迷宮の魔物全てを駆逐することはできないだろうが、洞窟の周囲を使い物にならなくすることで、この辺り一帯の安全を確保できれば十分。

 俺はある程度の量の土砂を落とすと、崖下におり土砂ダムの隙間をスキルで塞ぎ始める。

 すでに土砂ダムの高さはゴブリンの洞窟の高さをわずかに超えるぐらいまで積み上がっている。


 スキルで塞いだことで隙間から流れ出していた水は止まり、土砂ダムの水位がどんどん上がって行く。

 土砂ダムの向こう側の川原はすでに水没を始めている。

 この調子なら一時間も経たずに洞窟に水が流れ込み始めるぞ。


 俺達は崖から降りて洞窟の前で警戒を続けながら、洞窟の高さまで水が溜まるのを待ち続ける。

 途中一度、数匹のゴブリンが穴の奥から覗いてきたが、魔法と弓の集中攻撃を浴びて、再び奥へと退散していった。


 待機している間に、ホブゴブリンが持っていた大盾やリーダーの杖、そして魔石などを周囲から回収する。

 そうこうしているうちに足元まで水が上がってくたので、土砂ダムの上にまで退避して様子を見続ける。


 やがて、ゴブリンの洞窟の中に水が流れ込み始め、その量はどんどんと増えていく。

 洞窟からはゴブリン達の叫び声がかすかに聞こえてくる。

 しかし洞窟へと流れ込む水の勢いはどんどん激しくなっていく。今から水に逆らって外に出るのはかなり困難だろう。

 そのまま洞窟の様子をしばらく眺めていると、突然激しい地鳴りが聞こえ始め、地面が数度大きく揺れる。


 ドドドドドド……、ドドーン、ガガーン!


 流れ込む水の重量で、洞窟のどこかが落盤したようだ。

 それを証明するかのように、洞窟は完全に水没してしまい、それ以上の水の流れ込みが止まってしまう。

 水没した上に、あの規模の落盤を起こしては、もはやこの洞窟を再利用することは不可能だろう。

 落盤の先の迷宮部分は無事かもしれないが、この周囲の地下は水浸しで新たな洞窟を掘る事は難しいはずだ。


 これで、もはや迷宮からゴブリン達が湧き出してくることはない。

 すでに外に出たやつらを駆逐してやれば、俺達の完全勝利だ。


「やったぞ!奴らはもう出てこれない」

「ふぉぉぉ、やった~」

「ボクらの村の安全も確保されたわけだ」

「やっと村に戻れるんですね」


 俺とメルは普通に喜んでいるが、ノエルはクールだな。

 アーヤはよほど嬉しいのだろう、涙ぐんでいる。


 土砂ダムによる水攻め作戦がうまく行ったのは運が良かったな。

 洞窟の入口がもっと高い場所にあったらダムの高さが足りなかった。

 しかもゴブリン達は洞窟出口の強化を始めていたように見えた。

 いずれは水没の危険に気づいて穴を断崖の上に掘りなおしていたかもしれない。

 先日偵察した時に地形を確認していたからこその作戦だったが、時間を掛けていたら間に合わない可能性もあった。


 ところで、せっかく作った土砂ダムだが、このまま放置すると決壊の危険があるので、土砂を『石化』して頑丈にする。

 さらにダムの端に水路を作って下流に水を流すようにしておいた。

 この作業で俺のMPが限界に達したようだ。頭がクラクラする。

 今日の戦闘でもレベルアップしていたようだが、それでMPが全快したりはしないのだ。

 ホント色々とギリギリだった。


 これでノエルとメルにはノームの集落へ戻って、ゴブリン洞窟の封鎖成功を長老へ報告して貰う。

 ノーム族のみんなもこれで安心できるだろう。

 そしてアーヤが早く村に帰りたい様子なので、俺はアーヤをコルニア村に送ることにする。


「さあ行こう。コルニア村へ」

「はい。ありがとうございます」


 異世界初の人間の村か、何が待ってるんだろうな。



────────────

名前 : 鬼界 冬馬

種族 : 人族

状態 : 正常


Lv8

HP : 650 / 1020 ( 800+220)

MP : 1560 / 8120 (8000+120)


スキル

 言語理解 Lv3

 環境適応 Lv2

 身体強化 Lv2

 槍術 Lv2

 斧術 Lv1

 投擲術 Lv1

 弓術 Lv1

 剣術 Lv1

 魔力操作 Lv2

 土魔法 Lv3

 火魔法 Lv2

 風魔法 Lv1

 水魔法 Lv1

 治癒魔法 Lv0

 工作 LV3

 鍛治 Lv1



継承スキル

 クラフト

  神粘土 Lv4

  精錬 Lv1

  加工 Lv3

  分析 Lv1

  変形 Lv3

  加熱 Lv1

  倉庫 Lv2

  魔道具作成 Lv1

  植物知識 Lv1

  生物知識 Lv1

  鉱物知識 Lv1

────────────


ここで1章は終わり、次回からは第2章となります。


拙作をお読みいただきありがとうございます。


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