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80話

ドドドドドドドッーー

不規則な強弱のついた轟音が空気と鼓膜を揺らす。

降りるに降りれなくなった鈴と日野を背中にくっつけた状態で、レイは冷却魔法と回復魔法を同時に行使していく。

正直、魔力が回復してもらっても体力事態が底を尽きつつあった。

それでも心が折れないのはこれが最後だという言葉が支えになっていたからである。

アイヴィスとディアも同じで、疲労と力不足で顔色が悪いが、瞳の光は鋭い。

レイは険しい顔のまま、ふう、と小さく息を吐いた。


「『全員、聴こえる?』」


『思念伝達』で、全員に言葉を送る。


「『あともう少しだ』」


疲れが滲んだ顔が不適に笑む。


「『頑張ろう。ーー終わったら、お腹一杯美味しいもの食べて、フカフカのベッドで惰眠を貪ろう』」

「『オォッ‼』」


冗談染みた、レイの願望の混じったこの後の予定に、皆が片腕を振り上げ、拳を天に突き出して喚声を上げた。


数分後のことだ。当然、爆発のような音と共に今までよりも高くマグマが噴き上がったのは。

短調だった噴火が最後と言わんばかりに噴き出す。

わわ、と体勢を崩しながらも魔法の維持に勤める。

ビリビリと空気を震わす音が徐々に収まっていき、噴火も勢いが落ちていく。

高く上がっていたマグマがボコボコと音を立てて海面を跳ねさせていたが、それもやがて気泡となってポコンッと最後の泡と一緒に沈黙した。

恐る恐る手を下ろしたレイは、強張った表情でアイヴィスを見る。

顔色こそ悪いが、柔らかい微笑が向けられた。

ディアを見る。

こくりと頷きをもって返答が返された。

最早『思念伝達』する余力すらないレイに変わって、アイヴィスが声高々に皆の勇姿を称え、作戦の終了を告げる。


「『皆、ご苦労だった。ーー危機は回避された‼』」


よく通るアイヴィスの声が、じわじわと浸透していく。

召喚者組と街人たちが顔を見合せ、自分たちの近くで大掛かりの結界を展開していたリティスとアルカナに視線を向けた。

リティスとアルカナは苦笑して小さく頷く。


そして、漸く彼らは歓喜の声を上げるのだった。


ワァァァァァァーー‼


今度は地響きに似た歓声が空気を震わせる。

皆が寄って集って抱き合い、喜びを分かち合う。

その姿を見て、漸くレイも肩の力を抜くことが出来た。

ディアが残していた余力で『転移魔法』を使い、レイたちは数十時間ぶりに地面に足をつける。ーーと同時に、感極まった面々に飛び付かれ、揉みくちゃにされるのだった。

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