75話
話の腰を折るように、恐る恐る、淳が手を挙げて発言を求めた。
「えーっと、ちょい、いいか?」
「ん。何?」
シュテルクスト鉱石化した雪月花の収穫に取り掛かろうと中腰になっていたレイが顔を上げる。
淳は当惑気味に頭を掻きながら疑問を口にした。
「前にさ、シュテルクスト鉱石は付与が難しいっていってたじゃん? その問題点はどうすんの?」
「私も、一つ聞きたかったの。火山の噴火って、ディアさんは干渉できないの?」
神様でしょ?
細野の邪気の無い問いに、ディアはふるりと首を振って否定する。
「無理じゃの」
「ん。……地球じゃ、神に対する概念が違うんだったね」
困ったような表情をしたレイは、質問に一つずつ答えていく。
「まず、シュテルクスト鉱石の付与について。
確かに通常の鉱石と比べて、付与をするのは難しいね。でも、それを解決してくれる存在が判明したからさ」
「へ?」
「ねえ、山神テオ。彼女が作り出した雪月花と鉱石なら、付与するのも朝飯前なんじゃない?」
シュテルクスト鉱石化した雪月花を発光させて教えてくれていたテオは、にこりと微笑んだ。
肯定の意だ。
そもそも、神湖に沈んでいた鉱石の付与も、アルカナは勿論の事、リティスも何の抵抗も無しにあっさりと行うことが出来ることを、登山をする準備中にレイは確認していた。
その結果を踏まえ、同様にその場所と関連する人物ならば付与を簡単に行えるのではないかと考えたのだ。
そして、その考えは的中する。
「どんなに難しいシュテルクスト鉱石の付与でも、作り出した張本人なら大した疲弊も無く行える。本来付与する予定だった俺たちも、負担無く噴火阻止に動けるわけだ」
「成る程なぁ……」
淳は納得して腕を組んで頷く。
次に細野の質問の問いだ。
「まず、地球における神と、こちらの神族の違いなんだけど……。うーん……そうだね……」
説明の難しさに暫く頭を悩ませていたレイだが、簡潔に例題を上げる。
「例えばの話。火の神が雨を降らせられると思う?」
「「「無理だと思う」」」
「ん。そういうこと」
「「「いやどういうこと⁉」」」
レイが言いたかったのはこうだ。
先に補足として、世界の神は、○○の神といった名称で名が知られており、ディアも本来なら創生の神とだけ知られていて、名前に関しては知らないものの方が多い。
そして創生の神ならば『創る』、『生み出す』ことに関する神であるので、今回の火山の噴火を『止める』といった芸当は本来ならば畑違いなのである。
対して、地球の神ーー特に日本の神についでだが、小さな国に八百万の神がいるとされ、尚且つ持ちうる力の幅が違う。
こちらの世界では雨を司る神はいるが、水の神はいない。何故なら精霊がその役割を補っているからだ。
だが日本では水の神がいる上に、更に雨神や雷神などの細かく区切った神がいて、尚且つ子孫繁栄とか恋愛成就などの複数の役割を担っていることが多い。
何が言いたいのかというと、こちらの神は地球の神とは異なり、自身についた二つのが示す以上の力を振るうことが出来ないのである。
レイがディアに噴火を止めるように願わなかったのはその為だ。
「此方における神は決して万能ではないよ。そうだな……この星が大いなる神の頂点、大神って言うんだっけ? それだとすれば、ディアたち神族はその子供。末端だと思えば良い」
「「「な、成る程……?」」」
「本当にわかってる?」
「「「……………………えーっと」」」
「……じゃあ、もっと簡潔に。この星が神なら、ディアたち神族は天使だと思えば良いよ」
「「「それならわかる‼」」」
極端すぎる括り方に、当の神族であるディアは深く溜め息を吐いた。
一方、リティスとアルカナ、親衛隊に雪月花の収穫を命じていたアイヴィスは思う。
ーーこの天上天下唯我独尊が天使とか……例えでも嫌だな……。
息子は母に対する見解が大分厳しかった。
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