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1-15 ゴブリンの洞窟1

 ゴブリン集団を倒した翌々日、俺達は洞窟のゴブリンと戦う準備を終えた。

 先日のゴブリン集団との戦いでレベルは上がっているんだ。強くなったと信じたい。

 さらに武器と魔道具を用意したが、これがうまく行くかはやってみなければわからない。


 戦力は俺にアーヤ、ノエル、メルの四人だ。

 最初は俺だけでやるつもりだったが、みんな強硬に参加を主張してきた。

 この世界では、必要なら女子供でも戦える者は戦うべきという考えがあるみたいだ。

 特にノエルは森の結界から出ていいのかと思ったが、いつの間にか村に戻って長老を説き伏せてきたらしい。


「結界も完璧じゃないんだよ。強い意思をもった戦闘集団には意識を誘導して追い返せない場合があるからね。いずれボクらの村の安全も脅かされる訳だ」

「なるほど侵略目的で進む軍隊などには無効なのか」

「そうだね。この島は今まで平和だったから問題なかったけどね」

「それにもう、この島にも帝国の軍が……」


 やはり、帝国の話題ではアーヤの顔が曇るなぁ。


「そのことより、今は村へ帰ってみんなを安心させる事を考えようか」

「……はい。」


 アーヤは顔を上げてうなずいてくれた。


 俺は新造した槍を握り、突き、払い、打ち下ろす型を繰り返し、使い勝手を確認する。

 これには倒したゴブリン集団が持っていた錆びたナイフ数本を材料に打ち直した鉄の穂先を使っている。

 柄の部分も丈夫な木を見繕ってクラフトスキルで強化したものだ。

 今までの石槍は穂先が短く切れ味がイマイチだったため、突き刺した後に抜きにくく、一瞬を争う戦いでは槍を手放す事になった。

 今度の鉄の槍の穂先は長く剣のように切れ味がいい、突き刺した場合にも抜きやすくなっている。

 俺の力量ではゴブリン相手に無双できるほどではないけども、戦いやすくなるだろう。


 みんなの防具も用意すべきかと思ったが、みんなは動きにくいので鎧のようなものはいらないらしい。

 けっして竹鎧が恥ずかしいのではない、と信じたい。

 まあ彼女達を前衛に立たせるつもりはないので、身軽な方がいいのかも知れない。

 ノームの二人はローブだが、魔法のローブでそれなりの防御力があるそうだ。

 普通の服のアーヤだけには竹で胸甲(ブレストプレート)のようなものを作成した。この程度なら邪魔にはならないだろう。


 さらに用意したキーアイテムが魔法陣ロープだ。


 これは小さな魔石を砕いた砂をスキルで粘土化したロープの材料に練りこんだ。

 さらにロープの端と中央に大き目の魔石を組み込み、魔道言語を書き込んで簡易的な魔法陣としたものだ。

 さすがにロープで囲んだ面がすべて魔法陣となるような凄い効果はないが、ロープを張ればその延長線上に魔法効果を拡大できるようになった。


 もちろん魔法効果を拡大するためには、それに比例する以上の魔力が必要なので簡単には使えない。

 ロープの長さは十メートル程度、今の俺にはこのぐらいが限界のようだ。

 試して見たが、それなりの時間、魔力循環と精神集中が必要だ。

 ノエルに言わせると、それでも一人で使用できるだけ凄いらしい。

 どちらにせよ今回想定する使い方では俺一人しか魔法を発動できない。


 そしてアーヤ、メル、ノエルの三人も共に戦うと主張するので、守りを考えて作ったものがある。

 防御の城壁代わりに、時代劇で見たことがある竹束(たけたば)を十束ほど用意した。

 竹束とは竹を直径三〇センチ程度の円筒状に縄で束ねたもので、戦国時代などに弓矢や火縄銃から味方を守るために使われた防壁だ。

 軽くて運びやすい上に低コストなので便利だったらしい。

 長さ二メートル弱の竹束を立てて並べれば簡単な城壁が展開できる。

 ゴブリンの投石なら十分に防いでくれるはずだ。


 これは俺のクラフト倉庫があるので断崖の上まで簡単に運べるからできる方法だ。

 敵の正面にいきなり城壁を立てるようなものだからスピード勝負で組み立てる必要がある。

 そこで竹束を縦に並べて固定できる組み立て式の台座も用意している。

