表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/64

1-14 ゴブリン集団の脅威2

 ゴブリン達からアーヤを救った翌日、俺は一人でゴブリンの穴の近くにまで偵察に来ていた。

 ゴブリンの穴から下流側二〇メートル程の所では断崖の上部の突き出した岩がオーバーハングになっており、上から監視するにはもってこいになっていた。

 ここは対岸の断崖の上まで一〇メートル程の狭い川幅になっていて、橋でもかけるならちょうどいい場所だろう。

 もっともゴブリンを排除できればの話だけど。


 やはり奴らは活動を活発化させている。

 穴の前には歩哨とおぼしきゴブリンが二体立っているし、さっきはホブゴブリン含む数体の集団が下流方向に向かって行った。

 そして上流方向にもホブ二体、ゴブリン五体の集団が向かうのを見た俺は、静かにその場を離れ拠点に向かう。

 上流方向の支流付近に俺達の森の拠点があるが、奴らは真っ直ぐ向かうわけではないから十分に先回りできるだろう


 拠点に戻った俺はノエル、メル、アーヤを集めて状況を説明する。

 しかしゴブリンが来るかもしれない事を告げても、誰も恐れていないようだ。

 特にアーヤは悲壮な覚悟を決めた表情で俺を見つめてくる。


「私、たたかいます。早く村へ戻らないといけないから」

「ボクも森に入る魔物を倒すことは禁じられてないからね」

「メルつよい~」


 ノエルも森を守る事は禁じられてないとやる気だし、メルに至っては昨日の兜をすでに装着済みだ。

 この世界の女の子は強いなと感心する。

 こりゃ俺も負けてられない。みんなと迎え撃つ作戦を練り始める。



────────────



 数刻の後、森はずれの小川が流れ出ていく場所にゴブリンの姿が現れた。

 ゴブリンは二体が先行し、その少し後からホブゴブリン二体、ゴブリン三体が追う陣形で進んできている。

 先行する二体は斥候兼おとりのつもりなのだろう。


 先行する二体が森に入る直前で、俺は大木の陰から飛び出す。


「ストーンブラスト!」


 地面から弾ける石がゴブリンに向かって飛んでいく。

 その一体は石をまともに頭にくらって倒れる。

 だが残り一体と後方のホブゴブリン達は怒りの叫びを上げると俺に向かってくる。


「ゴアアア!」

「うわぁー」


 それを見た俺は無様に悲鳴を上げると森へと逃げ帰っていく。

 もちろんゴブリン達がそれを見逃すはずも無く、俺を追って森に入っていく。

 そして森を流れる小川の脇をしばらく逃げつづけた俺は、ある大木の陰に転げるように飛び込む。


 その姿を見たゴブリン達はひときわ大きな叫びを上げて追ってくる。


「ガァアアアア!」

石爆(ストーンブラスト)!」


 小川の対岸から姿を現したノエルが土魔法で先行していたゴブリン一体を撃ち倒す。

 さらに、その脇では弓をつがえたアーヤが矢を放つ。


「グギャ!」


 アーヤの弓は後方集団のゴブリン一体の肩に突き刺さる。惜しくも心臓は外したようだ。

 そして俺も大木の陰から姿を現す。俺の手には、あらかじめ大木に隠していた弓がある。

 俺はすばやくホブゴブリン一体に狙いをつけると弓を放つ。


「ガゥッ!」


 胸を狙ったはずだったが、ホブゴブリンは左腕で胸をかばったため矢は腕に突き刺さった。

 敵の釣り出しには成功した。

 魔法で倒したゴブリン二体、弓で傷つけたゴブ一体、ホブ一体。

 無傷なのはゴブ二体、ホブ一体と、まだ数は敵が優勢だ。


 もはや接近戦となるのは間違いないので弓を捨て、大木の陰から石槍を取り出す。

 その一方、無傷なホブゴブリンの一体が対岸の二人に威嚇の叫び声を上げながら投石を始めた。

 投げ方は下手でなっちゃいないが石はデカイ。当たればただでは済まない。


「ガァァァ!」

「キャッ!」

「アーヤ危ない!森まで下がれ!」


 対岸の二人は森の中へ退却する。

 だが数を減らしてホブの注意を引いてくれただけで十分。

 正面から向かってくるのは無傷なゴブリン二体、俺が弓で傷つけたホブは少し遅れている。


 棍棒を構えて向かってくる無傷なゴブリンの一体に石槍を勢いよく突き刺す。

 ゴブリンは腹に石槍を突き立てられ絶命するが、槍は深く突き刺さりすぎて簡単には抜けない。

 得物を失った俺をゴブリンが棍棒で殴りつけてくる。


「ゴグゥ!」

「うぐっ」


 竹鎧のお陰で怪我はまぬがれたが、痣ぐらいはできそうな痛みが走る。

 俺は腰から自作した短剣を抜くと、ゴブリンの頭部へ斬りつける。


「グキャッ!」


 ゴブリンは頭部を割られて倒れるが、その背後に矢傷を与えたホブが迫っている。


「ゴカァ!」


 再び棍棒での一撃を受ける。だが意外にもホブの一撃がゴブリンの一撃よりも弱い。

 案の定、矢の刺さったホブはフラフラし始めている。

 ずっと後ろではアーヤの矢を受けたゴブリンが泡を吹いて倒れていた。やっと毒矢が効き始めたのだ。


「グブブブゥ」


 短剣でホブに斬りつけると、もはやホブはロクな抵抗をできずに倒れた。

