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73話

シュテルクスト鉱石化した雪月花を受け取り、レイは何処の軍隊かと言わんばかりにーーいや、実際に一部、親衛隊という名の軍人がいるのだがーー整列している仲間に自身が考えた策を伝える。


「最初に確認しておくね。ディア」

「うむ」

「例えばなんだけど、火山口を新しく作ることは可能?」

「む? それは、別の地点にということかの」


ん、と小さく返事をしたレイに、ディアは顎に指を添えて考える素振りを見せた。


「可能……といえば可能かの。しかし……」

「可能なら、いくらでもやりようがある。今から説明するよ」


ディアの思い付いた懸念も、レイには予想範囲内だ。

口で説明するよりも図を書きながらの方が分かりやすいと、しゃがみこんで小枝を手に図を描き始める。


「まず、淳たちはこの辺の地形をちゃんと教えてなかったから知らないよね」

「おう」

「うん、そうだね」

「じゃあ簡単に」


ガリガリと音を立てて、魔都と神湖、神山、暗黒の森に加え、海を含めた略図をさらさらと書いていく。


「魔都を起点に教えるね。魔都の東に暗黒の森。それを越えたら人族の領地になる。西に神湖。北に神山だね。更にその奥には海が広がっていて、その境には海産物を取り扱う魔族の商業都市がある」


ここまではいい?

レイの問いに、淳たちは頷いて答えた。


「ん。じゃあ、俺が考えた策を話すね。まず、噴火は敢えて止めない方向で進めていく」

「⁉ え、でもそれって」


困惑した梨香が顔を上げるが、レイは首を振って諌める。


「落ち着いて。ちゃんと話すから」


レイの考えた策はこうだ。

噴火を押さえ込んでしまうのは、後に影響が出ることを考えてはやることは憚られる。

ではいっそのこと噴火させ、その後に魔法で処置を行うのはどうかと考えたのだ。


「まずはディアの魔法で火山口の位置を操作し、噴火を海底で行う」

「……っ、ま、まって、海って!」

「わかってる。海でただ噴火させては海洋生物にも影響が出る。ーーここで」


リティスとアルカナに視線を向けた。


「リズ姉とアルカナに、こう……二枚の結界を展開してもらって、外に影響を及ぼさないように押さえ込んで欲しいんだ」


両手を合わせ、それを円形に形作る。筒状の結界である。


「同時に俺とアイヴィス、ディアで一気に冷却させる。……ああ、いや」


レイはちらりとアイヴィスを見やり、一点を訂正する。


「アイヴィスには念の為、避難と民の安定を目的に魔都に控えてもらった方がいいか……?」

「いや、そこで俺が前に立てば、尚更混乱させてしまうと思うが」

「……じゃあ、せめて親衛隊は戻した方がいいね」


アイヴィスの指摘が入り、当初の作戦で行こうと進めるが、そこで待ったの声が上がった。

重要な地点を任されたリティスだ。


「待ってください。……私の今の力は、全盛期は、疎かアルカナにも及びません。そんな大事な場所に、私では役不足です……」


リティスが案じるのも訳はない。

リティスは確かにそこらの魔族よりは遥かに魔力は高いが、神山から噴き出す魔力をアルカナと二人で押さえ込めるかと言ったら、無理だと断言出来るほど力が足りていない。

しかし、レイには考えていた奥の手があった。


「ん。今のままじゃリズ姉の力が足りてないのは百も承知。でも、全盛期の力を取り戻せたらどう?」


レイは手に持っていた雪月花を胸に、にこりと笑みを浮かべる。

本当の策はここからだ。

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