 台座は折りたためるように作ってあり、一分とかからずに立ち上げて竹束を固定できるようにした。

 また竹束にも工夫して狭間(はざま)という弓で攻撃するための穴を開けてある。

 狭間は内側は広く、外側は狭くして狙いをつけやすくなるように加工してある。


「この前のホブゴブリンの投石はやばかったからな。この竹束の内側から弓で狙うんだ」

「へー、原始的に見えるけど便利だね、コレ。ボクらノームはあまり集団で戦うことないから知らないだけかもしれないけど」

「私の村にも簡単な壁は築かれてますけど、持ち運べる壁なんてすごいです」

「見えないよ~」


 ぴょこぴょこ飛び跳ねながら狭間を覗こうとするメル。

 アーヤ向けの狭間ではメルの身長では合わないよな。


「ゴメン、ゴメン。メル用の穴も開けるよ」


 慌てて、メルやノエルの使いやすい位置に狭間を追加する。


「これで準備は完了したわけだけど、ゴブリンとの戦いでは無理はしないこと。作戦がうまくいかなそうだったら迷わず逃げるんだ」

「わかってる、長老にも念押しされてるしね」

「はい」

「ほーい」


 俺はノエル、アーヤ、メルの返答にうなずく。

 そして俺達は用意した武器と作戦を再確認し、ゴブリンの群れとの戦いへと赴く。


 作戦では洞窟のある渓谷へ断崖の上から向かう。

 弓が使える以上、敵より高所に陣を構えるのが有利。

 ゴブリン達のように川原を丸見えで歩いて近づくなど愚の骨頂だ。

 渓谷の上の森をかき分け道なき道を進むと、やがて対岸の断崖に洞窟が覗ける位置に近づいてきた。

 まだ距離はあるがここからはできるだけ慎重に進まなくてはならない。


 ゴブリンの洞窟は渓谷の川原から五メートルぐらい上がった断崖の中腹に穴を開けている。

 いつの間にか断崖には洞窟まで階段上に石が並べられ、その周囲には城壁のつもりか雑な石組みが組まれている。

 なるほど、奴らも着々と勢力を広げる準備をしているという訳だ。


 だが、対岸の洞窟の真正面に陣を組むことはない。

 俺達はさらに下流側二十メートル程行った場所にある岩の突き出たオーバーハング部分に向かう。

 そう、ここは俺が先日偵察した場所である。俺は地面に腹這いになり、匍匐前進してオーバハングの上に進む。

 注意しながら、そっと眼下の川原を覗くとやや離れた位置の洞窟とその前のゴブリン達の姿が見える。


 そこにはゴブリン十数体、ホブゴブリン四体、さらには骨製の胸飾りなど装飾品に身を固めた上位のゴブリンと思われる奴がいた。

 上位のゴブリンは体格はホブゴブリン程ではないが、小柄な人間の大人程度の体格で黒くしわがれた杖を握っている。

 杖持ちは指揮官か、または魔法を使うのか気になる。

 そのまま見ていると、奴はしきりに他のゴブリンを怒鳴るように声を上げている。リーダーであることは間違いないだろう。


 俺は伏せた姿勢のまま、そっと後ずさる。そして見た状況をみんなに伝えると作戦の準備に掛かる。


 まずクラフト倉庫から準備した竹束と台座を下から見えない位置に取り出す。

 これを組み立てれば下から気づかれる事は間違いない。作戦決行時まで伏せたままだ。

 他にも用意した弓や武器も並べて、いつでも使用可能な状態に並べる。そして最後に魔法陣ロープを取り出す。

 俺は魔法陣ロープを断崖のオーバーハングになった岩の根本部分に広げる。

 背後のみんなに作戦準備完了を告げると結跏趺坐(けっかふざ)の姿勢をとる。


「始めるぞ!こちらにおびき出してくれ!」

「了解だよ」

「はい、やります」

「いくよ~」


 ノエルは朗々とした声で土魔法の詠唱を始め、アーヤとメルは少し離れた断崖の端に立って弓を狙いをつけ始めた。

 彼女達の派手な行動にゴブリン達も当然気づく。


「グゲ?、ギャギャギャ!」

「ゴゥッ!ガウガウグア!」


 洞窟前から十体程度のゴブリン達がこちらへ向かって眼下の川原を走ってくる。

 それに向かってノエルの土魔法、アーヤとメルの弓が放たれるが、ほとんど命中していないようだ。

 このまま奴らが断崖の下まで来れば投石が始まってしまうだろう。


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