72話
新年明けましておめでとうございます。
今年初めての投稿です。
雪月花。
命の花、千年花とも呼ばれるほどの効能を持つ、万病に効く奇跡の花。
それが。
まさかの鉱石の原石⁉
目を伏せていたレイは、すっと顔を上げてアイヴィスの方へ顔を向けた。
「……………………ん。じゃあ俺たちは、鉱石を服用してたってこと……?」
「うん。着目点はそこではないな?」
いや、確かに気になるかもしれないけども。俺も気になったけども。
頭を緩く振って訂正させるアイヴィスに、レイはん、と素直に短く返事をする。
「えっと……雪月花がシュテルクスト鉱石って、どういうこと?」
「『そうですね。正しくいえば、確かに雪月花は花ではあります。今のところは』」
「今のところは……?」
「『雪月花はわたしが力を込めることで開花し、やがて力を蓄積することによって変質して鉱石へと変わるのです』」
雪月花は山が冬を迎え、植物が春までの期間眠りにつくと同時にテオが意図的に発現させる。
冬毎に繰り返される習慣は、やがて蓄積を重ねて雪月花の花に変化をもたらした。
テオは元々山に宿る精霊の集合体。つまりは土の精霊だった。
そのせいか、花は植物であったはずなのに土の精霊の魔力によって硬化、鉱石へと姿を変える。これがシュテルクスト鉱石の発生となった。
雪月花とシュテルクスト鉱石が違うものだと思われていたのは、雪月花に与えていた力の余波を受け、一部の土も変質化したからである。
山神テオの純然たる魔力を用いて咲いた花が変質したものと、余波によって変質した土。どちらが高純度の鉱石かなんて、わかりきった答えだろう。
そして。
五十年前までは山の守護の為だったそれは、噴火を抑え込む為の措置へと代わり、込める力も多くなった。
一旦、通訳を終えたノエルが、徐に足元から二輪を摘む。
「こちらは鉱石化する前の雪月花。それで、こちらがテオ様の力によって変質し、鉱石化した雪月花じゃ」
左右の手に持つ雪月花がレイに差し出された。
一見すると、どちらも普通の花に見える。
レイは先に鉱石化していない方の雪月花の花弁に触れ、感触を確かめた。柔らかく、絹のような滑らかさの至って普通の花だ。
鉱石化された雪月花に触れ、レイはぴくりと肩を震わせて動きを止める。
ーー固い。
見ただけでは確かにただの花にしか見えないのに、触れたら違いが瞭然であった。
まず、花弁が固い。薄い花弁だというのに、指に力を入れても変形することがない。それに加え、金属特有の、寒い空気によって冷えた金属特有の冷たさが、益々鉱石化していることを知らせている。
「すごい……こんなになっちゃうんだ」
嘆息したレイに、ノエルが次の言葉を引き継いだ。
「『これが、わたしが噴火を押さえる為に使っていた措置です。……参考になりますか?』」
テオが微かに首を横に傾ける。
レイはにこりと笑った。
得られた情報を参考に、一つの策を閃いて。
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