 最後に投石をしていたはずのホブに向き直るが、その時すでにホブは脳天に矢をつきたてられて絶命していた。


「エヘヘ~スゴイ?」


 頭上の声で見上げると、大木の枝の上からメルが顔を出していた。



────────────



「魔石、あつめてきた~」

「ああ、ありがとう」


 竹鎧を外して痣の確認をする俺に、メルが拾ってきたゴブリンの魔石を渡してくれる。

 これで昨日までの分も合わせて、ホブゴブリンの魔石(中)三個、ゴブリンの魔石(小)八個とそこそこの数になる。

 これをなんとか利用できないかな。

 魔石は魔法の効果拡大に利用できると聞いた事を思い出す。


「ノエル、この魔石だけどこれで攻撃魔法を強化できないかな。たとえば何体も巻き込むような大魔法を撃ったりできないの?」

「いやいや、そんな事できたら、みんな大魔法使いだよ。たしかに魔石は込める魔力の助けになる。それは魔力の少ない人には有用だけど、君は魔力は十分だからその使い方は意味がないね」

「そうか。そんな都合よくないか」

「まあ、魔法陣と併用すれば効果範囲を広げる事はできるけど」

「おお、それなら!」

「そうだね。戦闘中にゴブリンの前で魔法陣を書く余裕があれば有効だよ」

「できるか!」


 ノエルの説明にがっくりとする。

 今回はなんとかゴブリン撃退に成功したが、やはり数は脅威なんだ。

 待ち伏せで有利な位置を占めても攻めきれる火力が足りないんだ。

 今使える魔法ではゲームのような範囲攻撃はできないし、飛距離も短いから反撃されやすい。

 けれど毒矢の有効性は確認できた事はよかったな。

 今日偵察した断崖の上のオーバーハングから狙えばかなり有効そうだ。

 ん、待てよ。あのオーバーハングを使えば、もしかしたら……。


「ノエル、魔法陣を教えてくれ!」

「お、なんだい。そんなに血相を変えて」

「もしかしたらゴブリンをどうにかできるかもしれない」

「へぇ、何か思いついたんだね。任せて。しっかり叩き込んであげるよ」


 さっそく、ノエルに魔石利用の魔法陣について教わる。

 魔法陣は基本的に魔石を魔法陣の頂点などに並べる。

 そして魔石を砕いた砂などで間を結ぶ事で魔力を流す線を描き陣を構築する。

 陣に目的の魔道言語を書き込むことで魔法陣の完成だ。


 魔法の杖や魔道具なども基本原理は似たようなものらしい。

 ただし魔石の配合や陣を描く素材など工夫の余地が色々とあるそうだ。

 さらに魔法陣には魔石で囲む面の効果範囲拡大ではなく、魔石を並べた線で構築された効果範囲延長を目的にしたものもあると教わった。


「なるほど魔石を砕いた粉を混ぜるのは魔力を流す回路を書くためなのか」

「"かいろ"がなにかはしらないけど、魔力を流すという目的なのは正解だね」

「魔力が流れれば魔石の粉は必要なさそうだな」

「ミスリルなど魔法金属なら無くてもいいよ。そこまでじゃなくても銀糸で魔石をつないで魔法陣を描いた魔道具なんかもあるし」

「金属によって魔力伝導率が違うのか」

「そうだね。一般的には高価な金属ほど魔力伝導率は高いよ。それと一部の魔物の素材とかだね」


 なるほど、どうやら俺の考える計画は実行できそうだ。

 念のため、考えた計画をノエルに説明して検証してもらう。


「おもしろい!それはとても挑戦的な魔法の使い方だよ!」

「無理か?」

「いや、論理的には可能だと思う。君のクラフトスキルあってこそのやり方だけど」

「よし、これでやってみよう。協力してくれるよな」

「もちろんだよ。クラフトスキルの真価を見せてもらうためにもね」

「たのむよ、みんなもな」

「まかせて~」

「はい、がんばります」


 魔法理論の話に付いていけず、聞き役に回っていたメルやアーヤにも協力を頼む。

 これでゴブリンの群れをぶっつぶしてやる。



────────────

名前 : 鬼界 冬馬

種族 : 人族

状態 : 正常


Lv6

HP : 544 / 700 ( 600+100)

MP : 4570 / 6050 (6000+ 50)


スキル

 言語理解 Lv3

 環境適応 Lv2

 身体強化 Lv2

 槍術 Lv2

 斧術 Lv1

 投擲術 Lv1

 弓術 Lv1

 剣術 Lv1

 魔力操作 Lv2

 土魔法 Lv2

 火魔法 Lv2

 風魔法 Lv1

 水魔法 Lv0

 治癒魔法 Lv0

 工作 LV2

 鍛治 Lv1



継承スキル

 クラフト

  神粘土 Lv3

  精錬 Lv1

  加工 Lv2

  分析 Lv1

  変形 Lv2

  加熱 Lv1

  倉庫 Lv2

  魔道具作成 Lv0

  植物知識 Lv1

  生物知識 Lv1

  鉱物知識 Lv1

────────────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら↓ポチッと1クリックお願いします m(__)m
小説家になろう 勝手にランキング

小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