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79話

不意打ちに驚いて振り向けば、両脇にフィンの風魔法で浮いて立っていたのは、回復役で残りの面々の補助していたはずの、鈴と日野 斗真の二人だった。青白く、酷く消耗した表情でレイに回復魔法を掛けている。


「鈴、斗真……⁉」


驚愕して声を上げれば、二人は疲労が滲む笑顔を浮かべた。


「あのね、下は、大丈夫、だから」

「逃げなかった街の人たちが、……えっと、『魔力譲渡』って言うんだって? それで僕たちに魔力を有りっ丈分けてくれたんだ。それに結界が得意な人たちがいて、手伝いを申し出てくれて」

「回復魔法の使える人も、いたから、私と日野くんに、こっちの援護に廻っていいって、言ってくれたの」


確かに、下を見れば一般人の服ーー街に住む人たちが増えている。

レイはすうっと、半眼になって殆ど睨むように頭をある方向へ動かした。。

視線の先には、苦虫を百匹位噛み潰した顔をするアイヴィスの姿が。


「……………………アイヴィス?」

「………………………………何で戻ってきているのだろう」

「ふむ。生まれ育った街の愛着心故かの」

「笑えない……」


アイヴィスが未だ嘗て無いほどの死んだ魚の目で遠くを見やった。

ディアも何処と無く楽しそうなのに疲れたように空笑いをしている。

しかし助かったのは事実だ。

避難命令を無視してーーというか、一度避難したはずなのに戻ってきてしまった街人については言いたいことが山ほどあるが、ここは甘えて力を借りることが懸命だろう。

レイは瞬時に思考を切り替え、分けてもらった魔力でアイヴィスとディアに回復魔法を掛ける。

声も掛けずに急に魔法を掛けたので、一瞬二人は身体を震わせたが、直ぐに回復魔法だと気が付いて方の力を抜いた。


「……助かるの」

「ああ。ーーここからが正念場だな」

「ん。いい加減、終わってーー」


欲しい、と言いかけたレイの言葉に被さるように、ドオンッと破裂音に似た爆音と共にマグマが唐突に威力を増す。

何事かと慌て魔法を強化した。

引き攣った顔で魔法展開を維持していると、魔力のぶつかり合いで生じた雑音と共にノエルの声が響き渡る。


『テオ様からの通達じゃ。おそらく、これが噴火も最後となる。皆、最後まで気を緩めるでないぞ』


最後、と言われると人間、火事場の馬鹿力を見せるものだ。

冷静沈着なレイたちは兎も角、結界班である召喚者組+αは俄然やる気を出した。


「よっしゃあ、ヤーるぞぉっ‼」

「「「オォッ‼」」」


奮起の声を上げたのはまさかの淳だ。

それに同調して、残りの面々が結界を張りつつ拳を振り上げる。

ーー冷却魔法組とのあまりの温度差に、レイは達観した瞳でうん、と一つ頷いた。


「俺たちも、頑張ろうか……」

「「「おう……」」」


アイヴィスたちは小さく拳を上げて、控え目に己を鼓舞するのだった。

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