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6話

『界渡り』、呼ばれる術がある。

文字通り、世界はおろか、異世界という界を越えて移動する術である。

しかし使いこなせるものは早々おらず、数十人の術師をかき集めてやっと一人越えさせることが出来るが、当然反動がある。命の源である霊力、魔力を枯渇させ、その身は水を失ったように干からびてしまうのだという。


その命懸けの『界渡り』を、さらりとしてみせると宣った⁉


レイの心の叫びを悟ってか、アイヴィスは術者に心当たりがあるのだと笑った。


『界渡り』を難なく使いこなしてしまう術者……?

混乱と不安を、魔王城出迎えること三日。術者はやって来た。例えるなら、そう、音もなく猛威を振るう吹雪を背負い静かな怒気を纏ってーー。


レイは部屋の隅で、リティスに庇われながら体を震わせた。

盾になっているリティスも腕を軽く上げて牽制していて、見るものによっては難癖つける喧嘩相手から弟を守る姉の構図に見えて実に微笑ましかったことだろう。


しかし強制的に当事者になっている二人にとっては笑い事ではなく。


そこには、恐怖と怒りが満ちていた。


恐怖を覚えているのは言わずもがな。

では怒りを放っているのはというと。


アイヴィスに相対している少女がいた。

白銀の髪に色素の薄い瞳。白い薄い衣を纏った小柄な女の子で、額に花の紋様が刻まれている。

そしてその少女最大の特徴は、怒っているのは丸分かりなのに、先程からピクリとも動かない表情筋である。


少女ーー『創生神 ディア』は、静かに口を開いた。

「それで、儂を呼んだのはなんじゃ」

「だから、その顔で、その喋り方は止めろと言っただろう⁉」

「ぐっ……」

……レイが吹き出しかけて全力で堪えたのは、仕方ないこととだろう……。

食中毒で引っ掛かっていたひとが、やっと復帰……。一ヶ月長かった……!

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